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燦々花火

お久しぶりです。
ご無沙汰しまくってました。

某所にはたまーに顔を出してたんですが、相変わらず亀の歩みより遅い更新で申し訳ありません。


えーと。

夏の終わりなお話になります。
まだ大丈夫・・・かな?
私の住んでいる地域は比較的ぬくぬくしてまして、季節ものを書こうとすると若干のズレが生じる場合がありますが、そこは皆様の寛大なお心でお許しください!


では、どうぞ。








夏の終わりの音がする。


ューーーーーーー


ドーン・・・・・・


仕事帰りにたまたま通りがかった土手で、花火が上がっていた。
打ち上げ元は向こう岸の大きな広場。どうやら、お祭りが開かれているようだった。

ドーン・・・

再び打ち上げられる花火。
闇に浮かぶ、色。

上がって。

弾けて。

消えて。

また上がって。

夜を彩る灯りはまだ続くようで。
私はただぼんやり、綺麗な綺麗な花を見上げていた。
お祭りは盛況のようで、的屋や屋台の柔らかい明かりの中、にぎやかな人達の声がうっすらと聞こえる。
その喧騒も、楽しい雰囲気も、こちらまでは届かず、対照的に静かな草花の間からは、秋の虫の気配がした。

「あ。そうだ」

ふと、思い付く。
私は、最近ようやく慣れてきた携帯で写真を撮ることにした。
暗い空にカメラを向けて、花火が打ち上がる音を頼りにボタンを押す。

カシャリ

軽いシャッター音とともに、画面が一瞬だけ止まる。

「あれ?」

小さな画面には、花火の残照が僅かに散っている程度で、お世辞にもキレイとは言い難かった。
これじゃあとても人には見せられない。
何故だか凄く寂しくて、悔しい。

「今度こそっ」

挑戦されてる気分になった私は、空を睨むように、果ては打ち上げる人に怨み言を発する勢いで待ち構える。

空気を裂く高い音。

すぐに轟音。

同時に電子音。

先ほどと同じように、一瞬だけ動かなくなる画面。ただ違うのは、時の止まった花火が手の平の中にスッポリに収まっていたこと。
思わず見入り、自然と湧いてくる笑顔。

「よし。これで送っても恥ずかしくないわよね」

そこでハタと気付く。
送るって、何を?
花火の写真を?
・・・誰に?

分かってる。
誰を思い浮かべてたかなんて、今更否定のしようもない。
「誰かに見せる」前提でとった自分の行動の、本当の意味。
どうしてなのかは深く考えちゃダメだと、心のストッパーはかかるけど、もう諦めに近い溜め息が何度も零れた。
どう足掻いても、私の心の奥深くにあの人がいる。

はぁ。

そのまま沈みそうな意識を無理やり浮上させて、無駄に明るく独り言。

「深い意味はないもの。軽~い気持ちで、花火見てますーって。うん。ここで送らなかったらますます意識してるみたいじゃない私!」

ほら、だから、大丈夫。

少しだけ震える手で、メールの送信ボタンを押した。
「送信中」の陽気な表示が消えるのを確認して、パコリと、携帯を閉じる。
それで終わりのばずだったのに。

~♪

すぐ近くで音楽が流れた気がした。正確には私の僅かに後ろから。
やけに聞き覚えのある音に、ほとんど反射的に振り返る。
すると。

「敦賀さん・・・?」

想像に難しくない人物が、私の中のスケールと寸分違わず立っていた。
対岸からの仄かな明かりでも分かる、ここにいるはずのない、今一番会いたくなかった人。

「こんばんは最上さん」

バツが悪そうに、それでも礼儀に厳しい敦賀さんは挨拶を忘れない。

「こ、こんばんは。どうして・・・こちらに・・・?」

これは当然の疑問。今をトキメク人気俳優が、こんな所にフラリといていいはずがない。

「近くで撮影中だったんだけど、花火の間は流石に継続出来ないからね。休憩に入った所で、偶然最上さんを見掛けたんだよ」

事も無げにそう言った敦賀さん。
他意はないと分かっているけど、貴重な休憩時間に自分を見つけてくれて、さらに近くまで来てくれて。
もしかしたら、普通の後輩よりは可愛がってくれてるのかな、なんて嬉しい勘違いをしてしまう。

「そうだったんですか。それはお疲れ様です。でも、それなら声を掛けて下されば良かったのに」
「君があまりにも真剣な顔で花火とにらめっこしてたからね。見守ってあげようと思って」

また、花火が上がる。

「あはは、お恥ずかしい」

私は、ちゃんと笑顔が作れているだろうか。

「折角なので写真を撮ってみたんです。今、敦賀さんにも送った所だったんですよ?」

なるべく自然に、敦賀さんから目を背け、夜空の煌めきに意識を移す。
弾けて消えるキレイな欠片は、もう元に戻ることはない。
きっと、私も同じ。

「最上さん」

いけない。またぼーっとして自分の世界に入ってた。
敦賀さんに名前を呼ばれて、慌てて無礼な振る舞いを謝罪をしようとしたその時。

「?」




珠々さん花火201208





気配を間近に感じた瞬間、ふわりと抱き締められていた。

「つつつるがさんっ!?」
「ん。ゴメン」

どうして謝られるのか、そもそもこの状況は何なのか、私には把握出来ないまま指一本も動かせないでいた。

「難しい顔したり、微笑んだり、今は泣きそうな顔してるから」

今の体勢からは見えないけれど、そう言う敦賀さんの方がなんだか辛そうに思えて、私は思わず敦賀さんの背中に腕を回す。
温かな体温に包まれ、セラピー効果で思考が鈍くなってくると、耳にも心地良い低音が響いた。

「・・・いっそ、このまま二人で逃げてしまおうか?」

「え?」

「名前も、地位も名誉も捨てて、地の果てまで」

何て言ったんだろう。
ゆっくりと体を離して顔を上げると、熱を帯びた哀眼に射抜かれる。

「ぁ・・・」

息が止まる。

全身硬直したまま、数秒経った時、敦賀さんは体を屈めて。


笑いだした。

「つるがさん・・・?」

これはもしかして。

「からかったんですね!?」

なおもツボにはまっているのか、笑いが収まらない敦賀さんに負のオーラを向ける。

「あははゴメンゴメン。今のは、これから撮るドラマの台詞なんだ」
「はい?」
「どういう反応が来るかなと思ったんだけど、なるほどね」
「それはつまり、女優としての気概を試したということですか?」

やっぱり、敦賀さんは意地悪だ。

「うーん、試すつもりはなかったんだけどね」
「はぁー。なんだかどっと疲れが」
「それは申し訳ない。お詫びに今度お茶でもどうですかお嬢さん?」

誰もが魅惑される笑顔で、差し出された敦賀さんの手。
私は少し考えて、その手を取りながら返事をした。

「・・・さっきみたいな台詞の練習、他の人にはしないんだったらお付き合いしますよ」


これ以上、被害者が増えないように。

敦賀さんは何か言いかけたけど、クライマックスの花火の連弾に阻まれて、それが音になることはなかった。









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