輪ニノゾム 3

お盆ですね!(あ、もう過ぎましたね;)

ご無沙汰してます。
更新がない間も、過去のお話に拍手をくださる方もいて、ありがたい限りでございます。
もうそれだけで生きて行けるというか、そのおかげで生きてるというか。


そんな中、携帯でポチポチしながら何とか更新に至りました。

ただ、ここの記事も携帯からなので何かオカシイことになってないか心配ですが。。



では、続きよりどうぞ。









「蓮、お前何かあっただろ」

LMEが誇るトップ俳優、敦賀蓮の優秀すぎるマネージャーは、迎えに来てくれた車に乗り込むなり、開口一番こんなことを言い出した。

「おはようございます社さん。なんですかいきなり」

突然の不躾な発言にも動じず、蓮は相変わらずの飄々とした態度で挨拶を返し車を発進させる。

「誰の目を誤魔化せても、俺にはお前の浮かれたオーラがハッキリ分かる!」
「機械を壊すだけじゃなく、そんなものまで見えるようになったんですか」
「そんなわけあるか!」
「あぁ良かった。流石にそこまで妙な特技を持たれたら対応を考える所でした」

にこやかに隙のない返答は、荒波にも等しい芸能界で生き抜いてきた故か。
しかしそこで引くようなら蓮のマネージャーは務まらない。

「妙な特技ね・・・そう言われれば確かに分かるよ。お前の、キョーコちゃんが絡んだ時限定の、嬉しそうなオーラはな」

社は、わざと言葉を区切りながら強調して、若いながら貫禄のあり過ぎる蓮の牙城を崩そうと試みる。
ここまで言えば、可愛らしい反応の一つも拝めるかと楽観していたが、返事の代わりに示されたのは常とは違う車のエンジン音。
ヴォンというスマートとは程遠い重低音が車に響き、エンジンブレーキを効かせながらゆっくりと信号の前で止まった。

「れ、れん?」

社は訪れた沈黙と、自らにだけ沸き起こる冷や汗に、何か地雷を踏んだかと恐る恐る元凶に伺いを立てる。
すると蓮は、チラリと視線だけ向けて逡巡した後、軽い溜息を吐き口を開いた。

「手を、握ってくれたんです」

ポツリと、だが明瞭な声音が車内に響く。

「・・・手?」
「起きたら最上さんが、俺の手を握ってくれてたんです」

信号が青になる。
同時に、窓の外の風景も流れ出す。
そして、事の顛末がこれ以上ないと悟った社は、思わず素直な感想が口をついて出てしまった。

「・・・それだけ?」
「・・・今、馬鹿にしたでしょう」

途端に低下していく温度に、慌ててフォローを入れる。勿論、馬鹿にしたわけではないのだが。

「いやいや、何て言うか、幸せハードルの低さに青春を感じただけだから」

フォローになっていなかった。

「だから言いたくなかったんですよ」

顔は前を向いたまま、蓮は不満げな感情を隠すことなく再び溜め息をつく。
普段温厚で通している「敦賀蓮」の多様な表情を見られるのも、役得かもしれないと社は思う。

「世間じゃ恋愛百戦錬磨みたく思われてるのに、蓋を開けたらこの純情っぷり。微笑ましくもなるだろ」

日本人離れした身長と鼻梁の通った端整な顔立ち。出演ドラマは大ヒット。間違いなく、現在抱かれたい男NO.1。事実無根な噂の一つや二つありもするだろう。
かくいう社も見目麗しい部類ではあるが、本人の性格からかあまり自覚はないようだ。

「彼女に対してだけは、上手くいかないんです」

蓮は少し自嘲気味に、しかしそれもまた楽しそうに本音を零す。

「そうなのか?」
「あの娘は、他人と触れ合うのを無意識下で避けている所があるんです。むしろ拒絶されなくなっただけ大分改善したんですよ」

キョーコについては、愛の欠落者としてラブミー部員1号の不名誉を与えられたくらいだ。
健気な程に愛を求めて、裏切られた先。向かっていた強さの反動はそのまま愛からの逃避となる。
与えられることに慣れていないキョーコが、蓮の想いを受け入れるまでには語り尽くせない紆余曲折があった。
間近にいた社も、それはよく理解している。

「そっか・・・お互いに成長してるってことだな。うん、お兄ちゃん嬉しいよ」

恐らく、誰よりも近くで二人を見てきた社は、感慨深げに何度も頷く。
だが蓮は、その言葉の中に引っ掛かるものを感じ即座に聞き返す。

「お互いってことは、俺も含まれてます?」
「そりゃそうだろう。まぁ、自分じゃ気付かないだろうけど、雰囲気が以前にも増して柔らかくなったよ。人間味が出てきたっていうかな」
「そうですか?」

確かに、自分の変化は自覚しづらいもの。そこで社は、一番分かりやすい近況を例に出す。

「よーく思い返してみろ。最近お前に寄ってくる女性増えたと思わないか?」
「・・・」

心当たりはあるようだ。
蓮にとって、キョーコ以外の女性が側に纏わりつくなど煩わしいとさえ思ってしまう事もある。その頻度が多くはないだろうかと。

「皆友達皆他人。それがキョーコちゃんと付き合うことで多少取っ払われたんだろ。喜ばしい変化ではあるけど、それでキョーコちゃん悲しませるようなことするなよ?」
「俺が他の女性にウツツを抜かすと?有り得ませんね」

キッパリと言い切ってしまえる程、蓮のキョーコに対する想いに揺るぎはなかった。
それは蓮を知る人間なら誰でも知っている。但し、世の中には想像で計り得ないアクシデントという厄介なものがある。

「お前にその気がなくてもってやつだよ」
「肝に銘じます」
「あとこれは、キョーコちゃんにも言えることだと思うから、いちいち小さなことで怒るなよ?」
「善処します・・・」

キョーコにだって、やむにやまれない事情で他の男と一緒にいることもあるだろう。こんな業界なら尚更だ。ただ社は、大人の男として余裕を持てとの金言のつもりで蓮に忠告する。
本当の恋を始めたばかりの男の沸点は極端に低い。
蓮自身も分かってはいた。それで自己嫌悪することもある程。

「公表しちゃえば良いのにな」

今度は社が軽い溜め息。
そうすればお互い気兼ねなく会えるし、異性からのアプローチも減るはずだろうと。
しかし、現時点では当事者が納得していなかった。

「今はまだ、最上さんがそれを望んでませんから」

メリットもあればデメリットもある。
キョーコの今後を考えれば、得策ではないと蓮も承知していた。

「まぁ、じっくり考えたら良いさ」

ただ願うのは、二人の幸せなのだと。
言葉には出さず、社はスケジュール帳を開き、少ない逢瀬の画策を始める。

「ありがとうございます」

蓮は心からの感謝を一言に込め、静かにアクセルを開けた。






翌日のこと。
陽も昇り始め、鳥のさえずりも遠くで聞こえる、穏やかな早朝。
今日も今日とて仕事の社は、ぼんやりと浮上し始めた意識の中で、優しい声が響いていることに気付く。まだ夢の続きだろうかと、回らない思考で体が求める惰眠に身を委ねかけた時。

「社さん、おはようございます。ご飯、出来てますよ」

ありえない声を聞いた。
ほとんど反射と言って良い程の素早さで、ガバリと起き上がり声の主を確認するべくメガネを掛ける。
クリアになった視界には、よく見知った少女が目の前にいた。

「キョ・・・・」


キョーコちゃん!?






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