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環ニノゾム 1

またしても久しぶりの更新です。

台風で一晩停電でした。
皆様は大丈夫でしたでしょうか。
電気の大事さも痛感しましたが、何より・・・
風の恐怖を味わいました。
凄かった。。




はい、今回はキョーコに頑張ってもらうお話しになります。
付き合いたてな感じで。
ちょっと続きます。









人がせわしなく行き交う都会のど真ん中。
あらゆるモノが溢れ、手に入れるものを選択する時代。
どこまでも空に伸びていきそうなファッションビルには、誰の目にも止まる大きなポスターがいくつも連なっていた。

『お洒落の鎧を身に纏え 』

まるで違う世界に住んでいるようなモデルさんが、自信たっぷりにこちらを見据えているポスターを、キョーコは絵空事のように感じながら諦めがちに呟く。

「鎧・・・ねぇ・・・。その軍資金の確保もままならないのに・・・」

残念ながら一般の女子高生とは程遠い生活環境にあるキョーコには、防御のみならず攻撃力もあげてくれそうな鎧、もといお洒落をする余裕はなかった。
最近でこそ、自分のための投資として僅かだが服や化粧品を購入することはあれど、買い物には常に躊躇いがついて回る。
誘惑の多い街を早く抜けようと足を進めていると、ふと、目の端にキラキラとしたものが掠めた。

「?」

思わず止まってしまったそこは、格式の高そうなジュエリーショップ。ショーウィンドウには、主役となる宝石達が自ら光を放っているように鎮座している。
その中でキョーコが一番惹かれたのは、控えめに輝きながらも寄り添って飾られていたペアリングだった。

(か、カワイイ・・・)

キョーコは何の彩もない自分の左手をツイと持ち上げ、ガラスで隔てられたペアリングに翳してみる。
ふにゃりと溶けながらウットリと張り付く様は周囲から見れば不審そのものだったが、奇異の目に晒されることに慣れつつあるキョーコにとって、さして気にする材料にはならなかった。
だが、想像するだけで夢の国へ踏み込めそうなお姫様気分を一気に吹き飛ばしたのは、リングの下の台に表示された小さな数字。
「0」が、どうにも多かった。
それを見つけた瞬間、魂が抜けたように真っ白になって崩れ落ちたキョーコ。

「・・・うぅ・・・・・私のような庶民は夢も見るなってこと・・・?でも・・・でも・・・」


(・・・敦賀さんと・・・一緒に出来たらって思ったのに・・・)


打ちひしがれるキョーコの周りで、流石に人垣が出来始めた所へ飛び込んでくる声があった。

「ちょっと!何恥ずかしいことしてんのよ!」
「えっ・・・モー子さぁん!?」
「行くわよっ」

キョーコにとって無二の親友である奏江は、鬼の形相でキョーコの腕を掴んでその場を離れることに成功した。



「まったく、あんな所で百面相して・・・」
「ご、ごめんね・・・つい・・・でも、モー子さんこそどうしてあんな所に?」

未だにグイグイと引っ張られながらも、大好きな奏江との突然の遭遇を疑問に思いキョーコはごく自然に聞いてみる。
途端にピタリと動きが止まり、腕を離されたキョーコはよろめきながら何とか体勢を立て直す。
奏江は奏江で偶然通りかかっただけだったが、キョーコのあまりの落胆ぶりに思わず心配になったなんて、死んでも言う気はなかった。

「な、なんでもないわよ。バイト帰りにたまたま見覚えのある顔が晒し者になりそうだったんで、不憫に思っただけよ」

そんなぁ~と情けない声で泣きそうなキョーコだったが、引っ掛かる単語に頭をフル稼働させる。

「バイト・・・?バイトって、あのバイト?」
「そうよ。私達みたいなペーペー、まだ女優一本で食べて行ける程売れてないんだから・・・」
「モー子さん!」

今度はキョーコが奏江に飛び付き、ガシィ!と逃がさないようホールドする番だった。

「な、何よ!?」
「私、私もそのバイト出来るかな!?」
「は・・・?」

奏江の驚いた目を見返すキョーコの意識は、先程のショーウインドウの前にあった。



「最上さん、大丈夫?」
「へ?」
「ぼーっとしてるから・・・」

夕食の片付けをしながら、考え事をしているように手の止まっていたキョーコ。常にない様子に、蓮は覗きこみながら顔色を窺う。
キョーコにとっては突然の至近距離に、最早条件反射とも言える後退りを抑えるのに必死だった。
どうにも、この綺麗な顔に見詰められると心がソワソワしてしまう。

「あっ、すみません!ちょっと・・・疲れてるのかな・・・?」

エヘヘ、と誤魔化すように笑い、大丈夫ですよと平静を装う。
奏江への泣き落としで、例のバイトに参加させてもらうようになって数日が経っていた。依頼があれば、どんな人間にもなり切って演じなければいけない。ちなみに、本日のバイト内容は『朝食を作ってくれるお姉さん』というもので、普段よりも朝が早かった。
現在の時刻を考えれば、つい眠気からぼんやりしてしまうのも仕方がない。
ただ、このくらいでボロを出す訳にはいかなかった。

「後は俺がやるから、今日はもう休んで?」
「そんな!多忙な敦賀さんにお手伝いいただくなんてとんでもない!」
「・・・!最上さん!」

キョーコは有難くも恐れ多い申し出を断ろうと勢いよく立ち上がったが、その時どういう訳か体がフラリと傾いてしまう。
立った勢いが良過ぎたのか血の巡りが追い付かず、所謂立ちくらみの状態になった所を蓮に抱きとめられてしまった。

「す・・・すみませ・・・」

大いに体重を預けた体勢のまま、情けない声をあげてモゾモゾと起き上がろうとするキョーコ。
しかし、腕を、腰を、蓮に抱えられたまま動けなくなっており、逃れようとすることすら許されなかった。
ソロリと視線を上に向けると、感情の読めない瞳とかち合う。
キョーコの戸惑いを見てとると、蓮は口の端を上げ、ウットリと耳元で囁いてきた。

「・・・やっぱり疲れてるみたいだし・・・今日は泊っていく?」
「!!いいいいいいえっ!滅相もございません!」

未だ大人の色気を漂わせる蓮に対して、キョーコの免疫力は皆無だった。

「そう?・・・残念」

狼狽えるキョーコを解放し心底楽しそうにクツクツ笑う蓮は、うって変わって年相応か、それより下に見えそうな程可愛い笑顔で。

ずるい。

と、キョーコは思う。
一緒にいればいる程、どんどん惹かれていくこの人の隣に、自分は果たして並んでいいのだろうかと、油断をすれば湧いてくる良くない感情。
それを振り払いたくて、いつもの調子で少しふくれて返してみる。

「んもう、からかわないでください!」

そうすると、笑いながらも真摯な声が蓮から発せられた。

「からかった訳じゃないんだけどな」
「え?」
「最上さんから、いつもと違う香りがしたから」
「・・・!」

確かに、キョーコは今朝のバイトに合わせて、普段は使う事のない香水を使用していた。
悪いことはしていない、が・・・後ろめたさから居た堪れなくなってくる。
どう言い訳したものか、上手く言葉が出てくれない自分自身にキョーコが焦っていると、そんな心中を知ってか知らずか蓮が少し困ったように笑いかけてきた。

「俺の知らない最上さんがいるみたいで、少し悔しかっただけ」
「・・・うぅ・・・あの・・・私・・・」
「ん?」
「頑張りますから!」

何に、とは言わず、それでも、何か言いたくて、キョーコは蓮の目を見て気持ちを伝える。
そんな意気込みを受け止め、蓮は何も聞かずに愛しくて仕方がない腕の中のキョーコの髪を梳いて微笑む。

「・・・頑張りすぎないようにね?」
「はい」
「守れない時は、無理矢理・・・寝かせるよ?」
「・・・肝に銘じマス」






敦賀さんに対する想いを形にしたくて。
いつも貰ってばかりのお返しに、あの指輪をプレゼントしよう。
喜んでくれると良いな・・・。





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