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落とし穴 2


ズザァドーン!


見事に周りの地面と同化していた人為的な穴に落ちる男、児島。

「え!?え!?何!?」
「ダメだよ児島さーん。こんな可愛い子のうちにホイホイ行ってナニするつもりだったの?」

番組の進行は滞りなく行われ、キョーコが待ち合わせをしていた児島を落とし穴のあるマンションまで案内した所だった。
結果、面白いくらい無様に落ちてくれた。
MCの男がネタばらしをして、すべてドッキリだったと真実を教える。

「えー!?嘘なのかよー!?」
「そうですよ!遊んでばっかだと、こんなこともありますよー。次は貴方が落ちる番かもしれませんよ?」

一通り現場は笑いに包まれ、MCがカメラに向かい締めの言葉で、今回の作戦は終わりを告げた。

「はい、カーーーット!お疲れ様でしたー!」

速やかに撮影機材の撤収に入るスタッフ。キョーコの仕事もここまで。ただ、仕事とはいえ少し可哀そうな事をしたかと児島に歩み寄る。

「児島さん、騙しちゃってスイマセンでした」
「あぁキョーコちゃん。良いって、俺もオイシかったんだし」

砂埃まみれの児島は、残念そうな顔をしながらも既に仕事だと割り切っているようで、落とされて良かったとまで言っていた。
そこはプロなのだと、キョーコは児島に対しほんの少しだけ認識を改めることにした。

「ところで・・・これからも飯行ったり出来るかな・・・?」
「へ?」

騙された相手になおもご飯のお誘い。このしつこさはある意味称賛に値しそうだ。折角浮上しかけた児島の印象を、すぐに奈落の底に落とす。

「ゴメンナサイ」

笑顔で一蹴するキョーコ。

「そっか・・・でもなー飯食べてる時、完全に恋する乙女の顔してたからホントに脈ありかと思ったんだけど・・・」
「・・・はい?」
「あ、それは俺も思った!」

何を言い出すのかと怪訝な顔を出す前に、MCの男も割り込んで同意してきた。
相変わらず周囲はまだ片づけに追われているので、会話に適している状況ではないが、かといって手伝いも出来ない。専門機材は専門家に任せるのが一番。下手に演者が手を出すと思わぬアクシデントを招く恐れがある。キョーコもそれを承知で脇にハケていたのだが、こんなことなら早めに退散すれば良かったと出そうになる溜息を飲み込んだ。
しかし、新人であるキョーコが我先に現場を後にする訳にもいかず、この流れは必然だったかもしれない。
だが、流されるばかりの会話の中に聞き捨てならない語句を拾ってしまったのがキョーコの運のツキだった。

「あの!恋する乙女って・・・誰のことです?」
「だから京子ちゃんが」
「いやー、モニターから見てたけどあの顔は反則だよ!本気かなって一瞬思っちゃったよ」
「だから・・・私そんなこと・・・」
「付き合ってる人も好きな人もいないんだよね?」
「・・・はい!恋愛なんて浮かれたモノに惑わされるなんて愚の骨頂です!」

握り拳を振り上げて力説するキョーコ。惑わされ落とし穴にハマった児島を目の前に、更に追い打ちをかける発言。流石にしまった、と居た堪れなくなったが、MCの男がえらくツボに入ったようで吹き出して笑っていた。

「あははは!いやー京子ちゃん面白いね!そこまでハッキリ言われるといっそ気持ち良いな。それって、事務所に言わされてるの?」
「とんでもない!自分の意思で、心の底からそう思ってるんです!」
「そっかー、うんうん。そういうことにしておくよ」
「・・・信じてくれてませんね?」
「いやいや、そんなことはないんだけど。そこまで否定するのは何でかなーって」
「あ、京子ちゃんひょっとして」
「なんでしょう児島さん」
「恋しちゃいけない相手に恋してるとか!?」



「ちがーーーーーーう!!!!」

ここはラブミー部の部室。ロッカーの扉の鏡を見ながら先日のドッキリロケのことを思い出していた。

「なーにが恋する顔よ!この引き締まった顔面のどこにそんな馬鹿な要素が!?」

これが鏡を見ていた理由。確かに、睨むように鏡を見てしまえば恋愛のレの字も感じられない顔になるのも当然のこと。

「O.Aを見れば分かるって言われても・・・児島さんを・・・好きそうな顔で・・・?」

(・・・敦賀さんには・・・見られたくないな・・・)

「・・・・・って!!なんで!?敦賀さんには全然関係ないのに!!」

(・・・そうよ、復讐を宣言してるのに目的半ばでまた過ちを繰り返すと思われるのが嫌なんだわ!)

逃げ道を見つけるかのようなコジツケは最早無意識のもので。キョーコの精神安定には必要不可欠になっていた。自分を納得させて、ロッカーの扉をパタリと閉める。
心の内に芽生えかけた暖かな温もりをも、殻に閉じ込めて。
さぁ帰ろうと、踵を返しかけたキョーコに、落雷よりも激しい衝撃が襲う。

「何が、関係ないの?」
「つ・・・!?」
「ねぇ最上さん」

頭を占拠しかけた実際の人物の来訪に、キョーコは振り向けないでいた。


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