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時に狩りと花束を 2

立春が過ぎた途端に字の如く春が来たような陽気になりました。
半袖でも大丈夫そうです。

そして久しぶりの更新。
発売から2ヶ月も経ってしまいましたが、モン○ンのパロになります。

プレイ時間の関係でようやく村クエが終わりました・・・(遅)





華奢な体に似合った身のこなしと素早さで。
その手に持つのは、小さなタル型爆弾。
肩までの栗毛色の髪に、猫の耳のような装飾を付け、地を駆けながら正確に敵を倒していく少女。
蓮は目の前の牙獣を切り伏せながら、意識をその少女へ向ける。

「キョーコ」

そう呼ぶのは少女の名前。

「はい、敦賀さん」

クルリとした大きな瞳を嬉しそうに細め、蓮に駆け寄る。
今までの殺伐さとはかけ離れた華やかさが蓮の目には映っていた。

世界に、色が灯る。



「あなたが・・・ご主人様・・・?」

震える声で主人かと聞かれた、あの邂逅の日。
思わず肯定していた。

「そう・・・だよ」

実にあっけなく、スルリと出た言葉に思わず口元を隠す。
なぜだったのかと言われると、自分でもよく分からなかった。オトモなど必要ないと、断るはずだったのに。
不安に揺れる濡れた瞳を覗いてしまった瞬間、選択肢は消えていたように思う。


少女・・・キョーコの身支度を待つ間に、オトモ小屋の主から言われた事で、酷く怯えている理由を知る。

「あの娘はね、ずっと尽くしてきた雇い主に解雇されたばかりなの」

聞いたことはあった。
オトモは雇うも解雇するもハンターの自由だと。
常に共に行動し、信頼していた相手に「必要ない」と宣告されるその絶望は如何ほどか。
あの小さな体で、身を千切られるような痛みに耐えたのだと思うと、どうにかしてやりたい気持ちが仄かに湧いてくるのは自然なことで。
結果、俺が新しい雇い主となった。
一つだけ、村長の良いように転がされている感が腑に落ちなかったが、それもまた良いかと思えるようになったから不思議だ。

一緒にクエストをこなして数日。
最初はぎこちなかった動きも、段々と良くなってきた。何より、狩猟生活の知識はキョーコの方が豊富だった。

「まだ日暮れまで時間ありますよね。私、その辺りで採集してきます」
「どうして?」
「どうしてって・・・キノコやハチミツは採れる時に取っておかないと」
「・・・夕飯用?」
「薬用です。・・・まさかとは思いますが敦賀さん、調合リストほとんどご存知じゃないんじゃ・・・?」
「・・・必要なかったからね」
「よく今まで無事でしたね!?怪我をしたら薬を飲まないと、仕事に差し支えますよ?体が資本なんですから」

呆れたように怒るキョーコが可愛くなって、ふと意地悪をしたくなった。

「キョ―コ」
「なんで・・・ひあぁ!?」

おもむろにキョーコを横抱きにしてみる。
所謂、お姫様ダッコというやつだ。想像よりも遥かに軽い痩躯に、そしてその柔らかさに、頭が一瞬クラリとする。

「お、おろしてください!」
「ダメ。今日はもう帰ります」
「わかりましたぁ~!帰りますから自分で歩きますぅ~!」
「ん?」

降ろせと泣くキョーコに、自分でも嘘っぽいと思う笑顔を向けたら石のように固まってしまった。

「何かなその反応は・・・。罰として、村までこのまま帰ろうか」
「ひいぃぃぃ!!!」

この世の終わりのような叫び声をあげながら、暴れ猫は俺の腕から逃げ出せないでいた。
もう、逃がす気はないけれど。


「おーい蓮―」

いつも通り社さんは集会所で受け付けに座っていた。
手をヒラヒラさせて、ついでに顔もニヤニヤさせて俺を呼ぶ。

「何、キョーコちゃん怪我でもしたの?」
「してません!社さん助けてください!」

結局、お姫様ダッコしたまま帰りつくことに成功していた俺達を見て、一言声をかけたかったらしい。

「よーしお兄ちゃんが助けてあげよう。蓮、良いものやるからキョーコちゃん降ろしてやれよ」
「なんですか?」

キョーコを降ろしながら社さんを見ると、得意げにポケットから2枚の紙を取り出す。

「コレ。温泉の入浴チケット。丁度2枚あるから、2人で行って来いよ」

そう言って、人の悪い笑顔で社さんは俺達を追い出した。

この村には温泉がある。
疲労回復に加え、傷を癒やす等々の効能によって人気のあるそこは、村の観光産業の主力となっていた。
時間帯の問題だろうか、他に客は誰もいない。
湯気でぼやけた視界の中、体に沁み入ってくる心地よい熱さに目を瞑ろうとしたその時。

「お背中流しますよ敦賀さん」
「キョーコ!?」

近くから聞こえた声と、その声の主に驚いて振り向けば、1枚のタオルで簡単に身を包んだだけのキョーコがすぐ側にいた。

「は、はい?」

直視出来ず、慌てる俺の方がオカシイのかと思うくらい平然としているキョーコ。
若干の頭痛を覚えながら、当たり前の事を念のため言ってみる。

「俺、男なんだけど・・・」
「はい、女性ではないですよね」
「そういうことじゃなくて・・・」

自分でも名前の分からない感情が渦巻く。
男として見られていないことと、この状況が至って自然であるというキョーコの態度から、以前の雇い主とはコレが当たり前だったであろうという推測。
頭の奥が熱くなり、冷静でいられなくなりそうな自分をかぶりを振って制する。

「あの・・・?」

俺の様子を戸惑いながら伺うキョーコの陰った瞳には、初めて会った時の色が僅かに浮かぶ。何よりも拒絶を怖がっている、捨てられた子犬のような目。

「いや・・・なんでもないよ。俺のことは良いから、キョーコも温まったら?」

安心させるように、なるべく優しく入浴を促す。そうすると、気分が一気に浮上したのか、花が飛ぶような笑顔で俺に断りを入れる。

「じゃあ・・・お言葉に甘えます!」

チャプリと水音を立てて、その身を浸すと、途端に幸せそうな様子でほにゃりと溶けた。
首元まで浸かって、目を閉じるキョーコの体は、元来肌が白かったこともあり一気に桜色に蒸気する。
・・・・・。
大丈夫、お湯は白濁だし、湯気で視界は悪いし、キョーコはタオル巻いてるし・・・ってなんだこの試されてる感は。
先程からの俺の感情の起伏など知る由もないキョーコは、ポツリと話しだした。

「私、嬉しいんです」
「・・・え?」
「一緒にクエストへ連れていってもらえて」
「一緒にって、オトモはそれが当たり前なんだろう?」

俯き加減でフルフルと小さく首を振るキョーコ。

「前の雇い主は・・・私を家政婦としてしか見てなくて・・・ご飯を作るくらいしかさせてもらえなかったんです。連れていくのはいつも・・・私なんかじゃ太刀打ち出来ない大人の女性ばかりで・・・」

両手でお湯を掬って零す。起きた波紋はやがて消え、「しょうがないですよね」と諦めたように呟くキョーコから、必要ないと切り捨てられた傷が覗く。
俺の手は自然とキョーコの頭を撫でていた。

「分からないな・・・君はこんなにも魅力的なのに」
「・・・はぇ!?」

驚いたようにザバリと後ずさりしたキョーコの顔が赤いのは、果たして温泉のせいだろうか。

「君といてまだ数日だけど・・・毎日がこんなに楽しいと思ったことはないよ」

心底、そう思う。スラスラ出る本音を伝えると、更に赤くなるキョーコが可愛くてしょうがない。

「あ、ありがとうございます・・・敦賀さん!」
「なに?」
「あの・・・そろそろ私、出ますね。温泉なんて初めてだから逆上せちゃったみたいで」

言うや否や、俺の返事も待たずに勢い良くお湯から上がり脱衣所へ駆けてしまった。
キョーコの最後の言葉を反芻する。

「・・・初めて?」

一人残された俺は、温まる体とは別に、様々な葛藤がよぎる頭を冷やす必要があった。



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