籠の中から見える空 4

はい、更新出来そうかもとか言っておきながら既に数日経ってしまいました。

籠の中~の最終話になります。

ダラダラと長くなりましたが、お付き合いくださいましてありがとうございました。



拍手のお返事は今週中にお返しいたします!

旦那バレについて皆様からたくさん温かいお言葉をいただいて、ビックリでした。

やはり皆様家庭をお持ちだと思うところは同じなのかなーとほっこりです。


では、どうぞー。



――――――――――




パタリ、と楽屋の扉を閉める。
先に部屋に入れた最上さんを見ると、いつも以上に背筋を伸ばして不安な面持ちで俺を見上げていた。
諭すように、最上さんに話を促す。

「話したいことって?」
「あ・・・あの・・・スイマセンでした・・・。実は私、社さんから敦賀さんのスケジュールを教えてもらってたんです」
「・・・どうして?」
「敦賀さんと・・・会わないために・・・」
「・・・っ・・・それ・・・は・・・」

社さんとの接点の理由は分かった。ただそれ以上に、告げられた真実は死刑宣告も同じで、俺から言葉を奪う。体が一気に凍っていくようだった。
俺はもう、最上さんにとって必要のない存在なのだろうか。
むしろ「会いたくない」だなんて、彼女にとっては顔も見たくないということだろう。

『大嫌い』

前回の撮影で俺に向けられた台詞が頭にコダマする。
現実に言われたりしたら・・・なんて、想像することすら拒否していたのに、実際に起こっているこの状況はそれと何ら変わりないのではないか。
俺はどうすればいい?
何が正しい?
選択肢なんて用意されているわけもなく、ただ動けずに両手に力を込める。
理不尽な感情の矛先が、彼女に向かわないよう、俺自身を抑えるため。
しかし、最上さんの話は終わっていなかった。

「役作りのためだったんです・・・」

ポツリ、と零された言葉に思わず聞き返す。

「・・・え?」
「このドラマの紗夜を演じる上で、どうしても敦賀さんには会えなかったんです」
「・・・つまり、俺自身を嫌いになったわけじゃなく?」
「敦賀さんを嫌いになるだなんてとんでもない!どこの世界にそんな生意気な人間いますか!嫌いだなんて言う奴がいたら私が滾々と敦賀さんの素晴らしさをそいつの体に叩き込みます!」
「そっ・・・か・・・」

あらん限りの力で「嫌いになるわけない」と言ってくれる最上さんに、俺は自分で思った以上に緊張していたのか、一気に体から力が抜ける。
そして安心からか、俺の思考も少しずつ回復していった。

「でも、俺に会わない事がどうして役作りになるの?」
「それは・・・この間、敦賀さんのお家でご飯を作らせていただいた日にそう思ったことなんです・・・」
「?」

最上さんの意図する所が掴めず、そのまま話を聞くことにした。

「あの日、実は紗夜の役作りでまだ不安があったんです。これでいいのかなって・・・。だからあの時、お食事の片づけをしながら想像してみたんです。もし私が、敦賀さんに閉じ込められたりしたら、って」
役作りは日常にヒントがあるとは言え、何もそんな想像をしなくても・・・。俺の部屋に2人でいる状況だったからごく自然な当て嵌めだったとしても・・・それが、最上さんにとって俺を避ける発端にならないとも限らない。
なんて恐ろしい。
どう思ったのか、聞きたいような聞きたくないような、そんな複雑な俺の心境を察してか、最上さんはおずおずと続きを話してくれた。

「そうしたら、嫌じゃなかったんです」

思いがけない答えだった。

「無理矢理閉じ込められてるのに?」
「はい。きっと、敦賀さんがそうされるんだったら何か訳があるはずだから・・・。私に出来ることがあれば・・・差し出がましいんですが、助けたいって思っちゃったんです」

遠慮がちに可愛らしく微笑んだ最上さんは、俺の理性に激しく揺さぶりをかける。

「でも、役の中でまだ紗夜はそんな気持ちを抱いてはいけないから・・・紗夜にシフトしないように・・・」
「俺に会わないようにした?」
「そうなんです・・・。スイマセン、全ては私が未熟なばっかりに社さんまで巻き込んでしまって・・・。でも、もう大丈夫です!」

そう言って胸を叩く最上さん。
でも、俺が大丈夫じゃなさそう。

「はぁぁぁぁ~~~・・・」
「どうされました・・・って敦賀さん!?」

「ん・・・も・・・・・・限界・・・」

俺は気付くと、最上さんの華奢な体に寄り掛かるように覆いかぶさっていた。
所謂、抱き締めている状態。
たかだか2週間、会えなかったくらいでこの様だ。
最上さん不足著しいこの躰は、どうしようもなく愛しいこの娘を求めてる。
最初は慌てていた最上さんだったが、ふとある考えに至ったのか、少し怒った様子で見上げてきた。

「・・・・・・・・もしかして敦賀さん・・・ちゃんとご飯食べてないでしょう!?」
「あぁ、そうかもしれないね」

都合良く解釈してくれたその理由に乗っかることにした。
至近距離で聞く最上さんの声が心地良い。

「んもう!社さんにちゃんとお願いしてたのに・・・ってそういえば、社さんに楽屋に戻るってお伝えしてなかったかも・・・」
「・・・・・」
「探してたりしたら大変ですよね、社さんに電話で・・・」
「最上さん」
「は、はい」
「ちょっと黙って」

今、こうして抱き締めているのは俺なのに、その口から出てくるのは「社さん」ばかり・・・。

・・・面白くない。

最上さんからすれば、俺は栄養失調でよりかかっただけだと思ってるんだろうけど。
どうすれば、最上さんの中を俺でいっぱいに出来る?
感情の波に敏感な最上さんは途端に大人しくなったが、それが居た堪れなかったのか話を変えてきた。

「そ、そういえば敦賀さん・・・さっきのシーンなんですけど・・・紗夜に無理矢理水を飲ませる所って、フリだけでしたよね?なのに実際にされるから私ビックリして・・・」

確かに脚本上は「フリ」だけで良かった。カメラワークでいくらでも見せようはあるからと。
頭ではスラスラ浮かぶ言い訳を直前で飲み込んで、俺は体を少し離し最上さんの揺れる瞳を捕える。

「どうしてか・・・知りたい?」

ピクッと肩に力が入る最上さん。
ゆっくりと、息がかかるほどの距離をさらに縮め、唇を寄せ、僅かに触れ・・・そして。

「れーーーん!俺が悪かったーーー!だからキョーコちゃんを責めないでやってくれーーー!」

社さんが楽屋に乱入してきた。
散々探し回ったようで、息が切れ、髪も乱れ気味だった。俺が最上さんを泣かせる程追い詰めているとでも思ったのか・・・。
放置したのは謝るし、鍵をかけていなかったのは俺にも過失がある。

しかし、タイミングが悪すぎるでしょう。

「や・し・ろ・さん?」
「え、あ!?ご、ごめっっ俺・・・きょーこちゃ・・・?」

一瞬で状況を察知した社さんは顔を青くし、退室しようとするも最上さんを呼ぶ。
俺もつられてそちらを見やれば、涙目で真っ赤になった最上さんは、腰が抜けたように床にへたり込んでいた。
その様子が可愛くて。

俺の中でプツリと、何かが切れた。

「最上さん」

耳元で甘く囁く。



「閉じ込めてあげるから、覚悟しておいてね」



俺の愛の籠から、君が気付くまでずっと―――




Fin




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