最初の一歩

今更感が半端ないですが、年越しのお話です。
まだ大丈夫…でしょうか!?

私自身正月気分が抜けていないのでヨシとします。

というか、私的大事件が起こりました・・・詳しくはまた後日出来たらします。






年の瀬真っ只中、キョーコは自室にてゆっくり過ごしていた。

だるまやは本日も営業しており、年越しの瞬間をここで過ごすお客さんも多いそうだ。
忙しいお店の手伝いを、と気合を入れていたが、女将さんから「キョーコちゃんは休んでて良いから」という休日宣言を賜ったため、1年の終わりをのんびり迎えられることになった。
滅多に見ないテレビをぼんやり眺める。
年末年始に役者の出番は意外と少ない。やはり人はこんな時笑いを求めるのか、芸人さん達のお祭り状態で、どのチャンネルも系統は似通っている。
それはそれで楽しいけど・・・とキョーコはまた何気なくリモコンのチャンネルボタンを押す。

「あ・・・」

するとそこには、新春のドラマに出演する役者陣が番宣をしており、キョーコのよく見知った人物ももれなく確認出来た。

「敦賀さん・・・」

『芸能界一イイ男』で人気実力共にうなぎ昇りの蓮は、画面の向こうでまだ仕事をしている。
すらりとした長身に、誰が見ても振り返る美貌をカメラに注いでいるその様は、まるで違う世界の人間のようだとキョーコは思った。
いつも直接会って喋れる距離にいるのに、なぜだか今はひどく寂しく感じる。
次のドラマの番宣のために人が入れ替わり、蓮の姿も同じく消えた。
時刻は23時50分。
もうすぐ今年が幕を閉じる。


『5・4・3・2・1・・・ハッピーニューイヤー!!!』

テレビでは、毎年恒例のカウントダウンから新年を迎える挨拶を皆が交わし騒いでいた。
キョーコはこたつで少し火照った頬をテーブルに押しつけ、近づいてくる睡魔に身を委ねようとウトウトし始めた頃。

~♪

鞄に入れっぱなしにしていた携帯が着信を知らせる。
夢現のキョーコは、モソモソと緩慢な動作で携帯を取り出し、ディスプレイの名前を確認すると、眠気は遥か彼方へと吹っ飛び大慌てで通話ボタンを押す。

「も、もしもし!」
『もしもし、最上さん?あけましておめでとう』
「あ、はい、あけましておめでとうございます!」
『今年もよろしくね』
「こちらこそ、よろしくお願いします」
『・・・もしかして寝てた?』

電話の相手は言わずもがな、先ほどまでテレビで見ていた蓮だった。
新年のあいさつをお互い交わし、キョーコが眠りの国に旅立とうとしていたことをズバリ当てられてしまう。

「うっ・・・寝てたとまでいかずとも、いずれそうなっていたとは思います・・・」

そんなにだらしない声を出しただろうかと、キョーコは暖かい体に一気に冷気を浴びたようだった。

『ごめんね、起こしたみたいで』
「いいえ、とんでもない!敦賀さんはお仕事だったのにわざわざお電話いただけるなんて、こちらの方が申し訳ないです!」
「いや・・・・・・・」
「敦賀さん?」

不自然に訪れた沈黙に、何かあったのかと名前を呼ぶ。

『・・・1年の最初に、最上さんの声が聞きたかったんだ』

一拍おいて、静かに語られた内容にキョーコは固まり、心で溜息をつく。

(はぁぁぁぁ~~~~~・・・この人は、人の気も知らないで・・・)

「敦賀さん・・・」
『ん?』
「そんなこと言われると、誤解しちゃうのでヤメテくださいね」

最近自分に訪れた心の変化を、キョーコは少しずつだが受け入れ始めていた。
だが、この先輩に対してあらぬ期待を抱くことは、相手にとっても本意ではないはず、と意を決して注意したのだ。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ、誤解されないようにすれば良いの?』
「え?」

蓮の言いたいことが分からずに、思わず聞き返したがそれは叶わなかった。

『分かった。じゃあ・・・』
「つ、敦賀さん?もしもし?」

ツーツーツー・・・

耳に響くのは通話終了の音だけ。
珍しく言葉を最後まで言い切らずに切ってしまった蓮に、届かないと知りながらも携帯に向かってキョーコは呟く。

「平気であんなことポンポン言うもんじゃないですよ・・・」


しばらく、と言っても僅かな時間の後、再びキョーコの携帯が振動と共に鳴りだす。

「もしもし」
『もしもし、最上さん、俺だけど』
「はい、存じております」
『外、出てこない?今だるまやの前なんだけど』
「えぇぇ!?」
『なんならそっちまで行こうか』
「ちょ、ちょっと待ってください!」

こっちまで来るとは、店の中に入るという事だろうか。冗談じゃない、いくら年齢層が高めのお客さん達でも、騒ぎにならないわけがない。
以前のように自分の影響が分かっていないための発言かとも思ったが、今回は多分確信犯なんだろう。
新年早々、どんなイジメだろうとキョーコは慌てて階段を下りる。

「おやキョーコちゃん、あけましておめでとう。こんな時間に外へ出るのかい?」
「あ、女将さん、あけましておめでとうございます!えっと・・・と、友達が近くに来てるみたいで・・・」

接客中の女将さんへ新年の挨拶を告げ、足早に店の出口を目指すキョーコ。そんなキョーコに対し、何も追究することなく女将さんは笑顔で「気を付けるんだよ」と送り出してくれた。
背中でかけられた声が嬉しい。これから向かう寒風の中、ホッカイロのような言葉を受けキョーコは外へ出る。
すぐに目的の人物は確認出来た。
相変わらずどこから見ても目立つ風貌で、目立つ車の前にいるのだから人目を惹かないほうがオカシイ。
案の定、僅かながら色めきたった声がチラホラ聞こえてくる。

「お、お待たせしました敦賀さん。あの・・・急にどうされたんですか?」
「さっきの電話の続きを直接会って話したくて」

至極当然の質問を投げかけるも、眩いばかりの笑顔でよく分からない答えを返されキョーコは半分灰になりそうだった。直接会う必要がどこにあるのだろう。

「敦賀さん・・・テレビ局からここまで結構な距離があると思うんですが」

だから、電話で良かったのではないかと。

「ああ大丈夫。少し飛ばしただけだから」

どうにも噛み合わない会話に頭を痛めていると、蓮から思いがけない一言が飛び出す。

「最上さん。デートしよう」
「はい?」
「誤解、解かないとね」

おいで、と差し伸べられた手を。
このまま取ってはいけない気がして、キョーコは一歩が踏み出せないでいる。

「来てくれないならキスするよ?」
「だから!そういう所が誤解の元なんですよ!」

きっと実行されていたであろうその脅し文句は、キョーコの息巻いた乗車により未遂となる。


蓮は、キョーコが抱いた誤解を解くために。
いや、その誤解こそが是なのだと。
キョーコは、蓮に発言の不用意さを説くために。
これ以上、叶わぬ期待は持ちたくないのだと。


蓮の車は、交差するようにすれ違う思考を乗せて、新しい道を走り出した。




あけましておめでとう!



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コメント

めっちゃ続き読みたいですww

Re: タイトルなし

りえさん

コメントありがとうございます。
こちらの続きをご所望されるとは…!(笑)
新年早々のドライブデートなんですから、敦賀さんには男を見せて頂きたいものですね!

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