正しい召喚のススメ 1

パラレル注意です。
メルヘンを目指しました。

続く予定です。









「えーい・・・うまくいかないわ・・・・」

ここはとある森のはずれ。
制服姿のキョーコがそこにいた。分厚い本を片手に、眉間に皺を寄せながら恨みがましく地面の魔法陣を見やる。

「私だって・・・私だって頑張れば、素敵な妖精さんたちを呼び出せるはず!」

気合を入れなおし、開かれている本のページ「自然界の妖精召喚方法」の通りに呪文を詠唱する。

・・・・・。
・・・・・・・・・。
風がそよっと吹いただけ。

「~~~~なにが・・・何がダメっていうの!?マイフェアリーはいずこ~~~!?」

既に現実逃避気味。
泣きながら想像の妖精さんたちと遊ぶ。

うふふ・・・あはは・・・キョーコちゃんキョーコちゃん・・・こっちへおいでよー・・・

「なーに馬鹿ヅラしてんだキョーコ」
「ぬぁ!?」

妖精とは程遠い怨念の塊ならすぐに投げつけられる勢いで「馬鹿に馬鹿って言われたくないわよバカショー」と返す。
えらく自信満々に現れたのはキョーコの幼馴染であり、何かにつけてはちょっかいを出してくる奴だった。
その見た目は世間で言う所の美少年という部類で、俺様な性格も相まってかなりのファンがいるらしい。

「あぁ?ろくに召喚もできねーやつが俺に口応えすんのかよ」

ツカツカと無遠慮に寄ってきては、キョーコの足元を見降ろす。

「うるっさいわね・・・すぐにアンタなんて追い越してやるんだから」
「あーわかったわかった。そんなことより、お前最近変わったことなかったか?」

突然真剣な顔をしてキョーコの目を覗きこむ。

「・・・別に?むかつく幼馴染が来たこと以外何も?」

一瞬、ほんの一瞬ドキリとした。何かあったといえばあったような・・・

「あーそーかよ。まぁ・・・こんな地味で色気のねー女、変な奴も近寄ってこねぇか」

プツン。

「~~~~~~~~~アンタの生皮剥いで悪魔にでもお供えしてやろうかーーーーー!!!」

ずあぁぁぁぁぁぁぁぁっと目に見えない何かがショータローに襲いかかる。

「おわぁ!?なんだこれ!?てめぇ怪しげな攻撃してんじゃねぇぇぇぇ・・・・」

怨キョの勝利。憎まれ口はフェードアウトしながら消えていった。
これもある意味召喚で、ある意味かなりの才能だろう。
はぁはぁと肩で息をしながら、キョーコはその勢いのまま自棄気味に叫ぶ。

「んーーーもう、なんでもいいから出ておいでーーー!」

ボフンッ!!!

突如、なんの変哲もなかった魔法陣に光が灯り、軽い爆発音とともに黒い影が浮かぶ。
そこに現れたのは・・・艶やかな黒髪に恐ろしいほどの端正な顔立ちの男。上から下まで黒ずくめの変わった服を着こなし、態勢こそ片膝をつき傅いているようだが、纏うオーラが只者ではない雰囲気を醸し出している。しかしもっとも驚いたのはその後。

「御呼びでしょうかご主人様」

キュラララ。
普通の女の子なら即死ものの眩い微笑みでこんなことをのたまう。
固まるキョーコ。


「な・・・なんか出たーーー!!」



場所は変わってキョーコの家。
木のぬくもりが感じられる小さなログハウス。学校の寮らしいが、町はずれに建っており周りには建物も見当たらない。
あのまま森の中で立ち話をするわけにもいかず「とりあえずウチへどうぞ」ということになった。
テーブルに無理やり着かせ、お茶を出しながら先ほど自分が呼び出してしまったであろう黒い人物と対面する。
目が合うだけでニコリと幸せそうな笑顔を向けるものだから、なんだか顔と耳が熱くなる。
椅子に腰かけているだけなのに、顔は美形そのものだし随分と長身だし体つきだって引き締まっててなんだか色っぽいし物腰は優雅だし・・・そこまで考えてキョーコはある答えに辿り着く。
もしかして・・・やっと・・・!

「えと・・・貴方は妖精さん・・・?」

期待に満ちた目で見つめられ、妖精と呼ばれた男は一瞬驚いたように固まったが、すぐに戸惑いながら答えた。

「残念ですが違います。私は、貴女に呼び出された・・・悪魔です」

今度はキョーコが固まる番だった。私が会いたかったのは妖精さんのはずなのに・・・私の何がいけなくて間違ったんだろう・・・

「あ・・・アクマ・・・さん?」
「そう」

頷くと、その麗しい悪魔はスッと立ち上がり再びキョーコの目の前へ。その一連の動作さえ綺麗だと。悪魔なんて衝撃の告白と相まって思考が停止したまま見つめていると、先ほどと同じように跪きキョーコの左手を壊れ物を扱うように掬い上げキスを落とす。

「すべては貴女の望むままに」

ヒイィィィィィィィィィ!!!!!

「ちょ・・・!!!ちょっと待って!!!」

急いで手を引っ込めて首をすごい勢いで振りながら飛び退く。

「何を待てと?」

またもや空いた隙をすぐに詰めてくる黒い悪魔。
だから!この顔で!この至近距離はよく分かんないけどダメなのよーーー!

「わ、わたしたち、名前!名前も知らないでそんな関係よくないと思うの!ね!?」

どんな関係よ、とキョーコのは自分の言葉に突っ込みたかったがそんな余裕は持ち合わせていなかった。

「これは失礼致しました。私は『敦賀蓮』と申します」
「敦賀・・・さん?私は、最上キョーコとイイマス」

蓮と名乗る悪魔は、キョーコの名前を噛みしめるように呟くと、またうっとりするような笑顔で傅いてきた。

「ではキョーコ様。なんなりとお申し付けを」

ここでハッと気付く。ずっと感じていた違和感。待ち望んだ望みを。自分は、恭しく傅かれたいわけではない。もっと単純に・・・

「じゃあ、私とお友達になってください!」
「え?」

そりゃあ悪魔もびっくりだろう。こんな願い事初めてに違いない。

「私、ずっと友達がほしかったんです。こんなお願いダメでしょうか?」

純粋な、どこかいたずらを含んだ瞳で蓮を見つめるキョーコ。蓮は今までに感じたことのない何かが胸に湧くような気がした。

「いえ・・・キョーコ様がそう望まれるなら」
「はいストップ!『様』なんてやめてください。敬語もダメですよ?自然体でいてほしいっていうか・・・」

そこまで言われると、蓮からストンと纏っているものが落ちたような感じがした。
いや、煌きベールが黒い妖しいオーラに変わったというべきか・・・。
クスッと少し笑うと流れるような動作で、突然キョーコを抱き寄せる。右手は後頭部に、左手は腰に。その鮮やかさといったら、キョーコに動くことも考えさせることも妨害して。
さらに耳元で囁く。

「それじゃあキョーコ?これからよろしくね」

ちゅ。
と頬に温かな感触と脳髄に響く濡れた音。

ピキョッ

音がするほど固まるキョーコ。

「あれ?どうしたの?」
「や・・・」
「や?」
「やっぱりダメーーーーーーーーー!!」

なけなしの勇気で叫んだ。




スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)