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天使の誘惑 3

こんにちは、珠々です。

天使の誘惑、最後を更新に参りました。
こんな過疎地にも関わらず、拍手やコメントをありがとうございます。
ありがたいありがたいと拝む勢いで、本当に励みになりますし嬉しいです。
頂いたコメントは何度も読み返しますし、ニヤニヤしてますから!

今回のお話は前述しました通り、某呟きにてお見かけしたワンピース画像が大元なのですが、どこかの国の言葉で「翼」って意味(だったはず!)で、翼を纏ったキョコたんなら天使しかあるまい!ということで、タイトルはすぐに決まりました。

しかし、書けば書くほど長くなる不思議。
すぐに3話目もアップしようと見直したら、納得出来ないところがたくさんあり加筆修正で少しお時間を頂きました。
当方、キョコをどれだけ幸せに出来るかに心血を注いでおりますので、敦賀さんの言葉足らずにはセルフつっこみの嵐でしたが、なんとか着地出来たかなぁと。

改めて、ひらめきをくださったUさん、挿絵を寄せてくださったきゅ。さん、ありがとうございました!
そしてお越し頂きました皆様に感謝申し上げます!
少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。

ではでは、続きよりどうぞー。










体が重いなぁ……

いま何時だろう……

まだ夢の中に半分浸りながら、私は腕をさまよわせダルマの時計を探す。
でも、サラサラのシーツの感触と、絶妙に包み込まれるような寝心地が、いつもの布団ではないと伝えてきて。
私はぼんやりと瞼を持ち上げる。

「おはよう」

まだ夢の中だった。

「夢だとか思ってない?」

そうであって欲しかったです。

「おはよう……ございます」

一瞬現実逃避しかけた私を、眩い笑顔で見事に引き戻した敦賀さん。
目の前に、というか、同じベッドで寝ているなんて、ありえない状況すぎてそう思っても仕方ないでしょう。
でも、服こそ昨夜の白いドレスを身につけてはいるものの、意識がハッキリするにつれ自覚しだした下肢の痛みや気だるさが、私を逃がしてはくれなかった。
無かった事には出来ない。
自ら飛び込んだ、偽りの睦事。

そして、別れの朝。

私は鈍い痛みを押し殺しながら、心地好いシーツの波間を這い出て、ベッドの上に正座する。
言うんだ。
もう、ここには来ませんって。
私の事は忘れてくださいって。

「敦賀さん……あの」
「最上さん」

私の言葉を遮り、敦賀さんも私の正面で居ずまいを正す。
なんだろう。
ピンと、空気が張りつめる。
いつになく真剣な表情の敦賀さんに、知らず手に力が入る。
鼓動もうるさい。

「……最上さん」
「は、はい」

「好きだよ」

「……はい?」

聞き間違いかな。

「あぁー……やっぱり……」
「えっえっ?」
「あのね、最上さん。よく聞いて欲しい」

敦賀さんは頭を抱えながら落ち込むと、すぐに私の肩をガシッと掴んで言った。

「俺は、君が、好きなんだ」
「い、いえ、そういうの良いですからっ」
「何が!?」
「私を気遣ってくださってるんですよね? 大丈夫です、気休めの言葉はいりません」

敦賀さんは優しいから、私が傷付かないように、せめて昨夜は愛のある行為だったのだと思わせようとしてくれているのかもしれない。

「気休めなんかじゃ……いや、そもそも俺の言葉が足りなかったからか……」

再び項垂れた敦賀さんは、「昨日の自分を殴りたい」とか物騒なことを言っていた。
しばらく唸った後、敦賀さんは珍しく弱った様子で昨夜の事を語る。

「ごめん……最上さんが俺の部屋に来てくれた時、その……すごく嬉しくて、舞い上がってたんだ」
「……? 敦賀さんなら女性が部屋に来るなんて慣れたことでは……?」
「君は俺を何だと……」

何故だか段々へこんでいく敦賀さんを放っておけなくて、起きたらすぐに出ていこうと思っていたのに、気付けば続く朝の時間。

「本気で好きになった娘がいるのに、他の女性を抱けるわけないだろう」

うんうん。流石敦賀さん。
大切な人以外には手を出さないのね。

……あれ?

何か、私の中で今日初めてある符号が生まれた。

「好きな相手以外は、抱いたりしない……?」

私の中であり得なかった可能性が浮上してきて、まさかと心の自分を叱咤しながら、恐る恐る聞いてみた。

「もう君以外じゃ、そういう気も起きない」

キッパリと。
多分。
何の取り繕いもない本心の言葉。

それじゃあ、まるで
敦賀さんが

「……わたしを……す、き……?」

自分で発した言葉が耳に届いてようやく、脳がこの状況を処理し始めた。

「分かってくれるまで何度でも言うよ」

何度も気持ちを伝えてくれていたのに、頑なに否定していたのは私の方で。

「好きだよ最上さん。……俺と、お付き合いをして頂けませんか?」

まっすぐな告白だった。
敦賀さんの真摯な瞳は不安に揺れ、懇願しているようにも見える。

決して叶わないと、諦めるほか無かったはずの恋を。
信じても、良いんですか?

「……ほんと、に……? わ、わたしで……」

良いんですか、と続くはずの私の言葉は、敦賀さんの抱擁で遮られた。
苦しいくらい強い力で、二人の間の隙間を埋めるように、ただ、温もりを感じるように。

「……信じてくれた?」

敦賀さんの声が震える。
不思議と心に吸い込まれていく気持ち。
私は、コクリと頷いた。

敦賀さんは腕の力を弱め、自分の額を私の額にくっつけると、「よかった……」と小さく溢した。

「最上さんに別れるって言われた時はどうしようかと思った……」
「だ、だって、まさか敦賀さんが私なんかを好きでいてくれたなんて夢にも思わなくて……。叶わない想いなら、せめて最初で最後の思い出を胸に一人で生きていこうと……」

そんな覚悟で、敦賀さんの部屋を訪ねたのに。
一晩で状況は一変してしまった。

「ごめん……最上さんが気持ちを伝えてくれた時に、俺もちゃんと応えてたら良かったのに……正直、一番大事な事を言い忘れるくらいテンパってたから」
「あ、あんな余裕そうだったのにですか!?」
「それは男の意地ってやつだよ。好きな娘の前で少しでもカッコつけたかったんだ」

今ばらしちゃ意味ないけどね、なんて苦笑しながら話してくれたのは、私だけに知らされた等身大の敦賀さんの気持ち。
それが、堪らなく愛しかった。

「敦賀さんはいつでもカッコいいですよ」
「だと良いけど……」

ふと、心の緊張が解けたからか、体は素直なもので。

きゅるきゅるきゅるぅ――――……

まるで、タイヤのスリップ音かと思うような空腹の虫が私のお腹から響いた。
ひどい……何もこんな時にこんな大音量で鳴らなくても……

ソロリと敦賀さんを伺うと、肩を震わせて笑ってくれていた。

穴があったら入りたい……なんなら掘りたい。
色気もなにもあったものじゃない自分の空腹中枢を呪いつつ恥ずかしさで凹凹していると、敦賀さんは私の頭をポンポン撫で「じゃあ」とベッドから起き上がる。

「朝食の支度をしてくるよ。最上さんはゆっくり休んでて」
「えっ、そんな滅相もない!」
「いいから、ね?」

有無を言わせないためか、敦賀さんは私の追随の前にと素早く部屋を出ていってしまった。

私の腹ヘリのせいで敦賀さんにお手間をかけてはいけないと、慌てて後を追おうとしたその時。
膝からカクンとよろめき、ベッドに再び崩れ落ちてしまった。
更に、着乱れたナイティドレスから覗く肌に、いくつもの赤い痕を見つけ、私はボフリと顔を赤面させる。

「これって……」

噂に聞く、所謂キスマークなんだとしたら、『独占欲を刻むように』つけるものだと、いつか敦賀さんは言っていた。

そっと。咲いた紅花を辿ってみる。
痛みはない。
敦賀さんが愛してくれた証に触れる度、じんわり幸せと嬉しさが溢れるけれど。

「つるがさん……」

ちょっと、これ、多くないですか……?

「ふ、服着ても見える所にないよね……!?」

わたわたと体を捻って確認するけれど、鏡で見ないことには全容が分からない。

「鏡は……」

出来れば姿見はあるだろうかと辺りを見回した所で、ガチャリとドアが開き家主の敦賀さんが顔を覗かせた。

「最上さん、コーヒーで良かったかな……って、どうしたの?」
「つるがさぁん……」

情けないけれど、思わず涙声になってしまう。
敦賀さんは私の様子を見るなり心配そうに側に来てくれた。

「最上さん」

落ち着かせようと背中をさすってくれる手の大きさや温かさに、安心と不安が交錯する。

「敦賀さん……こ、これ……」

ソッと、裾を捲りながら紅い跡を指差し伺う。

「見える所にはないですか……?」
「………………」
「ちょ、敦賀さん!?」

なんで無反応!?

「あぁ、ごめん。君があまりに可愛いから」
「はぃ!?」

なんでこの人はサラリとそういうことを言えるのかしら。

「大丈夫だよ。見られるような所にはつけてないから」
「そ、そうですか……」

ホッとしたのも束の間

「本当は目立つ所にしても良かったんだけどね、虫除け代わりに」

きっと普通の女性なら卒倒しそうな眩しい笑顔で、穏やかじゃない台詞を吐く敦賀さん。
そんなの必要ないのに。

「『そんなの必要ない』って思ってない?」
「えっ」

ひぃ。

「否定が口をついて出そうだから先に言っておくけどね」
「なななにを」
「俺が、どれだけ、君に近付く男を憎く思ったか」
「ええっ!?」

心当たりが全くないんですが!?

「君は自分がどれだけ魅力的かそろそろ自覚を持った方が良い」
「そ、そうは言われましても……」

爽やかな朝なのに、敦賀さんから黒いオーラが漂い始めた所で、私は異議を唱えた。

「わたしは敦賀さん以外にドキドキもしなければ側に居たいと思ったり、触れたいと思うこともないですし、例え気の迷いから私を気に入ってくれた相手がいたとしても、そんなホイホイ付いていったりしません。つまり、えーと」

しどろもどろになりながら、何とか言葉をふりしぼる。

「私は、敦賀さんしか見えませんから」

そこまで言った所で、突然敦賀さんに抱きしめられ、「わぁっ!?」と再びベッドに背を預ける体勢となった。

「つ、つるがさん?」
「……そんな可愛い事言われたら……」

吐息混じりに囁かれ、次いで触れるだけのキスを幾度も落とされる。
深くはないのに、唇の感触だけで頭がぼんやりと痺れだす。
とろけそうな、ひどく甘みを帯びた眼差しで見つめられた所で――

ピリリリリ……ピリリリリ……

ベッドサイドに置いていた携帯電話が甲高い電子音で着信を知らせる。
敦賀さんは一瞬、ものすごく複雑そうな表情を浮かべたけれど、諦めたように深い深い溜め息を吐くと、体を起こして鳴り続けている携帯電話に手を伸ばした。

「はい。おはようございます社さん。……はい……あぁ、それなら」

電話の向こうは社さんだった。
仕事の連絡かな。
敦賀さんは社さんと話しながらも、私の頬を撫で、声は出さずに『ごめん』と、口の動きで伝えてくれた。
むしろ私がお邪魔をしているので、ブンブンと首を振る。
そして、通話しながら何かを確認するため敦賀さんが部屋を後にすると、私は糸の切れた人形みたいにベッドへボフリと倒れ込んだ。

社さんという日常が舞い込んだことで、昨夜から続くこの時間は紛れもなく現実なのだと。
唐突に思い知って。

「…………しんぞう……はれつしそう……」

幸せや嬉しさや恥ずかしさを、ぜんぶぜんぶひっくるめて。
誰にも届かない呟きは、朝の空気に溶けて消えていった。






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