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落とし穴 7


どれほどの時間が経っただろう。
それは永遠のようで、一瞬のようでもある。


窓の外の色から、時間を推し測る。
薄い紫から、群青へ。
世間では仕事を終え帰路に着く頃だろうか。
けれど、そんな喧騒もここには届かない。


覚悟はしていた。
なにせ、自覚した途端に失恋したようなものだったから。
伝えるつもりもなかった。
けれど、気付いたら滑り出ていた想いは果たしてどうなったか。
キョーコは目に押しつけた腕の暗闇から、自分も消えてしまいたいと思った。
どう足掻いても、待っているのは血まみれの自分。だったらいっそのこと、早くトドメを刺してほしいと思うのに、中々その時は訪れない。
キョーコは腕を顔から外すことが出来ずに、ただ視覚以外の全てで蓮に集中する。

「・・・それは・・・・・・」

蓮がようやく発した言葉は酷く掠れて小さかった。

「・・・先輩として?」

自嘲、だろうか。
確かに正しいその位置は、今ではこんなにも重い枷となる。

「もしくは・・・社さんにそう言えって言われた?」
「・・・っ!」

キョーコはあまりの衝撃に跳ね起きる。自分の気持ちを全く信じてくれていないことに、同時に今まで築いてきた「先輩・後輩」の壁というものに返り討ちにされて。

「だったら無理しなくていい。そんな心にもないこと」
「違う・・・違うんです。私、ホントに・・・!」

ふっと向けられたのは、自分自身を切り刻んでいるような蓮の笑顔。

(私は・・・あなたに笑っていて欲しいのに)

「嫌われる要素はあっても好かれる要素なんて俺にはないだろう」
「・・・・・・」

尚も続く否定の言葉に、キョーコの中で何かが吹っ切れた。

「君を泣かせたことだって一度じゃないんだ。嫌われて然るべきだと自分でも思ってる」
「敦賀さん・・・」
「それに、俺には幸せになる資格なんて・・・」
「~~~~敦賀さんっっ!!」

キョーコはぐいっと蓮の胸倉を掴むと、そのままの勢いで飛び込み、キスをする。

キス・・・と呼べる程のものでもないかもしれない。
強引に唇と唇が触れ合うだけの、しかも仕掛けた方がガチガチに固まっているムードの欠片もない行為。

「・・・プハッ・・・これで・・・信じてもらえましたか!?」

さっきご自分で仰ったことの実践ですよ!と息巻いているキョーコに対し、蓮は完全に思考が停止していた。

「どんな素敵な断り文句が飛び出るか覚悟してたのに、まさか信じても貰えないとは思いませんでした・・・から・・・・・・・って・・・・・・・」

今の状況を冷静に見てみる。蓮の上に跨っているキョーコ。
そのまま魂が抜けていきそうになるのを捕まえて、一瞬で数歩後へ下がり土下座する。

「も、申し訳ございません~~~~~~~~~!!!!!私ったらなんて無礼で破廉恥な行為を尊敬する先輩に働いてしまったんでしょう!!かくなる上は腹を切って詫びるしか・・・!!あ、介錯人はモー子さんにでも頼んで・・・」
「最上さん」
「はいぃぃ!」

フワリと体が浮いたと思ったら、次にくるのは暖かい圧迫。
キョーコは蓮に抱き締められていた。

「俺は、君に触れてもいいのかな?」
「あ、あの・・・そういうのは先に言っていただかないと・・・」

固まったキョーコを殊更強く抱き締めながら、蓮は堪え切れないとばかりにクスクスと笑っていた。

「・・・敦賀さん?」
「うん、ごめん。初めてだなって。女の子の方からあんな風にキスされるの」
「!!!」
「しかも好きな子から」
「・・・え?」
「ん?」
「・・・誰が」
「俺が」
「・・・誰を」
「最上さんを」
「・・・す?」
「好き」
「・・・ううう嘘です!」
「あのね・・・、君がそれを言う?」

あまりの狼狽え方に、腕から逃げていきそうなキョーコを蓮は逃がさない。

「だって、意地悪としか・・・それに、敦賀さんは女性には誰でも優しいし」
「そうかな?」
「この間会ったモデルさんだって、敦賀さんに優しくしてもらったって・・・私、私なんだか変にモヤモヤして、他の女性に優しい敦賀さんは見たくないとか・・・ってあぁもう何言ってんだろう私」

蓮にとってはトドメの一言。

「最上さん・・・そんな可愛いこと言うと、我慢できなくなるよ?」
「ななな!?」

蓮はギュッと一度強く抱き締め、それからキョーコの体を離して目の前に座らせる。

「ごめんね、改めて言わせて欲しい」

真摯な瞳に、キョーコはドキリと心臓が跳ねた。

「君が好きなんだ。誰にも渡したくないくらい」
「~~~~~っ!ふ、不束者ですか宜しくお願いします!」

三つ指立てて、土下座と変わらぬ頭の下げ方をするキョーコにまたしても吹き出す。

「ぷっ!それってお嫁に来てくれるみたいだね?」
「めめめめめっそうもございません!!!」
「うん、いいからいいから。いずれ、ね」
「敦賀さぁーーーん」
「とりあえず、キスから勉強する?」

ここから先はどこまでも甘い時間で。
更けゆく夜に幸せは始まったのでした。


ちなみに。
今日は「ロ○ハー」放送日。
社はなにげなく付けていたテレビでソレを見ることになり、明日の自分の運命に涙していた。

このO.Aのキョーコを見たどれくらいの男がオトサレ、蓮を悩ませるかはまた別の話。




fin
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コメント

初めまして!

珠々さま、今晩は!
最近スキビの二次小説に手を出し始めて、色々巡っているうちにここに辿り着きました!
まだこのシリーズしか読ませていただいていませんが、文章の書き方というか雰囲気とかがとても素敵でコメントさせていただきました!!
すごく好みの文章で、ニマニマしながら読みました!
他のものも読むのが楽しみです!!
これからも素敵なお話書いてください!応援してます♫

Re: 初めまして!

わぁ初めまして!!
こんな辺境の地へようこそお越しくださいました^^
数多あるスキビ二次界隈から拙宅へ辿り着いていただいたなんて嬉しい限りですv

うちは他サイト様に比べて作品も多くないし更新も亀ではありますが
またお暇な際にでも遊びに来ていただけるよう精進しますね!
嬉しいコメント、ありがとうございました^^

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