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酔守

お久しぶりです、珠々です。

随分間が空いてしまいました。
春ですね!暖かい日も増えて、こちらなんかはすっかり半袖で扇風機の時もあります。

あ、そういえば今スキビの原画展、やってますよね。
サイトマスターさんで赴かれた方もいらっしゃるようで羨ましい限り!
良いなー良いなー。
なんで沖縄は陸続きじゃないのか。
せめてもう少し近ければひょいっと遊びに行けるのに。

と、言うわけで。
隙間時間で亀の歩みの如く書いてましたお話になります。
もっと仕事の合間とかに作業出来れば良いんですが(←)どうにも最近忙しさが半端なく。。
少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。

では、続きよりどうぞー。










「キョーコちゃん、ごめん!!」
「や、社さん!?」

キョーコと蓮はお互い長らく抱えていた恋煩いを見事昇華させ、晴れて恋人同士となったのは少し前のこと。
明日はキョーコの久しぶりのオフのため、蓮の部屋で帰りを待っていると、焦るようなインターホンの音が鳴り響き、急いで玄関のドアを開けた所、冒頭の台詞が飛び込んできたのだった。

「お、おかえりなさい……って、敦賀さん……?」

ひとまず出迎えの挨拶をするも、よく見ると社に支えられぐったりと項垂れているのはこの部屋の家主である蓮だった。
足元の覚束無さから意識があるのかないのか、常の様子でないのは確かだった。
キョーコは社に、何があったのかと目で問う。
しかし、社も首を振りながら当惑の眉をひそめた。

「それが、帰りの車の中で事切れるようにこうなってさ。単に飲み過ぎだとは思うんだけど、俺もずっと側に居たわけじゃないから何があったのか……」
「そうですか……」

きっと周りの目がある間は「敦賀蓮」でいるため気を張っていたのだろう。
帰路に着いたタイミングで一気に酔いが回ったのかもしれない。
それにしても、ここまで飲み過ぎるなんて普段絶対しないのに。

「ほら蓮、家だぞ。キョーコちゃんもいるってのに、潰れてる場合じゃないだろ」

そろそろ俺の筋肉が悲鳴をあげるんだと、社は蓮を揺り起こした。

「…………もがみ……さ……ん?」

キョーコの存在でようやく起動を開始したのか、蓮はのっそりと上体を起こす。

「敦賀さん、だいじょうぶですか?おうち、入りましょう?」

大きな声は頭に響くだろうと、キョーコはなるべく落ち着いた声音で優しく蓮に話しかけた。

(あとはキョーコちゃんに任せて邪魔者は退散するかな)

しっかりと、とは言い難いが、自分の足で立って歩けているのだから大丈夫だろうと、社は担当俳優の背を見守る。
蓮は慈愛溢れたキョーコの声に誘われ、フラフラと足を進め近付き。
極自然だと言わんばかりに。
キスをした。

「んんっ……!!?」

まさかそうくるとは思っていなかったキョーコは、何の構えもないまま突然のキスに真っ白になる。
腰を抱かれ、角度を変え、何度も交わされる口付け。

「……っっ!」

キョーコは必死に蓮の体を押し返そうにも当然叶わず、いつもより熱い蓮の舌に翻弄され、ゾクリと頭の芯が痺れ……

ふいに訪れた息継ぎに、涙ながらに叫んだ。

「やっ……やしろさんったすけてぇ!」

突然目の前で繰り広げられた酔余の情事に固まっていた社だったが、キョーコの助けを求める声に我に返る。

「れ、蓮っ!キョーコちゃんを困らせるなバカ!」



**********



「ごめん……ほんとに……なさけない……」

場所は玄関前から部屋の中へ。
蓮はリビングのソファに横たわり、自己嫌悪の海に沈んでいた。

「いえ……私は大丈夫ですから、ね?」

流石に人前であんなキスをされるのは役者だとて恥ずかしい。が、現在進行中で凹み中の蓮に言うのは追い討ちというものだろう。
キョーコは水を差し出しながら、蓮に事の経緯を聞いてみた。

「どうして、あんなになるまで飲んじゃったんですか?」
「それは………………」

珍しく歯切れが悪い。
キョーコが辛抱強く待っていると、蓮は観念したように水を一口飲み、口を開いた。

「……今日はCM発表会で、そのまま打ち上げに参加しただろう?」
「はい」

国内でも指折りの大手酒類メーカーのCM。
少し前に撮影を終え、ようやくお披露目の今日、そのまま演者スタッフ交えての打ち上げパーティーに参加するとはキョーコも聞いていた。

「そこで参加していた関係者の一人が、君を次のCMキャラクターに起用したいって話を始めてね」
「私を?」

キョーコは先日二十歳になったばかり。新成人が選ぶライトなアルコールとして若年層にも呼び掛ける狙いがあるのだろう。

「それだけなら良かったんだ。君にとっても良い話だし」

でも。

「どうやら最上さんを手籠めにしたかったらしい」
「はい!?」

思わず声が裏返る。
地味で色気のない自分には縁遠い言葉過ぎて「まっさかー」と出そうになるが、蓮の忌々しげな表情が冗談でないと物語っていた。

「『成人したての若い子なんだ、酔わせてしまえば前後不覚になることもあるだろ』って。直接的な事は言ってないけども、まぁ分かるよね」

恐らく今日と同じような打ち上げの場が開かれ、尚且つそれなりの立場の人間からすすめられる酒を、若手女優が断れるはずはない。
もしキャスティングが実行されたとすれば、そのプロデューサーの思い通りになっただろうが。

「そ、それで……どうされたんですか?」

恋人であるキョーコを下衆な目で見る相手に、蓮はどう対したのか。
世間に公表している仲であれば良かったが、お互いの仕事の関係上まだ隠れている身の上。
あからさまに騒ぎ立ても出来ないのだから。

(まさか暴力なんて……)

カインの時に尋常ならざる身体能力、もとい戦闘能力を有しているのは分かった。
人に見られないよう腹パンして相手を沈めるくらい何てことなさそうな気がする。

(からの、やけ酒とか)

……………。
いや、ないないない。
そもそも社が気付かないはずないし、役者生命が終わってしまうような愚行しないはずだ。

「……最上さんの考えてるようなことはないから」
「えっ」

ギクリとした。
蓮は相変わらずキョーコの思考を的確に読む。
なぜ分かるのだろう。
実はテレパシストだったりして、等とお馴染みの妄想が走り出した所でまたしても蓮が釘を刺す。

「顔見たら分かるから」

ほらまた。

「そんなの敦賀さんだけです」
「うん、だって君を一番近くで誰よりも見てるから」
「そ、う、ですか……」

ほんとこの人は……。
臆面もなくサラリと台詞めいた言葉が出てくるのだから敵わない。

「……それで、顛末を聞いても?」
「あぁごめん。ちょっとした嘘をね、ついてみたんだ」
「嘘?」



**********



ガヤガヤと喧騒に包まれた宴の席。
レストランを貸しきっての打ち上げパーティーは、一仕事終えた後である事も手伝って開放的な雰囲気に包まれていた。
程よく酒も入り、ついつい軽口を叩いてしまうこともあるだろう。
キョーコへの下心を隠そうともしない男は、あわよくば手引等目論んではいないだろうか。
件の発言の直後、蓮は全力の外面でニコヤカに返した。

「京子ちゃん、可愛いですからね」
「そうだろ!昔から目をつけてたんだ」

グッと、拳に力が入ってしまうのは仕方ない。

さて。

「……実は、最近京子ちゃんと飲む機会があったんですよ」
「へぇ」

自然に、さりげなく。

「彼女、俺より強いですよ」
「えっ、そうなのか……そんな風には見えないけど」
「人は見かけに寄らないって言うでしょう」

サラリと嘘を溢し、蓮は近くにあったグラスを手に取り。

「俺一人潰せないようじゃ、目的は達成出来ないかもしれませんね。◯◯さんもかなり自信がおありのようですが……」

琥珀色のアルコールをコクリと飲み干した。

「試してみますか?」



**********



以上が、事のあらましだった。

「結果、相手が先に参ってくれたんだ」
「そうでしたか……それでこんなご無理を」
「はは……俺も倒れてたら世話ないね、情けない」

いつになく落ち込み、自嘲の笑みを浮かべる蓮に、キョーコは「いいえ」と首を振る。

「守ってくださって、ありがとうございます」

感謝と、愛しい気持ちをめいいっぱい込めて。
横になっている蓮に、キスをした。

「………………」

驚いて固まる蓮。

「……なんですか」
「……いや、こんなご褒美が貰えるなら頑張った甲斐もあったかなって」

恥ずかしがり屋のキョーコは滅多に自分からキス等しない為、今しがたの可愛いお返しは確かにご褒美に違いなかった。
改めて言われると恥ずかしさも募る。
キョーコは照れ隠しにプイッと横を向くと、蓮はその隙にキョーコの軽い身体を強引に引き寄せ、自身の腕の中に招いた。

「わっ……つるがさっ」
「心配だな」
「え?」
「こんなに可愛い最上さんが他の男に拐かされないか心配だよ」
「そう言ってくださるのは敦賀さんだけですよ」
「はぁ……君は自分の評価を見直した方が良いよ。俺の周りだけでも君を狙ってる男はかなりいるのに。今日の事だってその場しのぎには変わりないんだ。もし不用意に酒をすすめてくる男がいたら気を許さないように」
「は、はい。気を付けます」
「ん、よろしい」

キョーコの返事を聞いてひとまず良しとしたのか、蓮はそのままキョーコを抱き締めて再び意識を手離した。

「つるがさん……?」

蓮の鼓動を間近に感じながら、キョーコは重くないだろうかと腕から抜け出そうとするも、優しい拘束はそれを許してくれそうになかった。

(心配してくれるのは嬉しいけど)

抜け出すのは諦め、キョーコも心地よい温もりに微睡みだす。

(……多分……大丈夫じゃないかな……)

ウトウトと。
幸せな夢路に旅立った二人。


その後しばらくして。
京子酒豪伝説が真しやかに囁かれ始めるのは、また別の話。



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