モシモナふたり 5


大変ご無沙汰しております、珠々です。
前回更新がハロウィンとか、、足が遠退いて申し訳ありませんっ。
早いものでもうすぐ2016年が終わろうとしていますね。
これだけ放置してた間何してたかというと。

心の怪盗団に時間を盗まれておりました。
ペルソナ5がですね、ものっすごい面白くて……!!
気付けばプレイ時間は100時間超。
クリアした時には世間で言うところのペルソナロスに軽く陥りました。
いやぁ、良い作品でした。
個人的には祐介×双葉なやりとりがもっと見たかった……
他にも積みゲーがたくさんあり、更には人生初USJに行ったり!!
楽しかった……絶叫系乗れない人だけど、あそこは楽しいところでした。
ただそのおかげで休んだ分の仕事が溜まり締め日までカツカツで、イレギュラーな仕事も何故か多く、てんてこ舞いな12月でございまして。
体力的に厳しく更新が途絶えてしまい、今に至ると。。

ただ、広告が出てしまってからも拍手での反応ありがとうございます!
何よりの活力です!本当に感謝感謝しかないです!近々お返事も致しますね!

そして、せめて年が終わる前にキリをつけねばと。
今回でモシモナふたりは終わりとなります。
少しでもお楽しみ頂れば幸いです。

では、続きよりどうぞー。










――入っても良い?

真意は分からないけれど、どうしてか、受け入れちゃいけないような。
戻れない迷路に誘い込まれるような。
甘い甘い、罠のようだった。

「狭い部屋ですが……って、仕事貰ってる身分でこんなこと言っちゃダメですね」

アハハとキョーコは殊更明るく努める。
そこまで広くない部屋、ベッドに並んで腰かけているため蓮の気配を間近に感じ、妙にソワソワしてしまう。
唯一の懐中電灯は壁際に置き、上に向けることで即席の間接照明として役立っていた。

「俺も部屋の広さは気にしてなかったけど、贅沢言うともう少しベッドは大きいものが良かったかな」
「普段あの大きさのベッドに慣れてたらシングルサイズは小さいですよ……ね……って」

冗談めかして言う蓮に、つい気が緩んだキョーコは笑いながら言うが、ハタと気付いたように口を押さえる。

(私が敦賀さんちのベッドサイズ知ってるってオカシイわよね!?)

失言だったと冷や汗が背中を流れるが、蓮はキョーコの動揺を察して「最上さん」と安心させるように微笑んだ。

「寝室にはカメラもマイクも設置されてないみたいだから大丈夫だよ」
「そ、そうなんですか?」
「うん。唯一のプライベートエリアだね」
「なぁんだぁ。私、油断しちゃダメだと思って無駄に姿勢よく過ごしちゃいました」
「最上さんは意識しなくても姿勢良いよね」
「それって固苦しいって言ってます?」
「まさか。誇るべき長所だよ」

クスクスと二人して笑い合う。
蓮からの呼び方も「最上さん」といつも通りなのも手伝って、キョーコは徐々に調子を取り戻していった。
だが、あることに気付く。
撮影の延長でなければ、なぜ蓮はここにいるのだろうか。

「あの……ところで敦賀さん……。もしや私、何か至らない点がございましたでしょうか……!?」

どうやらキョーコの中で、蓮は反省会をするために来たのではないかと思い至ったらしい。

「え?」
「鉄は熱いうちに打てと申しますように、何か私の未熟な立ち居振舞いがあったのならばお教え頂きたく!」

さながら切腹前の覚悟の顔でビシリと正座をするキョーコ。薄暗い中でも鬼気迫る様子は声色からも分かる。
となると、蓮は介錯人だろうか。

「あー、最上さん?」
「はい!!」
「ダメな所なんて無かったから、とりあえず肩の力抜いて?」
「え、でも……」
「折角だから少し話でもと思っただけなんだ」
「そ、う……なんですか……?」

どうやらダメ出しや反省会ではないと分かったキョーコは、ヘニャリと背筋の筋肉を緩めた。
その時。
ゴロゴロと再び雷鳴が響く。

ビクッ

途端にキョーコの身体が強張った。
蓮との会話で丁度緊張を解いた事もあり、あれだけ気にしないよう努めた雷に反応してしまった。

「あ……」

こんな時に限って雨は遠慮がちにシトシト降り、余計に静寂が重く感じる。
誤魔化すには間が開きすぎて、明るく何か言おうにも全て嘘っぽくなりそうで。
キョーコが頭の中でグルグルと悩んでいると、ふいに蓮が口を開いた。

「……いつから?」
「……え?」
「怖いのに、平気なフリをするようになったのは」
「こ、怖くなんて……」

咄嗟に否定しようとしたキョーコだが、ジッと、蓮の真摯な眼差しに見つめられ、取り繕おうとする気持ちが不思議な程小さくなっていく。
キョーコは目を伏せ、スゥと一呼吸おくと、ゆっくりと当時を思い出すように話し出した。

「……子どもの頃……私は一人なんだって、気付いた頃でしょうか」

何の力もない、小さな小さな子どもの頃の話。
いつまでも迎えに来ない母親。
預けられた所詮他人の子であると自覚していたため、ショータローの両親に迷惑はかけられなかった。
ぬくもりのない布団で迎えた豪雨と雷は、幼いキョーコの心を徐々に弱める。
誰か側にいて欲しいと切に願っても、叶うことはなかった。

「甘える相手も、弱音を吐ける相手もいない。泣いてもどうにもならないなら、一人でやり過ごすしかなかったんです」
「それを、アイツは……?」

誰とは言わずとも、そう呼ばれるのは一人しかいない。
子供の頃から一つ屋根の下で育ち、少なくともこの業界に入る前は一緒に暮らしていた、ショータロー。
キョーコは自嘲の笑みで返した。

「知るわけないです。子供の頃はウザがられるだろうと思って隠してましたし、こっちに来てからもほとんど家には帰って来ませんでしたし」
「そうか……。ねぇ、最上さん」
「はい」
「上書き、していい?」
「……へ?」

蓮の言葉の意図を図れず、首を傾げ聞き返すと、隣の気配が動いた。

「……怖いのも辛いのも、寂しいのも」

ベッドが少し沈み、蓮の声が近くなる。

「俺で、全部」

薄闇に光る虹彩。
心地好い低音が耳を震わせ、身体の奥まで染み込む。
熱に浮かされるように、思わず諾と、口から滑り落ちそうになる。

「ダメ、です……」

ゆるく、首をふった。

敦賀さんは優しい。けど……

「そんなことされたら」

その優しさは、とても残酷なことなんですよ?

「一人で過ごすこんな夜が、今まで以上に辛くなるじゃないですか」

そばにいて欲しい時に、敦賀さんの幻影を思い出すだけなんて。

「だから、だめなん……っ」

キョーコの言葉は、最後まで音になることはなかった。

「んんっ……!」

抱き締められ、唇を塞がれる。
一体何が起こっているのか。
抵抗も出来ず固まっていると、やがて唇のぬくもりは離れていった。

「……もしかしてきみは……俺を優しいと思っているかもしれないけど、それは違うよ」

身体の拘束も解かれたが、それでも至近距離で熱の籠った瞳をぶつけられる。

「自分の気持ちに素直なだけ。……傲慢だろう?」

泣きそうな顔を見るくらいなら、悪者にでも何でもなってあげる、と、蓮は続けた。

「だから、最上さんも呼んで」
「……よ、ぶ?」
「うん。君が寂しい時、辛い時、怖い時、俺を呼んで……必要として」

まるで壊れものを扱うように、大きな手で優しく頬を包まれる。

「いつでも駆け付けるから」

嘘偽りのない、ましてやその場しのぎでもない、蓮の心の声。

「む……むりですよ……遠くにお仕事行ってたらどうするんですか……」
「それでも」

重ねて、懇願にも似た蓮の言葉。
実際、ダークムーン撮影時に沖縄から飛んできてくれた過去もあるため、言葉だけの軽い気持ちでないのが分かる。
キョーコは茫然と蓮を見つめた。

「ほんとに、きてくれそうで……」
「なに、信じてないの?」
「て、いうか……き、き」
「き??」

じんわりと。
氷が溶けていくように。
キョーコの時間が動き出す。

「………………きす……しました……?」

自ら言葉に出したことで、一気に現実が襲ってきた。

穴があったら入りたい。
むしろ地球の裏側に到達したいとは後日談。

キョーコは蓮が何かを言う前に、慌てて捲し立てる。

「だ、だいじょぶです!分かってますから!アレですよね、外国の方のスキンシップみたいな!?私があまりにもウジウジしてるから紛らわせようとしてくれたんですよね!?」
「もがみさ」
「ぜんぜん、ぜんぜん気にしてませんからっ!!キスくらいドンと来いですよ!!」

ガシッ

キョーコの細い肩を、蓮はいっそ痛いほど掴み俯く。

「きみは……何も分かってない……」

地を這うような、ドスの効いた声に、恐れ戦かないはずもなく。
ヒィと、喉がひきつる。

「『ドンと来い』って言ったね……いいよ」
「つ」
「紛らわせるでも、哀れみでも、慰めでもない、俺がどんな思いを込めているか……」

トスンと、背中がベッドに吸い寄せられ、見上げれば。

「叩き込んであげるよ」

先輩俳優は極悪な貌で、綺麗に微笑んだ。





「と、言う訳で、本日のゲストは敦賀蓮さんと京子さんでしたー!」

VTRも終わり、トークも一通り回ると、メインMCのブリッジロックリーダーがエンディングに向けて締める。

「はい、オッケーでーす」

オープニングと同じように客席から拍手があがる中、収録の終わりが告げられた。
カメラも止まり、共演者へ挨拶も済ませた光は、浮き足立ちながらキョーコへ話しかける。

「キョーコちゃんお疲れ様!」
「光さん。収録お疲れ様でした。記念すべき第一回ゲストに私なんかが呼ばれちゃって良かったんでしょうか」
「もちろん!こちらこそ、キョーコちゃんで良かったよ。家庭的な所も見れたし」
「そうですか?」
「うん。良いお嫁さんになるだろうなって」
「それは嬉しいです」

クスクスと可愛らしく笑ってくれるキョーコを見て、光は幸せを噛み締めた。

(やばい、俺いま顔赤いかも……)

「と、ところで、相手は敦賀くんだったけど、何も困ったことはなかった…?」

照れ隠しと話を繋ぐために、無難な話題を選んだつもりだったが。

「えっ!?な、なにもなかったです、よ!?」
「そっ」
「最上さん」
「は、はひ!」
「そろそろ時間じゃない?次はTBMだっけ、俺も一緒だから送るよ」
「あっ、ありがとうございます」

蓮に促されたキョーコは、光含めたブリッジロックメンバーへ会釈をすると、スタジオを後にした。

「キョーコちゃん……」
「なぁリーダー」
「なんでキョーコちゃん、敦賀くんは朝少食って知ってんねやろ」
「えっ」
「敦賀くんだって朝一キョーコちゃんに『相変わらず早いね』って。相変わらずってなんやろな」
「えっ!?」
「もしかして……」
「あの二人……」

そこまで言うと、慎一と雄生は光の肩をポンと叩き、無言で楽屋へと足を向けた。

セットの撤収作業が進む中、残されたのは、石のように固まった光だけだった。






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