正しい召喚のススメ 27


こんにちは珠々です。
本日より梅雨入りしました沖縄。
バイク乗りには辛い季節ですねー。

家庭訪問を乗り越え(片付け頑張った)、梅雨入り前にとたくさん掃除したら疲労困憊ですよ。
仕事も、なんか、ワンオペですかって勢いでやることがてんこ盛りです。
前任の方から引き継ぎ受けてないのも問答無用で持ってこられますからね、ちょっと待って。

ふぅ。
ちょっとだけ愚痴でした。

なんとか更新しようと浮上した訳ですが、少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。(もうひとふんばりー)
拍手やコメントもありがとうございます!!
近日中にお返事致しますので、しばしお待ち下さいませ。

では、続きよりどうぞ。












睨み合い、一触即発。
キョーコを渡せと、魔王は言う。

「……何故です」

刺し違えるのも辞さないと言わんばかりの蓮の殺気に、魔王は大仰に溜め息を吐いた。

「お前はその娘を助けたくねーのか」

「…………は?」

蓮が、大きく目を見開く。

「勝手に殺してやるな。最上くんはまだ生きてる……かろうじてだがな」

魔王の言葉が終わるや否や、蓮は急いでキョーコの心臓の音を確認する。


……………………トク……ン…………


血の気の引いた身体から、微弱ではあるが心臓の鼓動が聞こえた。
集中しなければ気付かない程弱々しく、だが確かに生きている人間のオト。

「……いきて、る?」

蓮は呆然と腕の中のキョーコを見つめる。
途端に、じわりと存在が大きく重く感じ、一層抱く力を増す。

「安心するのはまだ早い。正直一刻の猶予もないぞ。今にも切れそうな糸で魂が繋がってるだけなん」
「どうすれば助かるんです!?」

魔王の言葉を遮り勢い込むと、蓮はここへきてようやく表情を見せた。
不安と希望の入り交じった必死の懇願に、魔王も真摯に頷く。

「いいか。ただ傷を癒せば良いわけじゃない。離れかけてる魂を定着させる必要がある」
「つまり?」

勿体ぶったつもりはなかったが、先を促すような蓮の急いた態度に魔王はニヤリと笑ってみせた。

「最上くんの身体の時間を巻き戻す」





魔王と蓮でキョーコを取り囲む。
術式の中央に配されたキョーコは魔力の流れを一身に受け、チリチリと肌が帯電しているようだった。
魔王は右手の人差し指と中指をピンと揃えて立てると、宙へ何かを描き軌跡を残す。

ヴォン。

キョーコを中心に大きな時計が浮かび上がった。羅針盤のような不可思議な魔術文字が幾重にも刻まれており、時間を示すであろう針がカチリと逆回転を始める。
カチカチ。
針が動く度、文字は時計を離れ煌めく光の粒子になると、中心にいるキョーコへ吸い込まれていく。
やがて時計自身もとけるように消滅すると、みるみるうちに貫通したはずの傷が塞がっていった。

「……ふぅ。流石に老体にゃキツいな」

キョーコの肉体の時間だけ逆行させる荒業はどうやら成功したらしく、魔王は一息つくと腰をトントンと叩いて見せた。

「さて、俺の仕事はここまでだ。眠り姫を起こす魔法は分かってるだろう?」

固唾を飲んで見守っていた蓮は、向けられた魔王の意図を汲み取り、真剣な眼差しで頷く。
未だ白い顔で横たわったキョーコの側で跪くと、壊れ物を扱うように、そっと唇を重ねた。

(最上さん……)

――トプン

目を閉じ集中すると、水に沈むように、キョーコの意識の奥の奥、深層へ潜っていく。
清濁入り交じった、白と黒の世界が奔流のように蓮を襲う。
あたたかく照らし包み込む温もりがあるかと思えば、他者を寄せ付けない身を切る程の冷たさが渦巻いてもいる。
全てがキョーコたらしめるものだと思えば、蓮には愛おしさしか感じなかった。

(最上さん……どこだ)

やがて、フッとなんの抵抗もない空間に辿り着く。
真っ白な、無垢で無防備な世界。
恐らくここがキョーコの精神の最奥だろう。
その中心で、まあるい光の塊を見付けた。
蓮は静かに近付くと、壊さないように慎重に触れ、祈るように囁く。

「最上さん……」

トクン

「起きて?」

トクン

光は気付けばキョーコを象るが、目は固く閉ざされ生気のない様はよく出来た人形のようで。
蓮は愛し気にサラリと髪を梳くと、そっと、唇を重ねた。









「ちゃんと迎えられたか?」
「……えぇ」

蓮の意識が浮上し、重ねていた唇を名残惜しげに離すと、キョーコの頬に手を添える。
まだ目覚めなくとも、しっかりとした呼吸が感じられ、顔に赤みもさしているようだった。

「よかった……ほんとうに……」

もう、大丈夫だろう。
キョーコを失うかもしれない、それは、言葉では現せない程の恐怖で。
ここで蓮も、ようやく呼吸が出来たようだった。

「魔王様……ありがとうございます……俺だけじゃ助けられなかった」
「そうだろそうだろ」
「ただ……一つ、聞いて良いですか」
「あ?」

キョーコは助かったものの、これで大団円とするには確認しておかなければならないことがあった。

「どうして、ここまでしてくれたんです?」

何らかの見返りを要求されるだろう事は予想出来る。問題はそれが何なのか、だ。

「まぁ~た難しいこと考えてるだろ」
「貴方相手に考えるなと言う方が無理です」
「良い心がけだ」
「それで?」
「孫に頼まれちゃ叶えてやらんわけにはいかんからな」
「……マリアちゃんに?」
「あぁ。マリアが最上くんの作ったクッキーをえらく気に入ってな。『是非また食べたい』んだと。おまけに家に呼べとまで言ってきた」
「じゃあ……」
「言っただろう?『情けは人の為成らず』ってな」

確かにあの時そんなことを言っていた。
思い出した蓮は、何でもない事のように笑う魔王を前にして複雑な気持ちになる。
キョーコを争いに巻き込まないよう「匿ってやる」との申し出を突っぱねた訳だが、実はマリアからの招待だったのだから、引き受けておけば今回の事態も避けられたかもしれない。
結果、自分の判断がキョーコを危険に晒したのでは、とまで思い至れば、蓮は頭を抱えて落ち込むしかなかった。

「助けられっぱなしが癪なら、今度二人揃ってうちに来い。それでチャラだ」
「……ありがとうございます」

蓮が力なく微笑むと、これで話は終わりとばかりに魔王はスッと治世者の顔になる。

「さて、あそこでノビテる二人は連れて行くぞ?」

視線を向けた先には、グッタリと気を失っているレイノとミロクがいた。

「お好きにどうぞ」
「アッサリしてるんだな。報復には足りないと思ったが」
「もうどうでも良いです」

蓮の中で存在も忘れていたくらいの矮小な相手、これ以上手をかける気も起きない。

「これで反魔王派は壊滅出来ますか」
「ふん、首謀者を簡単に吐くとは思えんが、まぁやりようはいくらでもある」

敵には回したくないなと思ってしまう悪い笑顔で魔王はニヤリと笑った。




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