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正しい召喚のススメ 25


こんにちはー珠々です。
ゴールデンウィークですね!!
皆様いかがお過ごしでしょうか。

私は昨日は仕事でしたが、てっきり暇だろうとのんびり構えていたら面倒な仕事を言い渡されて白目です。
まだ終わってないよ金曜まで持ち越しだよっていうか来週までかかるよーウッ

そんなことは忘れて。
明日明後日は朝から晩まで予定がつまってますので、その前にと思ってこちらに顔を出しに参りました。

進みも亀で申し訳ないのですが、今月中には!
終わるのではないかとっ!
目測しておりますので、もう少しだけお付き合いくださいませ。

あ、そうだ。
今回キョーコが少し奔放ですか、セッちゃん要素が入ってるイメージで、と補足でした!
















『離して』

夜の帳が降りた屋上で、その音は静かに空気を伝う。
キョーコから蓮へ向けられた、甘い声。

「……っ」

決して離すつもりはなかった。
だが、蓮の腕は意思と関係なく細い身体の拘束を解く。
柔らかな温もりが遠退き、サラリとした髪が闇の中軌跡を描いた。
抗えない力、動かない身体。
それなのに、キョーコの希望を叶えた事で、蓮の中に信じがたい悦びが沸き上がる。
快感にも似た充足感と意識の乖離に、思考が追い付かない。

「あ……はっ」

自由になったキョーコは初めて空気を吸うように深く深呼吸をすると、堪えきれないとばかりに愉しげに笑った。

「あはははは!」

両手を広げ、軽やかに踊るようなステップでくるぅりと身体を翻す。ただ見守るしか出来ない蓮とレイノの視線を集めると、それが当然のようにウットリと微笑む。

「なんだか、キモチイイ……」

いつものハツラツさは影を潜め、開きかけの花のような色香を纏い、少女特有の危うさを孕んで舞う。

「もがみさん……?」

普段のキョーコとはまるで様子の違うその姿に、蓮はこぼれるように少女の名を呼んだ。
その掠れた声を受け、キョーコは目を細めて笑みを作る。

「……イイコにするの、疲れちゃった」

首を傾げ悪びれず言うと、動けないレイノを横目で見ながらクスリと笑う。

「もう、うるさい声も聞こえないしね?」

傀儡で操られているとは思えない言動から、術は既に解けているようだった。
それならば、現在のキョーコの奔放さはどういう事だろうか。

(防衛本能、か……?)

蓮は仮説を組み立てる。
傀儡の命令に従おうとする自分と、抗おうとする自分。本来であれば生身の人間が敵うはずもないのに、生来の意思の強さ故か拮抗していた精神。そこへ、不幸にも想定外の情報が上書きされ、どうにか保っていたキャパを越えてしまった。
壊れてしまう心を繋ぎとめるように創り出されたのが、誰にも支配されない強い人格だとしたら。

「ねぇ敦賀さん?アタシの言うこと、聞いてくれます?」
「……俺に、出来ることなら」

支配者然と振る舞うキョーコの言葉は即ち、蓮への『命令』となった。
キョーコと蓮の契約は従属。蓮の意思に関係なく従わせる強制力は、陶酔するよう精神にまで支配が及ぶ。主人の望みこそが至上であると。

「ふふ、どうしよっかなー。じゃあ……」

キョーコは蓮の答えに笑みを深めると、おもちゃを探す子供のように歩きながら辺りを見回す。
だが、吹き荒ぶ風が冷たい学校の屋上には、キョーコの興味を引く程の目ぼしい物はなかった。
遠くでは街の灯りが煌めき、この場で起きている異変等些事だと言わんばかりに静かに時が流れる。
目を眇めて少し考える仕草を見せると、キョーコはくるりと反転して蓮へ微笑んだ。

「ここ、壊して」

極上の音楽のように、キョーコの声が蓮を撫でる。
ゾクリと、身体が痺れる。

「こ、こ……?」
「そう、ここ。学校」

キョーコはにっこり頷くと、無邪気に、何でもないことのように言う。

「コンナトコロがあるから他人と比べられて、評価されて、上だの下だの、バカみたいでしょ?」

唄うように、囁くように。

「だから、ねぇ、無くしちゃお?」

思考が霞む。
いけないと、止めるべきだ。
きっと、心のどこかで思ったことはあるのだろう。無くなってしまえば良いと。これまでの不遇を思えば当然だ。しかし、それは本来のキョーコであれば望むべくもないもので。
それなのに。

「仰せの……ままに」

蓮の口は諾を告げ、身体は破壊の術を構成する。右手を上空に掲げると、遥か遠くの星の瞬きを遮るように、巨大な魔方陣が浮かび上がった。





魔法が存在する世界で、実際にその力を扱えるのはほんの一握り。
類い稀な才能とも言えるそれを、国は学ぶ場を提供することで一元化し管理することに成功した。
界を隔てた力の利用を研究、開発も担う国立機関も併設された学校は、広大な敷地面積を有し、建造物は校舎以外にも数多く存在する。
一つの街と言っても過言ではないほどの規模。その上空では、黒く光る軌跡が胎動を伝えるように走り結ばれていた。

空気が張りつめる。

ゆっくりと、蓮は天上へ向けた腕を降り下ろした。

すると、魔方陣は待ちわびていたように一際輝くと、命を全うすべく、夥しい数と質量を持った黒い雷を、大地に注いだ。

見るものがいれば、それは正に絶望だと言ったかもしれない。

つんざく轟音が、全ての音を掻き消す。

非現実な光景は、まるでスローモーションのように映り、あらゆる感覚を麻痺させる。
そもそも、どんな材質で造られたものだったのか。容易く崩れる建物はまるで玩具のようで。

静かに、静かに。

建ち並ぶ建造物が、物言わぬ瓦礫と化した。

対して、キョーコ達がいる校舎だけは何の影響もなく無傷で佇む。

「すてき」

いつの間にかレイノの横へ移動していたキョーコは、目の前の惨状にウットリと呟くと、顔色一つ変えずレイノを貫く闇色の刃を一本引き抜いた。

「ぐっ…………!」

朦朧とする意識を引き戻す激痛にレイノは顔を歪める。
ズルリと肉の裂ける感触も気にせず、キョーコは蓮だけを視界に捉えていた。


「……はぁっ……はっ」

瓦礫と砂塵が広がる景色を見下ろしながら、蓮はグラリと傾ぐ身体に膝をつく。呼吸も荒く汗が浮かぶ顔に、いつもの余裕はみられなかった。

「敦賀さん」

キョーコはゆっくり蓮に近付きながら、静かに横に並ぶ。

「こんな私でも、好きでいてくれる?」

飄々とした態度に隠れ、零れるのは恐らく柔らかい心の内。
応えを求められているのなら、蓮には一つしかなく。

「好き、だよ」

大きく息を吸い込み、無理矢理に呼吸を整えキョーコを見上げる。

「こんな酷いことさせちゃうのに?」
「君が望むなら、世界でも壊してあげるよ」

だから思うまま望みを言って欲しいと。蓮はキョーコの言葉を待つ。
俯いた横顔から、キョーコの表情は読めなかった。
暫くして。

「……アタシは……私は……誰かに愛されたかったの……」

苦しげに、吐き出すように。
涙を流すことなく、泣いているような告白だった。

「俺じゃ……ダメ?」

蓮にとって何を犠牲にしても、擲っても、キョーコより大事な存在はいなかった。
そんなキョーコが愛されたいと願うのであれば、喜んで全うしようと懇願する。
しかし、蓮の返事が分かっていたようにキョーコは笑った。

諦めの色で。

「それは契約だからでしょ?」
「……っ!」

蓮は咄嗟に否定しようして、同時に悟る。
どれだけキョーコを大事にしても、愛を囁いても、想いは伝わらない。
悪魔と主という関係が、それ以上にも以下にもならない枷となっていた。

「強制された気持ちなんて……」

キョーコは緩やかに左手を口許に寄せ、蓮との契約印へ ちゅっ と口付ける。

「そんなの、いらない」

蓮は動けなかった。

「だから、つるがさん」

キョーコはレイノから引き抜いた闇色の刃をゆっくり頭上へ掲げる。

「さよなら」

蓮へ振り下ろされる刃。
キョーコから齎される全てを受け入れようと、蓮は抵抗なく行方を見守り。

そして

ズグリ

肉に食い込む音が響いた。





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