スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

泥中の蓮


こんにちはー珠々です。
早いもので4月が終わろうとしてますね。今年のゴールデンウイークはうまいことやれば超大型連休になるとか。
うちは暦通りなので細切れ連休なんですが、それでもワクワクしますよね。
いっぱい寝たい。

さてさて。
今回の更新ですが、タイトルでピンときた方はその通り、本誌からの妄想になります。
未読の方はネタバレになりますのでご注意を!

と、言っても、ドラマの設定や性格は私の完全妄想なので、実際は全然違うとは思うんですがね?

くノ一キョコをカッコよくしたかっただけなんですよ!
短いし勢いで仕上げたので穴がたくさんありそうですが、雰囲気で察して頂ければ幸いなのです。











月夜。

市井が寝静まり、元より微かな町の灯りも疎らになった頃、影を生業とする者達が蠢き出す。
日向には決して現れない、闇を形作った狂気。
おぞましい悪意は時に、いとも容易く牙を剥き人をただの肉塊に変える。
泣き喚き恐怖に顔を歪ませるのか、それとも自らの最期すら察せず息絶えるのか。

いずれにせよ、力を持たねば、の話ではあるが。

「う……ぐ……」

人気の無い路地裏で、侍風の男は苦し気に短く呻くと地面に崩れ落ちた。
既に事切れている。
首には糸状の鋼糸が巻き付いており、外そうともがいたのだろう、血の滲んだ爪の痕がくっきりと浮かび上がっていた。
その惨状を見下ろすように、屋根の上には小柄な人影が佇む。

「志津摩様に仇なす者には死の報いを。……そう思いませんか、千鳥様?」

幼くもないが大人でもない、しかし聞き入ってしまう唄のような少女の声が、風にのって届けられる。
全身を黒い装束で隠し、隙のない身のこなしで危なげなく高所に立つ姿は、忍そのもの。
手甲から僅かに伸びた刃で指先に繋がった鋼糸をプツリと切ると、次の瞬間には流れるような動作で腕を振り上げクナイを撃った。

カツン……!

吸い込まれるように壁に突き立ったクナイは複数で、倒れた男の更に向こう側にいた女の着物を壁に縫い付ける。
艶やかな長い黒髪にスッと通った鼻筋、瞼を縁取る睫毛が揺れ、意思の強い瞳が覗く。凛とした佇まいで、町一番の美女と評されるのも頷けるものだった。
身動きを封じられても、狼狽えることなく屋根上のくノ一を見返すあたり、胆力の強さも垣間見える。

「紅葉……」
「お嬢様風情が首を突っ込むのは感心しませんが」

フワリと微笑む、紅葉と呼ばれたくノ一。
花も綻ぶような、思わず見惚れる程の美しさがあるのに、感じるのは寒気。
全く笑っていない目が、感情の仄暗さを現していた。

「私にも剣の覚えはあるわ。あの人の役に立ちたいと思ってはいけない?」

カツン……!

「……っ!」

更に千鳥の顔の真横にクナイが刺さる。
抜き手も見せないあたり、紅葉が相当の手練れであると物語っていた。

「これ以上、志津摩様のお手を煩わせないで頂きたいですね。さもなければ、思わぬ事故に見舞われるかもしれませんよ?」
「……ただではやられてあげないわ」

千鳥は負けずに微笑み返すと、顔の横に刺さったクナイを抜き、縫い付けられた着物を引き裂いて身体の自由を取り戻す。
上等だった布地はボロボロになったが、背筋を伸ばし紅葉を見据える千鳥の気品を損なうことはなかった。

「貴女は家柄で守るべき対象なだけ」

真っ向から視線を交わす二人だったが、千鳥は静かにそう告げると、話は終わりとばかりに踵を返す。

「ゆめゆめ、思い上がりませんよう」

そのまま、闇に溶けるように姿をかき消した。





紅葉は自室に戻り、壁に凭れかかるとズルズルと床に座り込んだ。

「志津摩、様……」

俯き、震える声で呟くのは主人の名前。
自らを抱き締め、瞼を閉じた。

――千鳥がいなくなれば……

正気と狂気がせめぎあう。








「泥中の蓮、か」

部屋で一人、録画した件のドラマを見ていた蓮は、放送が終わるとテレビを消しソファに身を沈めた。
だるまやで社から埴輪にされたキョーコだったが、折れることなくオーディションにも臨み、見事紅葉役を勝ち取ったと報告があったのはついこの間のこと。

「心配……してたんだけどな……」

主人公の浪人、志津摩に恋するくノ一。
奏江演じる千鳥の恋のライバルとして、ヒロインに辛くあたる役だと聞いていた。

出来るだろうか、と。

愛や恋をこよなく憎むラブミー部員1号のキョーコが、恋情をどう表現するのか。
だが、蓋を開けてみれば。

『志津摩様……』

最早、演技だとは片付けられない程等身大の「紅葉」がそこにいた。
瞳が、表情が、全身が志津摩を愛していると伝えている。好意を示す直接的な台詞はないにも関わらず、ひたすらに主人公を慕い守る懸命さが魅力的だった。

……果たして、これは全部演技なのだろうか。

蓮にも覚えがある。
役で誰かを愛する演技が必要な時、自然と相手にキョーコを重ねていた。

では、キョーコは?
『恋をする』想像だけで演じているようには見えなかった。

「……誰を見てる?」

蓮は握っていた携帯電話を横に放り投げる。
ドラマの感想をメッセージで送ろうとしていたのだが、やめた。

文字じゃ足りない。
声だけでも足りない。
直接顔を見て話したい。

先輩面は得意だろう?
怖がらせないよう、優しく、逃げられないように聞いてみようか。

「君の心には誰がいるんだろうね……?」

知らず、黒い笑みが零れた。








スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。