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鏡月 (後編)

こんにちはー。

放置甚だしく申し訳ございません、珠々です。
広告が出て早1ヶ月以上、何かと忙しく更新する時間もちゃんと取れず。。
と、言うのも、この夏から仕事に復帰してまして、日中はフルで仕事、夕方帰ってご飯作ってお風呂入れて寝かしたらもう一日が終わるという恐ろしいサイクルが出来上がっておりまして。
あれ、自分の時間?^^あれ?と、気づけばあと1ヶ月で今年が終わるとか冗談すぎて笑えませんよね。ほんと。
あと今無料で漫画が読めるアプリがいっぱいあって、ついついそちらを覗いてしまうんですよね(馬鹿)

そんなこんなで、ちまちま書き進めた鏡月の続きになります。
秋の話だったのに、もう冬!せめて暦が変わる前にはーということで、少しでもお楽しみいただければ幸いです。
ヘタ蓮だけど最後にパーンとなったら良いと思うんですよ。

あ、音沙汰がない間も拍手やコメントありがとうございます!!
近々絶対コメントのお返しに参上しますので!!
















君があんなに蕩けそうな顔で見つめるから。

月だろうと何だろうと。

妬けたんだ。

君の瞳に映したくなくて、わざと話しかけて意識を逸らせる。

自分がここまで余裕がないとは思わなかった。







「もう少しで出来ますからね」

今夜は念願の満月。
キッチンでは最上さんが約束の団子作り真っ最中だ。

「楽しみだな」
「あはは、簡単で申し訳ないです」

手際良くキッチンで作業する最上さんを邪魔しないよう、俺はソファに座って見守る。

俺と最上さん。
事務所の先輩後輩ながら、ドラマの共演がなければここまで接点がないのかと実感したのが少し前。
偶然にも出会えた休憩室で、なかば無理矢理月見を口実に部屋に呼んだ。
思えば必死だったんだ。
最上さんの、色を帯びた瞳に映る何かに、その心が奪われてしまうんじゃないかと。
きっと愛だの恋だのは全力で否定するだろうけど、一生誰も好きにならないなんて、そんな保証どこにある?
ざわめくイケナイ感情を役者精神で押さえつけ、平静を装うのがどれだけ大変だったか。

そうして迎えた今、目の前に最上さんがいるのに、俺は改めてある事実を突き付けられている。

やっぱり、男として見られていないんだろうな……。

今まで何度となく部屋に入れているし、あまつさえ兄妹として過ごした事もあるのだから今更かもしれないが、それでも何の警戒もされていないと思うと、流石にいくらかのダメージを負う。

とは言え、こうして触れられる位置に居てくれるのは今の関係があってこそなのだから、男として意識されようものなら叶わなくなるだろう。
……それは避けたい。

(……社さんにからかわれる訳だ)

脳内で「このヘタレ!」と呆れる社さんが再生された。
我ながら情けないとは思うが、最上さん欠乏症の末期である今、どんな小さな繋がりでも絶つ訳にはいかない。

「おまたせしました!」

俺が考えに耽っていると、最上さんがいくつかの器をトレイに乗せてやってきた。

「甘さ控えめにしてみたんですよ。お口に合えば良いんですが」

テーブルにコトリと並べられた小さな器は三つずつで、きなこと黒蜜、抹茶と餡子、みたらしの三種類の味がツルリと白い団子に色を添える。
最上さんは、いつかのワインゼリーのように俺の趣向に合わせて今回も作ってくれたのだと言う。
それだけで、どうしようもなく愛しい気持ちが溢れる。
このまま、思う存分抱き締められたら良いのに。もちろんそんなこと出来るはずもなく、俺は浮かれる心を押さえ精一杯感謝の気持ちを伝えるに留めた。

「美味しそうだね。ごめん、任せっきりにして……いつもありがとう」
「いえいえ!こちらこそ、私の戯言にお付き合い頂いてありがとうございます」

最上さんは自分を気遣ってくれたからこその招待だと思っているらしく、申し訳なさそうに深々と頭を下げる。

「誘ったのは俺だよ?」
「……敦賀さんは優しすぎます」

最上さんは困ったように微笑みながら、準備のため再び席を立った。

「飲み物はどうしますか?実は
私の分は買い物しながら買ってきてしまって……」

そう言って少し恥ずかしそうに出してきたのは、掌程の瓶。
まるでガラス細工のような切り込みの入った丸いキャップ、そのすぐ下は黒いリボンチャームが型どられ、全体的に丸みを帯びたデザインはいかにも女性に好まれそうだ。ミルクベースなのか、中の液体はまろやかな桃色で、ラベルにはラズベリーと表記されている。

「ジュースなんて滅多に買わないのに、気付いたら手に取ってたんです……」

きらびやかな宝石箱と並べても遜色ないような可愛らしい見た目は、なるほど、最上さんのメルヘン脳を確実に刺激しそうだ。

「お月見ですし、敦賀さんはお酒の方が良いんでしょうか?」
「いや、俺が飲んじゃうと君を送れなくなるからね」
「いえいえ、私は一人でも帰れますから大丈夫ですよ?」
「最上さん。こうしてお団子まで作って貰ったんだから、無事に送り届ける役目は俺に頂戴?それとも……」

俺はあえてワントーン落としながら意地悪に口の端を上げる。

「泊まりたい?」

すると。

「めっ!!滅相もございません!!それではお言葉に甘えて帰りはお願いします!!」
「ん、よろしい。それくらい素直にならないと、最上さんは多少我が儘言って丁度良いんだから」

激しく首を振って後ずさる想像通りの反応に苦笑しながら、当たり前のように先輩面を通した。

頷かれても困るくせに。









照明を落とした部屋で、音もなく静かに月を見上げる。
独りでなら何でもないただの月夜。

「キレイだね」
「……はい」

一緒にいるのが特別な相手だからこそ、観る景色も違ってみえるのだろう。
漆黒の舞台に煌々と輝く宝石は、地上の無粋な明かりを全く意に介さずそこに在った。
ただただ静かな時間が流れる。

好きだと言った。

最上さんもまた、あの時のように月を見ているのだろうか。
恋い焦がれ求めるように……月なんかじゃなく、俺を見て欲しいと思ってしまう。
邪な感情のせいなのか、ふと視線を感じて横を見ると、じぃっと俺を見上げる最上さんの潤んだ双眸とかちあった。
それだけで、どうしようもなく跳ねる心臓。

「……どうかした?」
「い、いえ!……なんだか暑いのでお水取ってきますねっ」

夜も随分更けてきて、どちらかと言えば冷えてきたはずなのに、暑いと言う最上さん。
慌てたように立ち上がった次の瞬間、足元から崩れ落ちるように体が傾むく。

「最上さん!」

間一髪、床に倒れる前に最上さんを抱き止めた。
細い体に、感じたことのない熱。

「あ……あれ……?」
「最上さん、大丈夫?熱でもあるんじゃ……」
「すみませ……なんだか……すごくふわふわして……」
「ふわふわ……?」

頭に手をあて、自分の状況がよく分かっていない様子の最上さんは、無意識だろうか、すがるように俺の服を握った。
あまりに可愛い反応と、熱っぽい吐息に思わず抱いた腕の力を強める。
ふわりと鼻腔を擽る甘い香りが、更に思考を霞ませた。

甘い……?

そこで気付く。
誘われるように香りの元を辿れば、最上さんが飲んでいたジュースの瓶が涼しげな顔でそこにあった。
中身のほとんど入っていないソレには小さな小さな注意書き。


『これはお酒です』


………………アルコールだったのか。

ジュースにしては凝った造りの瓶だと思ったんだ。もう少し注意して見てあげるべきだった。

「つるがさん……?」

揺れる瞳で俺を見上げる最上さんを、安心させるように撫でて落ち着かせる。

「最上さん、水持ってくるから待ってて?」

とにかく、酔いを少しでも覚ますため水を取って来ようとしたが、最上さんは俯いてポツリと呟いた。

「……イヤです」
「え?」
「はなれちゃヤです……」

…………今、なんて?

「いっちゃ…… や……」

おねだりするように、舌ったらずな声で懇願される。俺を捕まえている手が、心なしか強まった気がした。

「………………っ!」

瞬間、身体中の血が駆け巡る。
俺まで酒にあてられたように、正常な思考が追い付かない。
落ち着け、とにかく落ち着け。

「…………最上さん……どこにも行ったりしないから、ゲストルームで休もう?」

これ以上一緒にいたら、何もしない自信がまるでない。
せめて目の届かない所で休んでくれたら俺の理性も堪えられるはずだ。そう思い部屋の移動を促したが、最上さんはふるふると首を横に振った。
人肌恋しいという状態なのだろうか。
いずれにせよ、アルコールが原因なのは間違いない。
となると、この先付き合いや特に打ち上げ等酒の機会は必ず出てくる。その度に、誰とも知れない人間へ最上さんは寄り添う事になるんじゃないか?

「……最上さん」

俺の前以外で酔ったりしないよう、釘を刺そう。
記憶には残らずとも、本能に刷り込ませるように。

「酔った女の子がそんな可愛い事を言うと……」

俺の服を拙く握ったままのか細い手をツイと掬い、手の甲と、それから指先にキスを落とす。
ピクリと震えた最上さんの体は、少し傾けるだけで簡単に倒れた。
クルリと潤んだ瞳が驚いたように俺を見上げる。
形の良い唇を指でなぞり、ゆっくりと耳元に顔を寄せ囁いた。

「……襲われてしまうよ?」

純情が服を着てるような娘だ。きっと、真っ赤になりながら『破廉恥ですー!』なんて言いながら逃げるんだろう。
頭の中ではその次の台詞も用意して、速やかにベッドへ促すつもりだった。
なのに、予想された反応が全く返ってこない。
体勢を変えたことで、まさか酔いが一気に回ったのだろうかと焦っていると、ようやく最上さんが口を開いた。

「つるがさんになら、いいですよ?」

「…………は?」

トロンとした表情で、絶対に最上さんから聞くことはないだろう台詞が零れる。

「え……も、もがみさ……」

最上さんの発した言葉を理解するまでにいくらかの時間を要し、俺はなんとか声を絞り出した。

「…………は……ぃ……」
「最上さん?」
「…………すー……すー……」

かろうじて消え入る程の返事をした最上さんは、次の瞬間には健やかな寝息をたてて眠りの世界へ。俺の声はもう届かなかった。
安堵すると同時に、心のどこかで残念に思う気持ちも確かにあって。
俺は深くため息をつきながら、意識を手離した最上さんの髪を梳く。
人生で初めての飲酒なのだから、耐性も皆無でこれからすぐに目を覚ます事はないだろう。
しかし……。

「……俺なら、良い……?」

ひとりになった今、あどけない寝顔を見下ろしながら、脳内では最上さんの言葉がグルグルと廻る。

本当に……どうしてくれよう?









「う~ん……」

なんでだろう、身体中がダルい。
瞼も重いし、少し身動ぎしただけで頭もガンガンと痛む。
変な病気だったらどうしよう。
今日の仕事は何時からだったかな。それまでに治さなきゃ……。
ぼんやりと働かない頭で考えながら、段々と自分の体に感覚と意識が戻ってきた。
と同時に、一気にこれまでの記憶が甦る。

「~~あれ!?私っ!?」

ガバリと起きたのは最上級の寝心地を誇るベッドの上。まだ夜は明けていないようで、ダウンライトにほんのり照らされた見覚えがあるそこは、敦賀さんのマンションの一室。
満月のお月見に誘われて、確かお団子を食べていたはず。それは覚えているのに、どうしてベッドで寝ているのか経緯が全く思い出せない。

「おはよう」
「ひゃぁ!?」

突然横から声をかけられて、まともに反応出来るはずもなかった。
確認するまでもない家主である敦賀さんは、私の寝ていたベッドサイドに腰掛けニコリと笑う。

「つつつ敦賀さんっ!あの、私、お月見の途中から何があったか覚えてなくて……!」
「まぁそうだろうね」

あ、あれ?
何だか敦賀さん、怒ってる……?

「その……何か粗相を致しましたでしょうか……?」

一体何をしてしまったんだろう。
私は固唾を飲んで敦賀さんの言葉を待っていた。
すると、敦賀さんはベッドに手をついて私との距離を詰める。

「……手を出さなかった事、褒めてくれる?」
「えぇ!?」

手って、グーでパンチ的な!?
私そこまで敦賀さんに失礼な真似を!?

「す、すみませ」
「最上さん。とりあえず」
「はっ、はい」
「話し合おうか?」
「なん……っっっ」

何の話でしょう?

そう言いかけた私の口は、敦賀さんのそれで塞がれて音になることはなかった。

「……お願いだから、俺を見て?」

僅かに離された唇から、切なげに零れた敦賀さんの言葉。
この期に及んで敦賀さん以外を見るなんて出来るはずもないのに。
それがなんだか可笑しくて、私はクスリと笑いながら応える。

「私はずっと前から、敦賀さんしか見えてませんよ?」








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