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鏡月 (前編)

こんばんは、珠々です。

脳内がずっとクレパラモードだった訳ですが、久しぶりに蓮キョなお話の更新に参りました。

まだまだ暑いですが、秋の気配もちょっとずつ感じるようになってきましたね。
少し早いですが、秋っぽくお月様を絡めた話など。しかも、続くんじゃないかなー?というネタは頭にあるので、なるべく早めに形に出来ればと思います。

あと私事なのですが、環境の変化がありまして。
まず、引っ越しました。また。
今度はかなり近い場所への引っ越しだったのでまだ負担は少ないんですが、引っ越し当日まさかの台風直撃で死にそうでした。
(クレパラ原稿もしなきゃだったので、結構ハードだったんですよ)

それから、就職しました。
毎日目が回りそうなくらいバタバタして、今日なんて資格試験だったりしたんですよ。
受かってますようにー!

昨日は昨日で、ピーラーで左手小指の爪と肉を削いじゃいましてね。
めっちゃ痛いっていう。絆創膏で過ごしてますが、家事するのに水触るなってのが無理なので、数時間で指ふやけてペロリンって剥がれてます。
消費が激しい!
どうでも良いですが、小さいころ絆創膏をリバテープって言ってました。

関係ないことばっかり書き連ねましたが、続きよりどうぞー。














いつからだろう。

憎しみで染まった真っ暗な道を、優しく照らしてくれる月のようだと思ったのは。

どこまでも救いのない暗闇から、世界はそれだけではないと教えてくれたのは。

包み込んでくれる光に、恋い焦がれたのは。

でも。

追いかけても追いかけても。

月は逃げていくんです。





キョーコは電気も消えた事務所の休憩室で、ぼんやり外を眺めていた。
夜もすっかり更けて、大きな窓から見下ろす街は、星屑のような煌めきで溢れる。
このまま素直に帰ることも出来たのに、足が重く、なんとはなしに寄ったこの場所から動けないでいた。

見上げれば、まんまるまであと少しの、僅かに欠けた月。

キョーコがこの場所に来た時と比べると、随分高い位置まで昇っている、真珠のような淡い輝き。

そっと、月に触れるように窓に手を添える。
感じるのは、ヒヤリとしたガラスの温度だけ。
いくら焦がれようと、遥か上空に存在する天体に触れることは出来ないのだから。

「どうすれば……届きますか……?」

影を創る程の月光に呼ばれ、キョーコの意識は夜空へ向かい、ふわふわと漂う。
だから、気付かなかった。

「何に?」

自分以外の人間が居る事に。

「……え?」

突如かけられた声に、心臓が痛む。
血が、沸騰する。

「こんばんは、最上さん」
「つる、がさん……?」

いつだったか、キョーコは蓮をこう表現した。
「天上人」と。
ゆっくりと振り返った先にいたのは、確かに敦賀蓮その人。しかし、青白い月明かりを浴びた蓮は、まさに幻想世界の住人のようだった。

「最上さん? もしかして調子悪い?」

蓮はツイと長いリーチで即座に間合いを詰めると、さも当然のようにキョーコの額に手を当てる。

「つっ!」
「ん。熱はない、かな?」
「す、スミマセン、大丈夫です! ちょっとボーッとしちゃって……」

キョーコは慌てて一歩下がり、蓮の手から逃れる。
これ以上触られていたら、確実に体温が上昇してしまう。

「疲れているなら早めに休んだ方が良い。体調管理も仕事のうちだよ?」

芸能人たるもの体が資本なのだから間違ってはいないが、常に不規則な食生活を送り、過去には過信から高熱を出したこともある蓮からの言葉に、妙な可笑しさが込み上げる。一番蓮が自分の体を蔑ろにしているのではないだろうか。

「敦賀さんに言われるなんて……」

キョーコはふいに与えられた体温からの動揺を悟られないよう、冗談めかして応えた。

「これでも最上さんのおかげで随分健康に気を付けるようになったんだよ?」
「本当ですか?」

クスクスといつもの調子を装えば、「本当だよ」と蓮も苦笑する。

「それより最上さん、こんな遅い時間なんだ。少し待ってくれるなら送るよ」
「いえいえ! そんな畏れ多いっ」

キョーコはあらん限りの力で首を振り丁重に断った。

「本当に、ぼーっと月を見ていただけなんです」
「月?」

そこでようやく蓮も空を見上げ、まるく輝く白い月を認める。
キョーコも再び夜空へ向かい、瞳に月を浮かべた。

「好き、なんです」

ポツリと呟いた言葉が、やけに響く。
シンとした空気のまま、キョーコは「でも」と続ける。

「遠すぎて、追いかけても追いかけても届かなくて、逃げられて……当たり前なんですけどね」

だって月ですから。
天に向かい両手を掲げ、掴めない虚空の光を掌に納めた。

「私だけのものなはずないのに、捕まえたくて……」

キョーコはあははと困ったように笑い、頭上で合わせていた両手を下ろす。

「スミマセン、また変な話しちゃって」

キョーコのメルヘン思考にある程度免疫のある蓮だからこそ、すんなり話せたのかもしれない。だが、これ以上蓮を引き留める訳にはいかないと帰宅を告げようとしたその時、ずっと腕を組んで何かを考えていた蓮が口を開いた。

「逆、じゃないかな」
「え?」

逆?
一体何がだろうと首を傾げて、キョーコは蓮の言葉を待つ。

「……きっと、最上さんの事が好きだから、ずっと付いてきてるんじゃないかな?」

ポカンと目を丸くさせたキョーコに、蓮は諭すように優しく微笑んだ。

「こんな風に考えても良いんじゃないかな」
「そう……でしょうか……」
「うん。俺なら、好きな子はいつまでも見ていたいと思うから」

確かに、追いかけても逃げてしまう月は、こちらが離れたとしてもどこまでも付いてくるのだから。

「そっか……そうですよね……」

まだ完全に飲み込みきれていないものの、これまで塞ぎ混んでいた壁が、あっけなく崩れ去る。

結局のところ、気の持ちようなのかもしれない。

(本当、この人には敵わないなー……)

キョーコはじぃっと蓮を見つめると、続けて煌々と輝く月へ視線を移し、ふよ……と相好を崩した。
誰もが見惚れるほどの、甘い笑顔。
ビー玉のような瞳に映る光彩が、蓮の何かをざわつかせる。

「……妬けるね」
「え?」

蓮の小さな呟きはキョーコに届くことはなく、本心は笑顔で覆い隠された。

「最上さん。今度、お月見しようか?」
「お、お月見ですか?」
「うん。ダメ?」
「ぃいいえ! ダメじゃないです!」
「良かった。じゃあ次の満月に、俺の部屋で見ようか?」

キョーコは一瞬考えあぐねたものの、辿り着いた結論は「諾」。

「……わかりました。折角なのでお団子もご用意しますよ」
「それは楽しみだね。……っと、そろそろ行ったほうが良さそうだ」
「す、スミマセン、足止めさせてしまって!」
「それじゃあ、すぐ戻るから少しだけ待ってること。勝手に帰ったりしたら怒るよ?」
「へ?」
「送るって言っただろう? こんな時間に女の子一人放り出すわけにはいかないよ」
「そそそそんな滅相もない……!」
「この業界じゃ、先輩の好意に素直に甘えるのも後輩の務めだよ。いいね?」
「あ、ちょっと……敦賀さ……!」

言い逃げだろうか。蓮は有無を言わさず送りの約束をとりつけると、休憩室の入り口で一度振り返りニコリと微笑んで去っていってしまった。

「行っちゃった……」

一人残されたキョーコは、たった今までの会話を反芻して項垂れる。

「月が好きって言っちゃったから、誘ってくれたのよね」

確かに、蓮のマンションの高さからなら街の灯りに邪魔されることなく観賞出来るかもしれない。
そこに他意はないのだろう。
加えて、キョーコがこれまで何度も訪問している蓮の部屋だからこそ、断るのも憚られたのだ。
しかし、蓮への想いを自覚し受け入れてしまった今、二人きりの状態になるのは相当の精神力が求められる。

「敦賀さんの部屋……どんな顔して行けばいいのよっ」

以前と比べると、随分と鍵が外れやすくなった心の箱。溢れる気持ちが表に出やしないか、それが心配だった。

「……もってよね、私の心臓」

トン、と拳で胸を叩くと、背筋を伸ばして空を見上げる。

満月まで、あと少し。






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コメント

素敵

こそこそお邪魔させていただいております。
最近朝夕涼しい日もあったりして、お月見いいですね〜
きょこちゃん、お月さんも好きそう(^^)
ほんわかなお話大好きです。

Re: 素敵

ケロ様

初めまして。
長らくの放置申し訳ありません……!!!
気づけば1年近くお返事もせずに不義理を致しました!
平謝下……!(もしまた遊びに来てくださってたら良いのですが><)

お月見話への感想ありがとうございました。
秋と言えばやっぱり月を見上げる季節ですよね。
少しでもほんわかな気持ちになっていただけたら幸いです^^

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