南国の坩堝 (後編)

こんにちはこんにちはー!
もうすっかり初夏ですかね。暑いですよね。

最近私と言えば、ドラマの「シャーロック」にハマったり、無料漫画アプリで読める漫画にドハマリしたり、内職で忙しかったりとバタバタしています。
人生色々ありますよねー。

そして前回アップしたお話、ちょっと長くなったんで分けましたって言った時点ではほんと、オマケ程度のボリュームしかなかったんですが、伸びに伸びてしっかり1話分くらいになりまして。
カテゴリも作り前編後編とさせて頂きました。
実は私のテーマとして「女の子(キョコ)にジュース奢らせてしまった蓮が、どうにかお返ししようと考えて、「蓮」じゃあまりプレゼントあげすぎても恐縮されるから「カイン」で思いっきり買い与えてやろう」と企んでいるお話にしようとしてたのに。
着地点が違いすぎてビックリしました。
これはこれで良かったと思っています(←開き直りと言います)

そしてスキビスキーにあるまじきことに、未だ本誌未読でございます……!!orz
どうにも自分の時間がなく、そして本屋にも行けず。近所のコンビニには花ゆめなんてハイカラ雑誌置いてないし。
と、いう訳で、もしかしたら本誌展開とはちょっと矛盾する部分もあるかもです。
そしてコミックス派の方には若干のネタバレになるかもしれないので、ご注意ください。

では、続きよりどうぞ~。













「兄さん?」
「なんだ」
「これは何?」
「見て分からないか?」

撮影を終えてホテルに帰って来たのはつい先程のこと。
ヒール兄妹として過ごすなら当然部屋も一緒なわけで、これから夕飯どうしようかなーなんて考えながらドアを開けたのが数分前。 
アタシは部屋を見渡して絶句してしまった。
所狭しと置かれていた、未開封の荷物。荷物。荷物。
ざっと見るだけで服、化粧品、アクセサリー、日曜雑貨などがひしめいている。
しかも、すべて女性もの。

(こんな大量に……)

「まさかとは思うけど……アタシに?」
「……気に入らなかったか?」

(はっ!!)

その瞬間、兄さんにワンコの耳と尻尾が見えた。しかもシュンと項垂れて、捨てられた子犬のような目でアタシを見つめる。

(だからそれは反則~っ……!!)

だからと言って、ここで喜ばないのはセツカとして失格なのも事実。
言いたいことは山ほどあれど、あれもこれも全部飲み込んでバレないよう深呼吸した。

「んもう。そんな訳ないでしょ?ありがとう兄さん、大好きよ。……でもね、アタシのものを買ってくれるんなら一緒の時にしてね?兄さんとデートしながらお買い物する楽しみが減っちゃったわ」
「それは悪かった」

全く悪びれもせずに言う兄さん。
何か買う時は一緒じゃないと、アタシのものならお金を湯水のように使うことに一切躊躇わないんだから。

(まったく……こんなに買ってくれちゃったらもう個人的に買いたいものなんて……)

そこで、ハタと思い当たる節があった。

『財布を出せ』

あの時、頑ななまでにアタシからお財布をとったのは、もしかしてコレのため!?
アタシに買い物させないように!?

(でも……どうしてだろう……兄さんも浮かれてるとか?)

妹に何か買ってやるのが唯一の楽しみだと、世のおじいちゃんおばあちゃん顔負けの甘々なセリフを吐いてた兄さんだけに、海外ともなれば何か買い与えたい衝動が強まったとしても100%否定出来ないかも。
結局真相は分からないまま、とりあえず寛げる隙間もない部屋を片付けようと取り掛かったその時。
 
コンコン。

軽いノック音が聞こえた。

「?」

誰だろう?
一瞬考えたものの、わざわざ部屋を訪ねるなんて監督くらいだろうからと、ドアに近かった兄さんが出てくれた。

ガチャリ。
開けた途端に飛び込んできたのは、黄色を通り越して虹色のトーンが見えるような丸みを帯びた声。

「キャア―――!!居たぁ!!カインさんカインさん、一緒にコレ、飲みましょーーー!!」

愛華ちゃんだった。
撮影のシーンが違ったため、今日は会うことはないと思っていたのに、部屋を聞いてまで駆けつけたらしい。
物凄いテンションのまま差し出してきたのは、ストローが2本ささったヤシの実のジュースだった。

(あ……)

思い出される、コーンとの邂逅。
でも、今の私にはゆっくりと思い出を反芻する余裕はなかった。

「帰れ」

とりつく島もないとはこのことかと。
それくらいハッキリ断ったのに、愛華ちゃんはまったく聞いていないかのように続けた。

「あ、もしかして、飲んだことないです?ダメですよー飲まず嫌いは。って言っても私も初めてなんですけどね」

(凄いわ愛華ちゃん……)

何かに夢中な女の子の真髄を見た気がする。
どう返したら帰ってくれるか、兄さんの次の言葉を待った。

「……味くらい知ってる。人に勧めるなら自分が美味いと思うものを持ってこい」
「あ、カインさ……!」

パタリ。

兄さんはドアを閉めて会話を強制終了させる。
まだ何か外で愛華ちゃんが声をかけていたのが聞こえたけれど、それも次第に小さくなって、最後に聞こえたのは泣きそうな叫びだった。

「おいしくなぁぁいぃぃ~~~……」

(あ、飲んだんだ)

分かる、あの青臭さ。夢持って飲んじゃうとそうなるのよね~と、アタシは顔には出さずに心で同情する。
二人ががりでもないと飲み切るのは難しいんだから。

「セツ?」

ついうっかり思考の海に足を浸した所で、兄さんがアタシを呼ぶ。
いけない、ぼーっとしてた。

「なんだ、またアレが飲みたかったのか?」
「ううん、流石にアレはもう……」

ん?
また?

「なんで、アタシがあのジュース飲んだことがあるって知ってるの?」
「……………………」

珍しくフリーズした兄さんに、薄い幕に包まれた何かが顔を覗かせる。
なんだろう。

「兄さん……?」
「……………………見たんだ。お前が、アレを持ってるのを」
「そう、なんだ……」

(待って、持ってるのを見られたってことは、コーンと一緒の時!?)

「あ、アタシ、誰かと一緒にいた?」

(確かコーンの話だと『一番新しい記憶の人間の姿』に見えるって……)

敦賀さんにとって、コーンは誰に見えたんだろう。

「いや、お前一人だったが……ミス.ウッズと一緒なんじゃなかったのか?」

(そうだったー!!!自分で地雷踏んでどうするのー!!)

「ぅうんうん、そうよ」
「……本当に?」
「本当だってば」
「俺に隠れて他所の男と会ったりしてなかっただろうな」
「兄さん以外の男なんて興味ないんだから。可愛い妹がそんなに心配?」

大丈夫?バレてない……?

「……店に確認してくるか。もしお前が世話になった男がいるなら礼をしないといけないからな」

アタシに背を向けてツカツカとドアに向かう兄さん。仕事以外では基本緩慢な動きのはずなのに、その機敏さはアタシの冷静な思考を邪魔するのに十分だった。
そしてこの場合の礼は、絶対ただの「感謝の意」じゃない。

(おおおお礼参り~!?)

「だ、だめぇ!」

ハッとした。

「ほぉ~?」

ニヤリと、黒い黒い笑みでもってアタシの顔を覗いてくる兄さんに、冷や汗が背中を伝う。

(アタシの馬鹿……妖精のコーンが簡単に姿を見せるはずないし、大人の目には本当の姿は見えないのに……)

なんて言い訳しよう、なんて誤魔化そう。
それとも、妖精の王子と一緒にいたって言う?

……そうよ。
よく考えたら隠す必要はないのかも。
コーンのことで慰めてくれたこともあるんだし、あの子は元気に大人になってましたって報告しても良いんじゃない?
そうだ、そうしよう。
アタシはコーンと会ったことを正直に話そうと、意を決して大きく息を吸い込む。
でもその直後。

「……ん…ぅ…!?」

近すぎてボヤける兄さんの顔。
頭の後ろに回された手。
抱き寄せられた腰。
唇には濡れた感触。

キスをされたんだと気付いたのは数秒後だった。

繋がった唇が敦賀さんの舌先でチロリとなぞられ、全身に広がる痺れたような感覚。
崩れ落ちそうな体を支えようと、私は必死で敦賀さんの服にしがみつき、耐えるようにギュッと目を瞑った。
そうして僅かに離された口から、蠱惑的な声音で私の罪を裁く。

「嘘を吐く口にはお仕置きだ」

あぁもう。
言いたいことは山ほどあるのに、それ以上喋ることも、考えることも許されなかった。

ただ。

唇に感じる熱と優しさが、コーンと似てる気がした。





スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する