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南国の坩堝 (前編)

お久しぶりですこんにちは。
もう梅雨ですって!毎日ジメジメジメジメして、部屋の湿度が90%をさしてます。
ほぼ水!

さてさて。
本誌ゲットの呟きを拝見するに、やっぱりキョコは今回も可愛かったようです。
本誌積んだ船早く来て!!きゅ。さんと那覇港行っちゃおうかな!!

今日の更新はグアムの妄想話になります。
なんだか当初書きたかった事がうまい事まとまらず、横道にそれた結果ちょっと長くなったので分けました。
この後のお話もあるんですが、たぶん短くなりそうなんでちょっと加筆しときます。


では、続きよりどうぞ~><





舞台は南国、グアム。

トラジックマーカーの撮影先として選ばれたリゾート地は、日本とは違う色彩に溢れ、日常を忘れさせてくれる。
海の色、空の色、太陽の色、植物の色、そこに存在する空気さえ、ワントーン濃く彩られているようだった。
妖精が降り立ったとしてもおかしくないキラキラとした中に、ぽっかりと浮かぶ、闇のような……

「セツ」

兄さん。

「なぁに?」

名前だけ呼ばれて、振り向く。
言葉にされずとも分かる、眼が「こっちへ来い」と言っているのが。
アタシはなんの不思議もなく兄さんの側に行くと、長い前髪の隙間で一瞬だけ眩しそうに目を細められ、おもむろに手を差し出された。

「財布を出せ」
「え?」

カツアゲですか?

「いいから」
「え、ちょ、なんで?」

あまりに突然の指示、理由くらい聞いても良いでしょう。

「……ここにいる間、俺が預かる」

ここって、グアムに居る間って事?

「あのね……アタシだってもう子供じゃないんだから……」
「海外をなめるな。油断してたら身ぐるみ剥がされるぞ」
「そんな物騒な……」
「まぁ、俺が側にいてお前に手を出そうものなら生まれてきた事を後悔するくらいには痛めつけてやるが」

カワイイ兄さんは恐ろしいことをサラリと言ってのけた。
いつ出会うかも分からない強盗より、目の前の兄さんの方が怖いと思っちゃうんだけど。
大体、悲しい事に強盗されるようなお財布の厚みもないんだから心配しすぎなんじゃないかしら。
すると、アタシの心を読んだかのように兄さんの気配が鋭くなる。

「女のお前と俺ならどちらが狙われると思う」
「あ、アタシかな…?」
「容易く折れそうな華奢な体のお前と俺なら」
「アタシ…」
「誘拐されてもおかしくない程可愛いお前と」
「ごめんなさい兄さん許して」

結局、持ってもらうのも憚られるアタシのお財布は兄さんのお懐に納められた訳だけど、何のための行動だったのか、後で知ることになる。





「セツ」

珍しくアタシに何も言わず、いつの間にか姿を消していた兄さんが戻ってきたのは休憩時間も残り僅かの頃。

「兄さん、どこ行ってたの……」

こんな見ず知らずの地で迷子なんて勘弁してねと開口一番言ってやるつもりだったのに、その姿を認めてアタシは開いた口が塞がらなかった。

「なに……それ?」

兄さんの手にあるのは、日本人にはビッグサイズだろう大きな器にドッサリ盛られたアイスの山。
よく見るとアイスの下には見るからにキメの細かいかき氷が敷き詰められ、器を一周するように囲んでいるのは色とりどりのフルーツ。
熟したマンゴーやドラゴンフルーツやバナナが賑やかに盛られ、何種類もあるアイスの上にはフレークやラズベリーソースが絶妙な具合にキラメキを放っている。
プルメリアがちょこんと乗っているのも可愛らしく、まさに「女の子が一度は食べたい観光地スイーツ」に名を連ねそうなソレ。

が。

なぜ今ここに?

「買ってきた」
「そうでしょうね。……じゃ、なくて!もう休憩も終わるっていうのに食べきれるの?」
「お前に買ってきたんだ」
「あ、アタシに?」
「早く食べろ。溶ける」
「わわっ、ちょっと待って」

急に渡され慌てて受け取ると、器の大きさから案の定アタシの両手は塞がった。
すると、それを見越してのことなのかおもむろに兄さんがアタシの口に何かを突っ込む。

「んむっ!?」

途端に広がる冷たさと、直後に訪れる至福の甘み。まろやかなバニラビーンズの香りと、ほのかに感じるシャリシャリとした氷の食感が、目の前のスイーツと直結する。
あぁ、コレか~と一瞬納得しかけて、思考が固まった。

(今、「あーん」された!?)

恋人同士がやる「あ~ん」のような、いわゆる砂を吐くような甘い雰囲気ではなかったものの、明らかに兄さんの手ずから食べさせてもらったってことはそれも同義。

(いえ、待って?今のアタシ達は兄妹……年下の妹に何かを食べさせるなんて、兄妹間じゃ小さい頃からあって然るべきものなのかも)

そう思うと、血が昇りかけた顔にも少し落ち着きが出てきた気がする。
ところが、アタシの精神安定をことごとく破壊するのが得意な兄さんは、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ再び持っていたスプーンでアイスを掬った。
そしてアタシの口元へ。

「『ア~ン?』」

(~~~~~っ!?!?!?)

分かっててやってないこの人!?

今のアタシは瞬間湯沸かし器にも負けない程、恥かしさで心では火を噴いていた。
でも、それを表に出す訳にはいかない。
なんてったって、病的なまでのブラコンなんだから。
アタシはニッコリと笑って、パクリとアイスの乗ったスプーンを咥えた。

さっきよりも甘い気がするのは、きっと気のせい。

引き抜かれたスプーンを目で追うと、物言いたげな兄さんの視線とかち合った。

「美味いか?」
「……確かめる?」

まだ兄さんの手にあったスプーンをスルリと奪い取り、一掬いしてアタシにやってくれたのと同じように兄さんの口元へ持っていく。
一瞬だけ驚いた顔をしたけど、すぐにいつもの調子で、いえ、むしろ無表情にアイスを食べてくれた。

「……甘いな」
「アイスだもん、甘いわよ」

兄さんの当たり前の感想に思わずクスリと微笑むと、それまで遠巻きに見ていた撮影関係者の中から一人の影が近付く。

「おい」

アタシ達に遠慮なく近寄る数少ない共演者、村雨さん。

「撮影始まんだよ!いつまでイチャイチャしてやがる!!」
「なんだ、羨ましいのか?」
「ふざけんな!おら、仕方なく来てやったんだからさっさと来いや!」
「………………」
「てめぇ……今、『これだから働きアリの日本人は休むことを知らない可哀想な馬鹿だな』とか心で思ったろ!?」
「驚いた。よく分かったな」
「あぁ!?」
「セツ、これ以上お前に騒音を聞かせるのは心苦しいからな。行ってくる」

まだ村雨さんが後ろで何か言っていたけれど、兄さんはどこ吹く風でアタシの頭を優しく撫でてくれた。

少しひんやりした、兄さんの大きな手。

「いってらっしゃい。早く終わらせてね」

アタシは兄さんの後姿を見送りながら、心のプロテクターを少しだけ緩めた。

良かった……村雨さんが来てくれて。

お返しのつもりで兄さんに「あーん」しちゃったけど、身長差からアイスを食べるために少し屈む体勢になるのは当然予想出来たのに。
いつもより近付いた顔に、心臓が痛い程ドキリとはねて、一気に全身へ血が巡った。
少し開いた口が凄く色っぽくて、傷のメイクを施された唇からどうしてか目が離せなくて。
長い睫に翳った瞳が、アタシを見ていないのが悔しいなんて。

(アタシのバカバカバカバカーーー!!出ていけ不埒な煩悩!!)

自分の迂闊さに、嫌気がさす。
あのまま村雨さんが呼びに来てくれなかったら、どんなボロを出したか分からない。
滅・煩悩のため思いっきり壁に頭を打ち付けたい衝動に駆られたけれど、宛がわれたビッグサイズのアイスがそれを許さなかった。

(いやぁぁぁちょっと溶けてきてる!)

元々南国の気候で、冷たいものが原型でいられる時間なんて極僅かだった。
だんだん溶け始めたソレを、慌てて掬って食べ始める。
甘くて冷たくて優しい味。
火照った頭にもちょうど良かった。
……というか。
これを、あの格好で、わざわざアタシのために買ってきてくれたのよね。
観光地だもの、ある程度お客さんはいたはずなのに、こんなデコラティブなアイスを男の兄さんが……。
改めて事実を認識すると、もうダメだった。

「末期だわ……」

今、顔をセツカに保てている自信がない。

どうか。

貴方を想うことだけは許してくださいね、敦賀さん。




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