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落とし穴 5



敦賀さんに会わなくなって何日過ぎただろう。




今日の仕事はきまぐれロックの収録だけ。坊の着ぐるみでプチコーナーをこなし、今はゲストのトークコーナー中。最近売り出し中のモデルさんで、確かルイちゃんだったっけ。
CMでも何度か見たことがあるし、スタイルもバッチリ。ファッション雑誌にだって常連さんらしいし。世に言う「憧れ」が形になったような女の子。

「そういえば、ルイちゃん。最近熱愛報道されてたけど、彼氏はどんな人なの?」

光さんが進行のために質問する。

「えっと・・・実は同じ事務所の先輩で、ずっと仲良くしてもらってたんですよ。で、気付いたら好きになっちゃって」

えへへ、と話すルイちゃんは可愛らしく、こんな女の子から告白なんてされたら大概の男はOKするんじゃないかと思う。

・・・いけない。収録中なのに、なんだか私の頭は靄がかかってるみたいにぼんやりする。
坊の衣装、重いなぁ。

その後も和やかにトークは進み、デビュー時の話しに。

「デビューの時は本当に右も左も分からなくて、失敗ばっかりだったんです。でもそんな時、優しく教えてくれた人がいて・・・」
「へぇー、ちなみに誰?」
「俳優の敦賀蓮さん」

ビクリと、知らず心が跳ねた。

「おぉーーー芸能界一イイ男!」
「そうなんです!とにかく優しくて、緊張しないよう心構えを教えてもらったり・・・皆さんが好きになるのも分かりますよね」
「あれだけイイ男なのに性格も良いって、もう敵いようがないねぇ」

流石敦賀さん。どんな女性にも優しいのよね。

どんな女性にも・・・。
敬愛する先輩が誉められて嬉しいはずなのに、なんだろうこの引っかかり。

収録終わりにまた光さんがご飯に誘ってくださったけど、ご馳走するなんて恐れ多いお話丁重にお断りした。
光さんも私なんかじゃなく他の方をお誘いすれば良いのに。
後輩だからって気を遣ってくださってるのかしら。



「ただいま帰りました」

時刻は一般の就寝時間を過ぎたころ。だるまやの大将と女将さんは寝てるから、起こさないように静かに帰宅の挨拶をして階段を上がる。
シーンと音のない自分の部屋。電気をつけるのも億劫で、そのままへたり込む。
今日も、敦賀さんに会わなかった。

「避けられてる・・・?」

ううん、忙しいのよ。あの超過密スケジュールを知ってるでしょう、と、自分で理由を付けて否定する。

「でも・・・今までは・・・」

・・・今までは敦賀さんにバッタリ会うことも少なくなかった。現場や、事務所、ラブミー部の部室・・・。
部室?
忙しい敦賀さんがわざわざ・・・来てくれてた?

「やっぱり・・・後輩として、それなりに可愛がってくれてたのかな・・・」

そんな後輩にあんな態度取られたんですもの。
ろくに説明もせず、質問に対して答えもせず、さらに逃げ出すような。
嫌気がさして当然よね。

たくさん相談もして、いつも助けてもらってたのに。
おまけに敦賀セラピーで私の脳を破壊するくらい癒してくれたこともあって。
高校だって、敦賀さんの一言があったからテストが上手く出来て行けるようになったって、私、自信を持って言えるのに。
本気で演技したいと思ったのも・・・敦賀さんがきっかけなんですよ?
負けたくない、追い付きたい、追い越したい・・・一緒に演技したい・・・。
認められたい、信じて欲しい・・・。

なんて身勝手な思い。それを押し付けられる敦賀さんは迷惑よね。
きっとあの時も・・・もしかしたら私の奥底にある感情を見抜いていたのかもしれない。
必死で押し隠そうとしていた、馬鹿な私。

「そっか・・・気付いたから・・・拒絶されたんだ」

少し優しくしてもらったくらいで甘い想いを抱いてしまった浅はかな私に、呆れて。

もう、笑いかけてはもらえないかもしれない。

喉に熱く大きな塊がつっかえていた。

真っ暗で何も見えない。
私はこんな時、どうしてた?
そうだ。

「・・・コーンッ」

急いで大事な大事な石を探す。暗い中でも、どこにあるかハッキリ分かる。
現れる小さな容れ物。
触れたところが悪かったのか、そのままコロンとコーンが転がり出てきた。

「あ・・・」

手のひらにチョコンと在る、冷たい碧。

途端に、あの時の敦賀さんがフラッシュバックする。
私のナカに入ってくる、魔法。

吸い寄せられるように、ゆっくりと目を閉じて、唇で触れる。
ほんの一瞬だけ。

ごめんなさい。ごめんなさい・・・。

気付いたら、泣いていた。

「~~~ふぃっ・・・ぅ~~~~~・・・っ」

一生懸命積み上げた防壁は、僅かな亀裂で脆くも奔流に崩された。

魔法の石は、この気持ちまで吸い取ってくれるだろうか。
願うように、コーンを包み込んだまま蹲る。
でもきっと、大きすぎるこの想いは小さな碧じゃ足りない。

会いたい。

もう一度、敦賀さんに笑って欲しい。


次に、会えたら・・・


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