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逃亡中 【後編】

こんばんはー!

普段過疎ってる拙宅ですが、企画のおかげで初めてお越しくださる方、コメントをくださる方もいらっしゃって嬉しい限りです。

やっぱりお声を頂くとテンション上がりますね!
そんなわけで早々にですが後編アップとなります。

光の箱庭の惣也さん企画の「逃亡中」。
バナーはこちら。






続きよりどうぞー!














ピリリリリ――



振動と共に鳴り出す無機質な音は、何度聞いても心臓に悪い。

キョーコは素早く携帯電話の画面を確認し、その文面を口に出して読み上げる。


「ミッション。2つの関所にハンターを10体ずつ用意した。残り時間20分までに関所へ行き、2人同時に左右の門の手形を押せ……って、一気に20体増えるかもしれないの!?逃げられるわけないじゃない!と、とりあえず関所へ向かいます」

カメラに向かい行き先を告げると、エリアマップを広げ、一番近い関所を目指す。
ハンターがいないか警戒しながら歩を進め、ようやく辿り着いた時には既に人影が一つ。

「あれ、京子ちゃん?」
「ム……村雨さん!」

そこにいたのは、トラジックマーカーで共演した村雨だった。
正確には、共演したのは蓮が扮するカイン・ヒールなのだが、キョーコ自身も妹のセツカとして顔を合わせている。
兄妹の正体はまだ公表されていないため、素の状態で合うことは憚られたものの今となっては仕方ない。
とにかくミッションをこなさなければと、村雨とは反対の門の手形の前へ駆け寄ったキョーコは、「せーの」の掛け声で一気に手形である木版を押し込んだ。

ガコン。
木の重なる音とともに、ゆっくりと門が閉じられていく。よく見ると、向こう側には10体のハンターが整列して待機していたのだが、幸いにも出番はなさそうだ。
ほぅっと一息ついた所で、村雨がキョーコに笑いかける。

「助かったよ。もう一人いないと門閉じられなかったから」

「こちらこそ、村雨さんがいて下さって良かったです。誰を頼って良いのか分からなくて連絡も出来なかったので」
「なんだ。それなら俺に声かけてよ。こういうの、挑まないと気が済まない質なんだ。逃げてばっかなのは癪だろ?」

相変わらず、元族らしい真っ直ぐな性格は健在らしい。
「あはは、流石です」

ピリリリリ――

残り時間20分。ミッションがクリアされた旨が通知される。
違う関所でも無事にハンター流出は阻止出来たらしい。ひとまず二人は町中へ戻り、物陰に身を隠すことにした。
すると、思案顔だった村雨がキョーコに向き直り話を切り出す。

「京子ちゃんさ、どこかで会ったことある?」
「え?」
「いや、なーんか初めて会った気がしないっていうか……」
「こんな仕事ですから、気付かないうちにお会いしてるかもしれないですね。私、裏方や雑用もさせてもらってますから」

ギクリとした焦りは、笑顔と演技で全力で隠した。
あの兄妹を目の当たりにしているならば、今のキョーコと結びつくはずはないものの、これ以上一緒にいるのはマズイかもと別行動しようとしたその時。

「ヤッバ……!!」

ハンターが現れた。

「村雨さん、伏せて!!」
「!?」

キョーコは咄嗟に、先程女性から貰った銃をハンターに向け引き金を引く。
直後、パシュンと軽い発砲音とともに銃口から飛び出たのは、人一人が覆える程のネットだった。
放射状に広がったネットは見事ハンターに命中し、その動きを封じる。
助かった。
そう思ったのも束の間、数秒後に激しく後悔することになる。

(あ、あれ……?)

まさか、そんな。
キョーコは目の前の光景に、ただただ呆然とするしかなかった。
呼吸すら感じさせない完璧な静止をしたハンター。サングラスで人相は分からないし、真っ黒なスーツと少し長い髪は普段と雰囲気がまるで違っているものの、各所のパーツはキョーコの中のデータと完全に一致する。

(敦賀さんーーーー!!?)

ありとあらゆる疑問が頭に浮かんでは消えていった。
冷静に考えれば番宣であるのは明らかだが、今のキョーコに冷静になれというのは無理な話で。
蓮と同じく静止、というよりコチコチに凝固したまま思考も停止させていると、突然横から強い衝撃を受ける。

「ありがとう京子ちゃん!助かったよホント!」
「きゃっ……村雨さん!?」

衝撃の正体は村雨のタックルのような抱擁だった。
余程感極まったのか、まるで逆転サヨナラホームランを決めたかのようなはしゃぎっぷりでキョーコを翻弄する。
ところが次の瞬間、周囲の気温が5度は下がったかと思うような寒気を感じた。
同時に、キョーコの中の怨キョが一斉に反応する。
出所は絶賛停止中のハンター、蓮だった。
キュラキュラ似非紳士笑顔もない、無表情なのに感じる「怒」のオーラ。

(いやぁぁぁ!!敦賀さんが怒ってるーーー!!そうですよね、いきなり銃口向けて更に撃つなんて無礼の極み……!)

出来ることなら今すぐ地面がめり込むくらいの土下座を実行したいキョーコだったが、ふと隣の村雨の様子がおかしいことに気付く。

「村雨さん?」
「京子ちゃん……なんか俺……命の危険を感じた時に開く毛穴が全開なんだけど……」

顔は青ざめ体は震え、わっしわっしと両腕を擦り合わせる村雨は、何かを思い出すようにこう続けた。

「しかもすげー覚えのある圧迫感……」

キョーコの息がひゅっと止まる。

(きゃぁぁぁ!敦賀さんからダダ漏れる殺気が村雨さんにデジャヴを引き起こしてるー!)

もはや一刻の猶予もなかった。

「村雨さん、逃げましょう!ハンター10体に追われるより恐ろしい事に!」
「は、え?ちょ、京子ちゃ……!?」

言うが早いか、キョーコは村雨の腕を掴み猛ダッシュでその場から離れる。
あまりの勢いに、キョーコと村雨についていたカメラマンが遅れをとるほどだった。

喧騒が去って数秒後。
蓮のイヤホンに番組スタッフから無線が入る。

『敦賀くんお疲れ様。もう動いて大丈夫だよ』
「分かりました」

指示を受け、体に纏わりつくネットを取り払うと、蓮は大きく深呼吸をした。
こういったやりとりは勿論カメラに収めない。だからこそ、蓮の黒い笑みには誰も気付かなかった。

(さて……本気でいこうか)










「こ、ここまで、くれば、だいじょうぶ、かな」

蓮と遭遇した場所とは真逆のエリアの、通りからは見えない民家の裏手に辿り着いたキョーコと村雨。
ゼーハーと肩で息をするキョーコは、額に浮かんだ汗を拭って何とか呼吸を落ち着けると、クルリと後ろを振り返る。

「すみません村雨さん、強引に引っ張ってきてしまって。その、大丈夫ですか?」

腰を屈め荒い呼吸を整える村雨の顔色はやはり青白いままだった。

「ありがとう……まだ体温が上がらなくてさ……。こんな時はクーって5回書いて……」

通常、手のひらに「人」と書いて緊張を和らげるものだが、村雨は「クー」と書いて飲み込む仕草を見せる。
そしてその単語は、キョーコにとっても聞き逃せない人物のソレと重なった。

「クー?って先生……クー・ヒズリの事ですか?」
「~~そう!!俺、クーみたいな役者目指してるんだ」

吹けば飛んでいきそうな程ヨロヨロだった村雨が、クー効果かキョーコから反応があったからか、今までのグッタリが嘘のように生き生きと話しだす。
キョーコもキョーコで、かつてクーと過ごした貴重で眩しい数日を思い出していた。
厳しい言葉と裏にある優しさ、演技人としての心得に、別れが辛いと思える程。

(そういえば、最初の印象は最悪だったけど、段々悪い人じゃないんだって思ったのは敦賀さんと一緒かも……)

「……素敵な方ですもんね」

父のように慕うクーと、密やかな好意を持つ蓮を思い浮かべて、ふにゃりと緩んだ笑顔を誰が責められようか。
また、そんな笑顔を正面から直視した結果、ドキリと鼓動を早くした村雨にも非はないのだが、ただ一人、看過出来ない男がいた。

ズダンッ!!

「!!?」

黒い塊。もといハンターの蓮が、上から降ってきた。
どうやら屋根から飛び降りたらしい着地の衝撃もなんのそので、ゆらりと目標を見据える。

「ひゃあああああ!?」

魔王が降臨した瞬間だった。




「どこだろう……ここ」

キョーコの呟きが空に消える。
あれから。
脇目も振らず必死に逃げ回り、どこをどう走ったのか通ったのか登ったのか、何故か屋根の上にいた。

ピリリリリ――

予告なく鳴り出す携帯の着信音に、何度怯えただろう。
ポーチから取り出し、メールの文字を追う。

「村雨さん……捕まっちゃったんだ……」

もしかして自分の犠牲になったのではないかと、京子の肩に罪悪感がのしかかる。
だが、ここでクヨクヨしていても仕方がない。
途中から気にすることをすっかり忘れていたものの、時計を見ると残り時間は僅かになっていた。

「あと3分。流石に降りなきゃダメよね」

明確に禁止されている訳ではないものの、一般的には登れないだろう屋根の上は反則かもしれない。事実、キョーコについていたカメラマンは本日何度目かの行方不明になっていた。
何とか降りられそうな足場を探しながら、そういえば、と先程の恐怖体験を思う。

(敦賀さんはどうやって登ったのかしら)

ほんの少し、足元から意識が離れた。
その僅かな隙が、キョーコの絶対的なバランス感覚を狂わせる。
雨樋部分で思い切り体重をかけてしまったのだ。いくら細身のキョーコでも、樋で支えるのは無理があったらしい。
しまった、と思った時には遅かった。
案の定嫌な音を立てて折れ、原因であるキョーコも重力に従い落下する。

(わ……私の馬鹿ーーーー!!)

キョーコの頭には走馬灯のように明日の芸能ニュースの見出しが踊った。

『収録中に転落、全治○週間!番組存続の危機!』
『京子緊急入院!ドラマ降板か!』

(いやーーー!仕事に悪影響しかない!せめて打撲で済んでー!)

ぎゅっと目を瞑り、来るべき地面への衝撃に備える。

「…………っっっ」
ところが、覚悟していた痛みはいくら待っても訪れなかった。
それどころか、包み込まれるような温もりさえ感じる。

「…………?」

キョーコは恐る恐る目を開けると、視界に広がるのは黒いスーツ。
次に、聞き覚えのありすぎる声が耳元で響く。

「……全く。君って娘は……」
「つるがさ……?」

間一髪、地面へ激突する直前に蓮がキョーコを抱き留めていた。

ぎゅう。

「!??」

全身を預ける形で抱き締められているのでキョーコは身動きがとれない。それだけでなく、更に腕の力を強くしてキョーコを拘束する蓮。

「あ、あの、敦賀さん?」
「……ん、どこも痛めてはいないみたいだね」
「そ!そうでした!!危ない所を助けて頂いてありがとうございます!敦賀さんは大丈夫でしょうか……」
「俺は大丈夫だよ。それにしても最上さん、なんだってあんな所に登ったんだ」
「はぁ……私もどうしてだか……」

貴方が怖くて必死で逃げてたんです、とは口が裂けても言えなかった。

ピリリリリ――

「だいたい君はいつも迂闊すぎる。予期しないことが起こっても冷静に対処出来ないと」
「お、お言葉ですが、生身の人間が空から降ってくると思わないじゃないですか!」
「あれくらいの高さ、スタントマンなら飛び降りるのは日常茶飯事だろう」
「貴方はスタントマンじゃないでしょう!」

ピリリリリ――

「それにしても……あんなに絶叫しながら逃げることなかったんじゃないか?」
「だって敦賀さん……怒ってましたよね。今考えると、いくら無礼だったとは言えゲームの中で敦賀さんだと認識せずに銃を向けてしまったのは不可抗力だと思いますが」
「最上さん……」
「なんでしょう?」
「……好きな娘が他の男に抱き付かれるの目の前で見て面白い訳ないだろう」
「…………へ?」




ピリリリリ――



ピリリリリ――




『京子、確保』





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コメント

まさかここで終わりですか?

はじめまして。突然失礼いたします。
「光の箱庭」さまから、「逃走中」イベントのご案内でこちらのサイトを知りました。
お話、とても面白かったのですが、まさか、ここでおしまいとか、おっしゃらないですよね。敦賀氏の告白の結果はどうなるのでしょう?
ぜひ、続きをお願いします。

Re: まさかここで終わりですか?

はじめまして。
こんな辺境の地にようこそお越しくださいました!
さすが光の箱庭様効果……!

少しでもお楽しみ頂けたのであれば幸いです。
そして、このお話はここで終わりでございます!

この後どうなるかは、是非脳内補完して頂ければ~と思いますので、さほひめ様なりのキョコちゃんでハッピーエンドをご想像くださいませ^^
もちろん逃げ切って不憫な蓮でもOKですw

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