正しい召喚のススメ 10


ご無沙汰してます。
もうすぐ5月が終わろうとしてますね。そうこう言ってるうちに今年があっという間に終わりそうで怖いです。
気を抜くとすぐにスポンサー広告なんかが出ちゃいますよね(自業自得)

そんな中、過去作品へ拍手を頂いたり、はじめましてな方からコメント頂いたりと本当にありがとうございます。
嬉しいな嬉しいなー。
生きる活力ですよね!少しでもお楽しみ頂けてると目で見て分かるからこそ続けられてます。
もう少し筆が早くなればバシバシ更新したいんですが、いかんせんのんびり操業ですのでご容赦頂ければと思います(平謝下ー)
拍手コメへのお返事につきましては近日中にしますので!

で、前回も触れましたが、ちょっとだけご報告を。

この度、引っ越しが決まりました。
旦那の転職で。
東北地方へ。

来月には旅立つ予定でして、本当に急なことでしたので身の回りの整理やら新生活の準備やらでしばらくバタバタしそうです。
更新もサッパリになるかもしれませんが、とりあえず生きているはずなので落ち着きましたらまた出てきますね。


ではでは、前置きが長くなりましたが召喚の続きになります。
もう忘れちゃったよ!ってなるくらい間が空きましたよね、すみません!もう一回すみません!












「あーぁ、可哀想に」

社は、蓮の腕の中でグッタリと意識を手放したキョーコを見て、咎めるように蓮へ視線を移した。

「満足したか?」
「…………」
「いくらなんでも、許容量オーバーだ」
「……分かってます」
「分かってないだろ。こんな過剰摂取、キョーコちゃんの体がもつわけない。……とにかく、ちゃんと休ませよう」

夜露が纏わりつく夜半過ぎ、屋外では体が冷え回復もままならない。
キョーコを抱えたまま膝を付き、俯いて動こうとしない蓮へ溜め息を一つ零すと、社はキョーコへ手を伸ばす。

途端、ピリッと刺すような痛みが社を襲った。
空気が震え、元より冷えていた周囲の気温も一回り以上冷たくなったような、そんな感覚。
原因は言わずもがな。

「れぇーんーー?」

無意識だろうが、キョーコに『触るな』という蓮の意思が結界のように広がり、社の手を拒んでいた。

「まったく」

埒があかないと悟った社は、大きく溜め息を吐くと頭をかかえながら指をパチリと鳴らす。

ぐにゃり。
歪む視界と浮遊感とただひたすらの闇が辺りを包んだ。
一切の物質のない空間。
体が宙へ放り出されたかと思うと、一瞬の後に色に襲われ、気付けばキョーコの家の中へ転移していた。
家具の少ないリビングは薄暗く、月明かりが窓から差し込み、僅かな陰影を作る。
ぼんやりと頭を上げた蓮に向かって、社は感情を込めずに告げた。

「キョーコちゃんに相当の負荷をかけてしまったことへの自責の念か?それとも、自我を僅かにでも放棄した自分への嫌悪か?」

或いは、そのどちらも蓮の中で渦巻いている後悔の原因なのだろう。
弾かれたように社を見つめ、眉を悲痛に歪める。

「ただ落ち込んでヘコむだけなら子供でも出来る」

ツカツカと蓮に歩み寄った社は、無遠慮にグシャグシャと蓮の黒髪をかき回した。
抵抗も出来ず、艶やかな髪は乱れたままの蓮は呆然と社を見上げると、返ってきたのは憮然ながらも温かい言葉。

「本当にキョーコちゃんが大切なら、まずは温かくして寝かせてやれ」
「……すみません」
「謝る相手は俺じゃないだろ」

蓮は苦笑し、返答の代わりに社の言葉を素直に実行することにした。

腕に抱いているのに、羽根のように軽いキョーコ。
その存在の儚さに、一層力を込めて抱きしめ寝室へ移動する。
キョーコをゆっくりとベッドに横たえシーツに包み、幼さの残る顔を見つめた。
自然と伸びた手で、キョーコの柔らかい頬を撫でると、その冷たさに再びツキリと心が痛む。

「最上さん……」

返事はないと分かっていながら、それでも音になって空気を震わせるのは愛しい主の名。

『契約ですから』

先程のキョーコの言葉が、蓮のナカで鮮明に再生される。
蓮がキョーコに『友達』として接するのは契約で、その対価としてキョーコは自身の魂を差し出すのも契約上の義務だと。
間違いようがない、事実。
フッと知らず零れる自嘲の笑み。

「そうだね……君は正しいよ……でも」

それだけだと。

「 線引きを、された気がして……」

ダメだと思う隙も無かった。

「自分勝手だね……。それ以上の感情を心のどこかで望んで、叶わない現実を突き付けられて……気付けば君の、無防備な魂を本能のままに求めていた」

思い出されるのは、己を満たす甘い快感と、意識を手離したキョーコの躰。

「なんて……醜い存在なんだろうね。君が本気で拒むなら、俺は喜んで消滅しよう。君に必要とされない命なんて要らない。でも、もし、こんな俺でも嫌でなければ……君を守るため、側に居る事を許してくれる……?」

蓮の懺悔のような独白。
未だ重く瞼を閉ざしたキョーコに、応えを求めるつもりはなく、ただ静かに眠ってくれたらと髪を梳くように撫でる。

コンコンッ

その時、既に開け放たれているドアのノック音が響いた。

「蓮。……いいか?」

蓮の意識を引っ張り上げる、端的な呼び掛け。
社は少し目を伏せ、思案するように話し出す。

「お前がどうして自分からキョーコちゃんの元に現れたのか。ずっと疑問だったんだが……」

仮説を確信にするための、包み隠さない言葉。

「キョーコちゃんの魂の資質が原因じゃないのか?」









小麦粉、バター、砂糖、牛乳、卵。
鮮やかな手際で次々と混ぜられていく材料。
チョコレートも使いながら、マーブル模様を手元のタネへ描く。
機械的に、しかし正確に作られていくのは、簡単お菓子の代表、クッキーだ。
型を取り、予熱で温めていたオーブンへ生地を並べてスイッチオン。

「はぁ」

キョーコは自分の作業を終え、あとはいつも通り一人の時間をぼんやり過ごそうと椅子に腰を下ろす。

厚い雲に覆われ、ついには雨を零し始めたあいにくの空模様。
ジメジメとした湿気が陰鬱な空気を呼びこみがちだが、現在キョーコのいる教室では微塵も感じられなかった。
男女別れての授業で、調理実習の真っ最中。
女子特有のキャイキャイと華やかな賑わいが響き、室内に香る甘ったるい空気とあいまって、常とは違う浮き足立った雰囲気に包まれている。
こちらは勿論食べる楽しみもあるが、主に意中の相手にプレゼントする楽しみもあるらしい。

(今までは自分で食べるしかなかったけど……)

『嬉しいな』

昨夜の蓮との会話と、向けられた笑顔を思い出し、じんわりと心があたたかくなる。
与えられる好意に少しでも報いたいと思うのは……

(ギブアンドテイクよね。うん)

どこか無理矢理に納得させると、自然思い出すのは会話の続き。確か魂をどうぞという流れになったはずなのだが、キョーコはその辺りからの記憶がなかった。

(気付いたら朝だったのよね。ちゃんとベッドで寝てたし)

どうにか抜け落ちた記憶の欠片を拾えないかと集中しかけた所へ、恐る恐るながら同じクラスの女の子数人がキョーコへ話しかけてきた。

「あ、あの、最上さん」
「?」

面識はほとんどない。
クラスメイトであることしか分からない程の彼女らが、一体何の用かと身構えると、その控え目な口から耳を疑う言葉が出てくる。

「最上さんって、良家のお嬢様じゃなかったの?」
「…………はい?」

誰が何ですって?




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