相愛日和

大変、大変ご無沙汰しております!!
生きてます!!
ここまで潜ったのは久しぶりだったかもしれません。

年度末から新年度。
卒園やら入園やら、その他もろもろ。
慌ただしい日々で時間があっという間に過ぎていきました。
もうすぐ5月とか目を疑いますよね。

本誌の感想とかもちゃんと叫びたいけど時間がなく。。

そしてリアル生活がもしかしたら一変するかもしれなくてですね。
悩んだり悩まなかったりしてます。
生活基盤がもしかしたら崩れたりするかもなので、その時は簡単にですがご報告いたしますね。
まぁ、たいしたことはないんですがね。

頑張るぞー。

さて。
ちまちまと書き進めておりました短編の更新となります。
本誌が落ち込むに比例して、どうやら軽くてバカっぽいお話に筆が進む傾向にあるようです。←
召喚話は次には更新いたしますので、もしお待ちいただいている心優しい方がいましたらもうしばしお待ちください><


では続きよりどうぞ~。











「もうそろそろだな」

見上げると首が痛くなる高層マンションの前で、社はここに住む担当俳優を待っていた。
仕事柄癖になった何度目かの時間確認。腕時計から目を離すと、次に手帳を捲りながら今日の仕事のタイムスケジュールを組み立てる。
相変わらず分刻みの仕事量だが、最近ではなるべく早く帰宅したいという目的が出来たこともあり、蓮の仕事に対する集中力は目を見張るものがあった。
演技の撮影ではNG皆無、モデルや雑誌、その他諸々も言わずもがなである。
では、これまで以上に仕事をキッチリこなす、その理由とは。

「キョーコちゃんと上手くやってるかなー」

蓮の想い人であったキョーコと、念願叶って恋人同士になれたのは少し前の事。
あらゆる色恋沙汰を否定してきたキョーコへ、どんなアプローチをして想いを告げ、そして受け入れて貰えたのか。
それは当人たちのみぞ知る話であり、社には経緯を聞き出す野暮な真似も出来るはずもないので、ただ「付き合うことになりました」と、事後報告を受けた時には手放しで喜んだ。
忙しい二人が地道に、しかも外でデートなんて出来るはずもなく、時間が取れそうな時はキョーコが蓮のマンションに訪れご飯を作ったり、可能なら泊まるという通い妻状態らしい。
キョーコとの時間を少しでも多く取るため、もしくは早く会いたいがために、蓮は潜在能力をこれでもかと発揮している訳だ。
現在も、昨夜からキョーコが来てくれているはずなので、ギリギリまで一緒に過ごさせてやろうと社は待っているのだが。

「…………」

社の腕時計の針が約束の時間を過ぎた。

「流石に遅くないか?まさか何かあって……いや、キョーコちゃんと離れ難くて出られないとか。そもそもまだ寝てるとか……」

一人でいると妄想は加速するもの。

「……ダメだぞ蓮っ。いくら欲求不満だったからってキョーコちゃんに無理させちゃ!」

社の中では、何かが決まったらしい。








「じゃあ、いってくるよ」
「……いってらっしゃい」

社が蓮の部屋の前に到着したタイミングで、ドアがガチャリと開きこんな会話が聞こえてきた。
ワンフロアのマンションであるのだから、確認するまでもなく蓮とキョーコだ。
これから出る所だったのかと社がホッとしたのも束の間、ある違和感に気付く。

(あれ……?)

一流の役者ともなれば、台詞だけでなく視線で感情を表すこともあれば、纏う雰囲気で演技を進行させるという。
そして二人もまた、それだけの実力を備えた役者である。

「…………」
「…………」

無言で見つめ合う蓮とキョーコ。
二人の間にあるのは、付き合いたての甘い甘いモノではなかった。
むしろ抜き身の真剣同士の睨み合い。
一触即発。
ハブとマングース。
とにかく、迂闊に近寄れる空気ではなかった。

(これは……まさか……ケンカ?)

言葉はない。
だがしかし、見えない応酬が二人の間に繰り広げられているようで、社は完全に声をかけるタイミングを失っていた。
蓮とキョーコに限って、しかも付き合い出して間もないのに喧嘩が起ころうとは社も想像していなかったが、とにかくこれは緊急事態だ。
このままでは「敦賀蓮」の仕事に差し支える。
社は冷気舞う場へ、気持ちで負けないよう足を踏み入れた。

「蓮、キョーコちゃん。おはよう」
「社さん。おはようございます」
「おはようございます」

蓮は社の姿を見つけると、いつも通りの柔らかい笑顔を向ける。
キョーコもまた、いつも通り礼儀正しくペコリと頭を下げて挨拶をする。

不自然だ。

「すみません社さん。約束の時間を過ぎてしまって。急いで行きましょう」
「いや、元々余裕をもった時間だったからまだ大丈夫だ。それより……何かあったのか?」
「何かとは?」
「お前、よもや俺に隠し事が出来ると思ってないだろうな。ねぇキョーコちゃん?」
「えっ」

蓮とは違って、あからさまにギクリと反応したキョーコ。
社は「はぁ」と一つ溜め息をつくと、大仰に手を腰に当て、蓮を咎めるべく口を開く。

「蓮。こんなこと俺が口を挟むのは筋違いかもしれないけど、敢えて言わせて貰うぞ。喧嘩にも理由があるだろう。でもな、お前はキョーコちゃんよりも年上で、色んな経験だってしてきてる。全てを包む包容力で以てだな、男が受け止めてあげなきゃダメだろ」
「そう……ですね」
「キョーコちゃんも、こいつに遠慮することないからね。何かあれば俺に言ってくれても良いし。……それで、今回はそもそも何が原因だったのかな?」

蓮の、キョーコへ対しての過剰なまでの愛情表現。片想いの間、募り募った恋心がここへきて一心にキョーコへ向かっているのは側で見ていた社が一番良く分かっている。誰に対しても分け隔てなく、逆に言えば壁を作っていた蓮が、唯一心を傾けることが出来たのだから。
一方そのキョーコは、過去の痛々しい経験から恋愛は忌むべき対象になってしまった。必死に目を背け続けた感情から、ようやく逃げずに受け入れられるようになった。
そんな二人だからこそ、幸せになってもらいたい。
抱かれたい男NO.1の評価を貰う蓮は、それなりに色恋沙汰にも触れてきているはずだ。
しかし、純粋な「恋」という面、こと恋愛に関しては若葉マークがまだ取れないヒヨッコ同然。
社は、二人の関係を理解している年長者として、不器用な蓮とキョーコを見守る兄のような心持ちで助言したかった。
だからと言って、蓮が素直に事の経緯を話してくれるはずもない。そこで白羽の矢をキョーコに立てた。
あからさまに不審な反応をしたキョーコは「しまった」と顔に焦りを浮かべ、視線を蓮に投げかける。
蓮も蓮で、キョーコの無言の問いかけに答えるよう苦笑しながら頷く。

ここだけ見れば、アイコンタクトで思いを伝え合う、以心伝心の仲。
一体、そんな二人に何があったのか。
社としては、蓮が些細なことで嫉妬心を膨れ上がらせキョーコに対して大人気ない言動でもしたのではないかと予想を立てていたのだが。
おずおずとではあるが、キョーコは意を決したように口を開いた。

「……敦賀さんが、私に朝ごはんを作らせてくれなかったんです……」
「そうかそうか、それは辛かったね……って、えぇ!?」

思わず同意しかけたとして、誰が責められようか。

「今日は折角の一日オフだろう?だから、ゆっくり休んで貰おうと思って」
「敦賀さんは私と違って多忙極まりない身なんですから、食事のお世話くらいさせてください!」
「うん、ありがとう。最上さんにはいつも本当に感謝してるよ。だから、たまには朝ごはんくらい俺が作ってもいいだろう?」
「ダメです!先程も申し上げましたが……その……つ、敦賀さんは見ていて危なっかしいんですもん」
「失礼な」

(おーーーい……)

社は、二人の様子をただただ傍観するしかなかった。
なおも続く小競り合い、もとい痴話喧嘩。
要約すると、お互いがお互いのことを思い行動した結果、言い合いがエスカレートしていったらしい。

(微笑ましいと言えばそうかもしれないけど……)

社は激しい頭痛を感じながら、とにかくこの不毛なやりとりを中断させようと間に割って入る。

「キョーコちゃん、ごめんね。こいつ、なるべく早く返すから借りていくよ」
「あぁ!そうですよね!すみませんお時間取らせてしまって!」
「いいっていいって。キョーコちゃんはオフを満喫してて。本当なら蓮も一緒に休ませてあげられたら良いんだけど」
「そんな恐れ多いっ」
「あれ、最上さんは俺と休みは嫌?」
「そっっっ!!!……な、こと、ないです…………」
「ん?」
「…………一緒が良いに決まってるじゃないですか」

少し拗ねた口調は、意地悪な恋人への恨めしさと好きが綯い交ぜに。
紅潮した頬を隠すように俯き、フイッと顔を背けたキョーコは、どんなモデルも女優もアイドルも叶わない破壊力で以て目の前の男を撃破した。

「……今ここに、社さんがいなければ……」
「ナニをしようと言うのかね蓮くん」
「えっと、あの?お時間大丈夫ですか?」
「あっやば!さぁほら、蓮行くぞ!」

放っておいたらいつまでもキョーコの側を離れなさそうな担当俳優を、社は半ば引き摺るように連れていく。
蓮をエレベーターに押し込みながら、次の休みはいつ取れるだろうかと、数週間先の脳内カレンダーをめくった。

なんだかんだでこの二人に甘いのは自分だけじゃないのだから、何とかなるだろう。

(まったく、世話が焼けるなぁ)

そう思いながら、零れそうな笑顔を引き締めて、社も仕事のスイッチを入れた。




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