正しい召喚のススメ 7

お久しぶりでーす!

台風がまたしても来てまーす!
今年は酷い!更新の度に台風の話してる気がしますが、実際来てるのでつい話題にしちゃうんです。

もうすぐハロウィンなので、到る所で何かしら更新されそうな雰囲気でウキウキですね。
ネタとしては「お菓子くれなきゃイタズラするぞ☆」な訳ですから、妄想が膨らむわけです。
うちでは多分何もしないかなー? ← 

そんな中、悪魔話の更新になります。
今回どうにも進まなくて、大筋は出来てるのに肉付けが上手くいかずアップまで時間がかかりました。
なんでかなーと自分でも不思議でしたが、そういえば蓮キョ要素が少ない!ってことに今気付きました。
話の内容如何でスピードが違うようです。

では、少しでもお楽しみ頂けたら嬉しいです。
続きより~!










生徒達が退出し、人のいなくなった講堂内。
術後独特の、聖と魔が入り交じった空間に、僅かな光の残照が煌めく。
受け持ちの時間が終わり、授業の片付けをするべく残った黒崎だったが、面倒臭そうに頭をガシガシと掻きながら気配のした方へ振り返る。

「なんだ、不破?」

黒崎の視線の先、今にも暴れ出しそうな物騒な気配を纏った尚がいた。

「何か言いたげだな」
「……どういう事だ」
「あ?」
「あいつの……キョーコの喚んだあの野郎は何だってんだ!」

激昂し、吐き捨てた言葉は講堂内に反響して空気を震わせる。
黒崎は呆れたように溜め息を零し、怒りと戸惑いに揺れる尚の瞳を射抜いた。

「そんなの、お前が一番分かってんだろ」
「……っ!……だったら、あんな化け物、強制送還なり消滅なり出来るんじゃねえのかよこの大層な結界は!」

尚は大仰に手を広げ、床一面に描かれた不可思議な紋様の力の効果を問う。
それに対し、黒崎は飄々と言葉を返した。

「あのレベルの奴にゃ無理だ」
「ふざけんな!」
「おいおい、こりゃ大真面目な話だ。むしろ今、息が吸えてることに感謝しろよ」

ともすれば命は無かったのだと、暗に示す。

「はっ、随分弱腰だな」
「不破。お前もこの世界の人間なら相手の実力を見極めないと生き残れねぇぞ。あんな小さい妖精従えた所で、一瞬で灰にされるのが関の山だ」

教師らしからぬ乱暴な口調だが、その見解は確かなものだった。
冷静に、真実を告げられた尚はグッと唇を噛み締める。 誰に言われるまでもなく、自らも痛感していたことだ。

「……まぁ、今回はキョーコが上手く制御してんだ。お前は口を出さないこったな」

尚が口を噤んだのを見計らい、会話はこれで終わりとばかりに、黒崎は背を向け歩き出す。
「次の授業遅れんなよー」と、振り返ることなく手をヒラヒラさせて 、そのまま出口に消えていった。
残された尚は、黒崎の最後の言葉を反芻する。

「……制御、だと?」

ギリギリと痛い程拳を握りしめ、怨嗟の炎を宿らせて壇上を睨みつけた。
浮かんで来たのは、跪き、忠誠の証としてキョーコの左手の甲へキスを落としている悪魔の幻。
あの時、尚は確かに感じた。牽制と、愉悦すら含んだ侮蔑の瞳。

————ダレニモワタサナイ

従順なフリをした、醜いケダモノの本性を。
甘い言葉で近付いて、嬲るように獲物を死に追いやる。
自らの欲望の為だけに生き、贄の血の一滴すら己のモノだと奪い尽くす。
まんまと騙されている幼馴染みが、今やその対象であると。
どこまでも馬鹿でお人好しな、誰よりも近い場所にいたキョーコが、奪われる。

許せるはずもなかった。

「あれは……喰いものにされてるっていうんだろうがっ……」

吐き出された苛立ちは、誰に届くこともなく霧散した。







放課後。

(……結局、普通に終わっちゃった)

キョーコは自宅への道中、変な緊張を引きずったまま歩いていた。
実習授業後、蓮がいなくなった途端起こり出したざわめき。何かにつけて難癖をつけてくるクラスメイトへ、余計な材料を与えたかもしれないと身構えるも、それ以上騒ぎになることは無かった。

(先生から何も言われなかったし、大丈夫……よね?)

教師の黒崎からも、何の呼び出しやお咎めすら無かったことが逆に不安だが、とにかく今は何も考えずに早く家に帰り着こうと足を速める。
蓮が待ってくれているはずの、家に。
誰かがいてくれると思うだけで心が弾み、不思議といつもの帰路もキョーコを温かく迎えてくれているようだった。

だが、人生そう上手くはいかないらしい。

「おい。そこのダミーホ女」

酷く聞き覚えのある、憎たらしい声が響いた。
キョーコはピタリと足を止め、ゆっくりと声の主の姿を確認する。

「何か用?」

ずっと突き刺さるような視線は感じていたが、とうとう学校にいる間何の文句も言ってこなかった尚。
その尚が、胡乱げな瞳でキョーコを捕え呼び止めていた。

「お前……自分のしたこと分かってんのか?」

いつも馬鹿にするか、からかう事しかしない尚の怒気を孕んだ声に、不覚にもキョーコは一瞬たじろぐ。それを追随するように、尚は感情のままに捲くし立てた。

「馬鹿だ馬鹿だと思ってたが、ここまでアホだとは……よりにもよって悪魔なんかと契約しやがって!」
「……!?き、気付いてたの!?」
「気付かないわけねーだろ!しかもあんな……アホ面でイチャコラしやがって」
「はぁ!?誰がいつイチャコラしたってのよ!?」
「してただろーが!良いように騙されやがって。お前なんかな、あのヤローに弄ばれてペロリと喰われるのがオチだ」
「敦賀さんはそんな事しないもん!」
「それが騙されてるっつってんだよ!優しい顔してんのだってな、餌のお前を油断させてるだけなんだよっ」
「そんな、こと……」
「ないって言い切れんのか?アイツはなんの見返りも求めて来なかったってのか?」

――――最上さんの魂を少しだけ……

尚の言葉に、思いがけず蓮の言葉が再生される。確かに、魂の欠片を要求された。ただ命にかかわる程ではないと、そう言ってくれたけど、どこにそんな保障があるのだろう。
ぐっと言葉に詰まったキョーコを見て、「ほらみろ」と尚は勝ち誇ったように鼻で笑う。

「そうまでして何がしたかった?誰か殺したい奴でもいたのかよ!?」
「ちがっ、そんな事……!」
「それとも。親を見返したかったか?」
「…………っ」

ヒュゥッと息が詰まった。
キョーコが自分自身でも忘れていた傷を、足で踏みつけられたような、えぐられたような痛みと嗚咽感が込み上げる。

「何かを犠牲に悪魔を喚び出す禁忌を犯した奴が何言ってやがる。そんなんで認められようなんざ、どこまで能天気な頭してんだ」
「わ、わたし……は、ようせいさんを……」
「お前みたいに歪んだ性根じゃ妖精なんて無理に決まってんだろ」

尚としても躊躇いが無かった訳ではない。だが、様々な苛立ちや葛藤に加え、キョーコの無防備すぎる純粋さと、蓮への信頼ともとれる発言に、言うつもりは無かった一言が滑り出た。

「そんなんだから捨てられるんだっ」

妙に響いた声。
しまったと、思った時には遅かった。
尚は反射的に握り締めた拳を口元に当て、気まずそうに顔を背ける。
傷つけた相手を直視出来ずに、それでも何か言わねばと尚が口を開きかけると、俯いていたキョーコから消え入りそうな声がかろうじて届いた。

「………………ゎょ」
「あ?」

何を言ったか聞き返すべくキョーコを見ると、そこには般若が憑依したかのようなキョーコが、真っ黒い負のオーラを纏い立っていた。

「そんな事、分かってるわよ!!」

ドガっっっ!!!

「いってぇ!!」

キョーコは持て得る全ての怨念を鞄に詰め、渾身の一撃を尚に振るう。
鈍い音をさせ、見事尚の横顔にヒットした鞄を抱え直し、キョーコは脇目も振らずに走り出した。

「待てっ……」

尚が何か言いかけたのも聞こえず、ただただ森の中を駆け抜けた。






日が傾く刻限。
薄暗くなった空を見上げれば、小さな輝きが陽の名残に負けじと光を放っていた。
キョーコはぼんやりと公園のベンチに座り、何も考えず空の色を眺める。
どれくらいそうしていたのか。吸い込む空気が随分冷たくなっていた。

「帰らなきゃ……」

ポツリと呟いた言葉は、酷く空しく消え、キョーコの体から動く力を奪う。
ひんやりと固いベンチに背を預け、目を閉じ上空を仰いだ。

(コーン……)

記憶の中の笑顔を追いかけ、その度に元気付けてくれた彼を瞼の裏へ移し、夢を掴むように両手を伸ばす。
そのまま、いつもなら虚空を切るはずのキョーコの手は、ふいに訪れた感触に優しく捕えられた。
同時に降ってくる声。

「イケナイご主人様だね」
「……敦賀さん」

キョーコが驚いて目を開けると、蓮が真後ろから覗き込むようにキョーコを見下ろしていた。
夜空をバックに、サラリと流れる黒髪、蠱惑的な虹彩を湛え、恐ろしく整った美麗な悪魔は、本当にどこかの王子様のようだと、キョーコは思わず見惚れる。
だがそれも一瞬の事で、我に返ると慌てて握られていた手を振りほどいた。

「ど、どうしてここに?」
「今日二度目だね、その台詞」

それはそうだろう。いるはずのない蓮が急に目の前に現れるのだから。神出鬼没な行動は正に悪魔らしいといえばらしいし、いちいち気にすることはないのかもしれない。

「寄り道しないで帰っておいでって、約束しただろう?」
「あ……」

なのに遅いから迎えに来たんだと。
咎めもせず微笑まれたら、キョーコには謝る事しか出来なかった。

「すみません!お手間を取らせてしまって。か、帰りましょうか!お詫びに夕飯、敦賀さんの食べたい物を……」
「最上さん」
「え?」

いつの間にかキョーコの隣に座っていた蓮は、真剣な眼差しでキョーコを射抜き、漆黒の瞳がすべてを見透かすように煌く。
穴が開くんじゃないかと思えるくらい見詰められた後、蓮は緊張を解くように首を傾げて優しく目を細めた。

「悩みは『友達』に話すものだろう?」
「と、もだち……」
「それとも、俺じゃ力不足?」

切なげに陰った蓮の表情は、まるで捨てられた子犬のように写り、「クゥーン」と耳も尻尾も垂れ下げて哀願する幻が見えるようで。
誰が無碍に出来ようかと。
いや、出来るはずもない。

「そんな事ありませんから!」

心を鷲掴みにされたキョーコが取れる選択肢は一つだけだった。




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