正しい召喚のススメ 5

本誌読みましたーーー!
いや、もうこちらは遅配地域なのですが、頑張ってくれました運送業界(知らないけど!)

各地での本誌ゲッターさんの叫びを聞いてはいましたが、実際に読むと違いますね。
なんか……物語が進んでるのは嬉しいけど、終わりに近付いてるのかなとか思っちゃう
ワードが出てくると寂しくなります。

読者心としては複雑だなー。
でも、もう10年も楽しませてもらってるんだから、そろそろ二人をくっつけても良いかもしれないとか。
思ったり思わなかったり。

そうして本誌にはまったく関係のないパラレル話の更新になります。
多分、ご覧頂く方は少ないと思うのですが
「続きを」なんてコメント頂くと(滅多にないですが)
やっぱり頑張れます。
あ、拍手のお返事は近日中にしますので!

ではマイペースにやっていきたいと思いますので、もしよろしければおつきあいくださいませ。








その魂に触れた時。

ほんの僅かに滲み出る、無垢な、飴細工のような輝きに。

快楽とも悦楽とも言える甘美な衝動が、躯を満たす。

欲しい。

全部。

ぜんぶ。

ホシイ。













バタンと玄関のドアが閉まる。この家の主は、幸せそうな笑顔を浮かべ、慌ただしく駆け出していった。
残されたのは悪魔二人。

「……良い子だな」
「そうですね」
「お前、自分から望んで召喚されただろ」
「…………」
「……まぁ、どうしてかは聞かないでおいてやるよ。その代わり、キョーコちゃんも今後狙われるってことは覚えておけ」
「言われなくても」
「じゃあ、その危険性について何で教えてやらない」
「あの娘には……そんな心配を少しでも考えさせたくないんです。俺が、何を犠牲にしても守りたい」
「お前が側にいることで狙われるのに?矛盾だな」
「……………」

社の鋭い指摘に、蓮は何を答えることもしない。
やれやれと社は肩を竦め、これ以上の会話は不毛と思ったのか、そのまま影に消えていった。

「……いずれ、俺でなくても彼女に近付く連中は現れますよ」

蓮は、社の消えた虚空を見つめながら、誰にでもなく呟く。

「誰にも……渡さない……」


−−−−−昏い昏い、秘め事。












「よう、バカキョーコ」
「朝から頭悪そうな挨拶やめてくれる?」

普段より時間ギリギリに登校したキョーコを出迎えたのは、何かと意地悪く絡んでくる不破尚だった。

「妖精喚ぶって息巻いてたのは上手くいったのかよ?」
「そ、それは……」

実際には、妖精どころか魔王候補の悪魔を喚んでしまったわけで。
どうやら凄いことらしいのだが、それはキョーコの意思とは大きくかけ離れたもので、完全に成功とも言い難い。
目の前の、人を小馬鹿にした態度の尚に正直に話そうものなら、更に大馬鹿呼ばわりされるのは火を見るより明らかだった。
結局、何かを言うより先に担任教師の入室で話は打ち切られ、そのままHRの開始となる。
通常、HRなり授業が始まってしまえば全員前を向いて話を聞くものだ。だが現在、クラス中から悪意とも好奇とも言える視線がキョーコに容赦なく注がれていた。
チラチラと伺うような気配がまとわりつく。
バレていないと思っているのか、隠そうともしない無遠慮な視線。居心地の悪さには慣れてしまった。
キョーコは心でだけ嘆息し、なんの感情も表に出さない。

(言いたいことがあれば言えば良いのに)

物言わぬ視線へ、叶いもしない呟きを噛み締めて真っ直ぐ前を向いた。






1時間目の始まり。
だが、今日の時間割は特別だった。

「よおーし、お前ら準備は良いかー」

担当教師の黒崎が、ニヤリと教職者には似つかわしくない笑みを浮かべ授業の始まりを告げる。
集められたのは大講堂。
一般の授業を受ける教室とはどこか異質の、張りつめた空気や匂いがあるそこは、窓のない閉塞的な空間だった。
部屋の中央には石で造られた祭壇が設えられ、その四隅には燭台が立ち、更にその祭壇を囲むようにして何かの陣形が床に組み込まれている。
ロウソクの炎という僅かな光源しかない薄暗い室内だったが、黒崎が手を振り上げると、床の陣形にぼんやりと青白い光が這うように広がり、やがて部屋全体を明るく照らすまでになった。

「そんじゃあ、『召還実技試験』の開始な」

ニッと口角を上げ、黒崎は簡単な説明を始める。
ようするに、自分の力に見合った召喚を行い、その術式過程から、実際喚び出したモノがどの程度のどんな種類なのか、総合的に判断して評価されるのだという。
勿論、学校の実習なので安全管理はシッカリしており、この講堂事態がある種の結界の役割を担っているので、間違って手に負えない化け物が現れた場合には強制送還されるシステムが組まれている。
早速、指示に従い一人ずつ実習が始まった。
まだまだ未熟な生徒たちは、何とか型通りに事を進めるも、力不足から成功とは言い難いものばかり。
すると。

ボフン!

「あぁーん!ショーちゃぁん!こんなの出ちゃったぁ!」

音と煙の方へ目を向けると、キョーコと同じクラスの七倉美森が実習を挑戦し終えた所だった。やたら猫撫で声で、尚に駆け寄っていく。「こんなの」と言いながら手に抱えているのは真っ赤な鬣の小さな小さな仔犬。キャンキャン吠えつつ、口から微弱な炎が出たり消えたりしている所を見ると、火属性の獣らしい。
見た目の可愛らしさが目立ち、力自体は小さいだろうその姿は、召喚主である美森によく似ていた。

「お前そっくりじゃねーか」

尚も同じことを思ったようだ。

「でも、本当はこの子より大きな火獣を喚んだつもりだったから……」
「それが今のお前の実力ってことだろ」

突き放したように聞こえる尚の言葉は、そのままキョーコにも突き刺さった。自分の魔力や、制御次第で如何様にもなるこの召還。小さなモノよりも大きなモノを喚ぶ方が難易度は高い。更に言うなら、不成形型、獣型、人型の順番で難易度は上がっていく。
キョーコが普段から挑戦している妖精召還は、レベルでいうと最難関ということになる。ならば今回の実習において、まずは簡単なもので妥協しても良いのかと言われればそうではない。
なぜなら、これまで一度として、キョーコは何かを召還出来た試しがなかったからだ。

ぎゅっと。知らずに握りしめていた掌は、気付けば血の気が引いた真っ白な色をしていた。

これでは、欲しいものが手に入るはずもない。

キョーコが人事のように、自分の手を見つめていたその時、ザワリと生徒中にどよめきが起こった。
凛とした魔力が空気を震わせ、眩しくも暖かい光が生み出される。
その中心に、尚がいた。
キョーコとしては不思議で仕方なかったが、どうやら尚はそこそこ万人受けする顔らしく、どこからかウットリとした溜め息が聞こえてくる。

リィン……

直前の七倉の時とは明らかに質の違う、澄んだ鈴の音が講堂に響いた。
ふわりと、光が降り立ち、声を発する。

「尚。喚んだ?」
「あぁ、悪ぃな祥子さん。こんなところで」

尚が召喚したのは、誰が見ても分かる「妖精」だった。
小さな体に薄く輝く羽は、彼女が動く度に軌跡を描き、緩やかにウエーブがかった髪までフワフワと揺らめく。

キョーコがずっと望んでやまなかった事を、尚は何でもないようにやってのけた。
息を飲み、何も言えないでいると 、尚はニタァ~勝ち誇った笑顔を向けてきた。
それが当て付けなのは考えなくても分かる。
キョーコは心の底から怨念を発しつつ一言も言葉にすることはなかった。
今ここで喧嘩をしても、自分が成功して力を示さないことには対等にはならない。

次は自分の番だった。
ただ、強い思いだけを抱えて壇上に上がる。

(私が会いたいのは……妖精の王子様なんだから!)

キッと魔方陣を睨み、詠唱しながら在りし日の姿を思い描く。

(あの時の……妖精さん……)

森の中、泣いていた幼いキョーコを励ましてくれた、優しい妖精の王子。
目を臥せ、輝く記憶を瞼の後ろに映し出す。

包み込むような掌。
重ねられる温もりに、涙は止まっていた。

カチャリと、キョーコの中の扉が開く。

「……っ!?」

途端、魔方陣の中心から放たれるのは、黒い気配で。 ドクリと鳴動するように明滅を繰り返す暗闇色の陣。
講堂内が立っていられない程の圧迫感に支配され、誰一人動くことも赦されず、固唾を飲んで壇上を仰いだ。
刹那。
目が眩む程の黄昏色に視界を奪われる。
キョーコには確信めいた予感があった。

「お呼びでしょうか、ご主人様?」

寸分違わない台詞で
ただ、森の中か講堂の祭壇かの些末な差だけで。


蓮が、そこに居た。





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