正しい召喚のススメ 4

こんにちは!毎日暑いですね!
でも朝晩はだいぶ涼しくなりました。

旧盆ということで、明日病院行きたかったの休みだそうです。
そ ろ そ ろ 目 が 限 界 な ん で す 。

それはさておき。
今回も、召還話の更新になります。
需要がないのは分かってるんですが……気が向いたら覗いてやってください……!

最初の方だから説明多いのが反省点とか。










木の温もり溢れるテーブルは、そこまで大きくないものの、三人が寛ぐには丁度よいサイズで、キョーコが用意した朝食が彩り豊かに並んでいる。
カリッと焼かれたトーストに、バター、数種類の手作りジャムが控え、目玉焼きにハム、オニオンスープに新鮮なサラダ、そしてコーヒー。一般的なメニューではあるはずだが、その味たるや並のホテルでは敵わない素晴らしさだった。
「美味しい」「ありがとうございます」を数度繰り返し、各々満足した所でやはり立会人である社が話を切り出す。

「さて、話の続きといこうか。蓮の命が狙われてるって所なんだけど」
「は、はい」

キョーコは無意識の内に背筋を伸ばし、なるべくなら一言一句逃さないようにと神経を集中させた。
蓮はと言えば、あまりこの話自体をよく思っていないのか、ほんの僅かに社に非難の目を向ける。社はそれを受け止めながらも、気にせず口を開いた。

「さっき、ランキングの話したよね?」
「あぁ、抱かれたい男性ランキングとかなんとか」
「なっ……!社さん、なんて説明してるんですか!」
「まぁまぁ落ち着け蓮。キョーコちゃん、つまりはあれが原因なんだ」

「えぇ?」

原因だと。答えだと、そう言われても、正直キョーコにはピンと来なかった。

「うちは実力社会だって言っただろう?つまり、ランキング上位者を亡き者に出来れば、その分自分が魔王候補にのし上がれるってわけだよ」
「そんな……」
「しかも、名前が売れてる奴を倒した暁には、自分の名まで自然と広まる。それだけの実力を備えてるってアピールにもなる。とどのつまり、あのランキングに連なるってのは、『いつでもかかってこい』って挑戦状しょってるようなもんなんだ」
「それもこれも、アノ人の所為ですけどね……」

蓮は片手で肘をついたまま額を抑え、目を瞑り「アノ人」とやらへ恨み言を述べる。その姿は相変わらずカッコいいのだけど、明らかにその制度の犠牲者たる気苦労が見て取れて、キョーコは何と声をかけていいのか躊躇ってしまう。
実際に会ったこともなければ、話を聞いたのもつい先程で、それこそ自分がお目にかかるなんて生きている間には絶対無理なんじゃないかと思うけど、現魔王様とやらにはなるべくお近づきにはなりたくないなとキョーコは心底思った。

「こんな所まで追いかけてくるなんて迷惑にも程がありますね」
「まぁ、『こんな所』だからイケると思われたのかもしれないけどな」
「?」

蓮と社のやりとりで、まだ話の端々で含まれた何かが飛び交っているような引っかかりを覚える。昨日突然強制的に知り合いになった自分なんかが話についていける訳はないと分かってはいるものの、それでも仲間外れにされたようで少し、ほんの少しだけ胸が痛むキョーコ。

「こんな所ってどういう意味ですか?」「敦賀さんを狙った悪い人はどうなったんですか?」なんて、軽く口を挟めない自分のコミュニケーションスキルの低さが情けない。

まるで子供みたいだと、自分自身で苦笑すると、そんな様子に気付いたのか、社がキョーコの気になっていた事を代弁してくれた。

「それで?さっき来た奴等はどうしたんだ?」

その社の言葉に、蓮はピクリと反応して瞳に昏い激情を浮かべる。
優しい顔しか見たことが無かったキョーコは、蓮の冷酷なまでに光る瞳に、ゾクリと背筋が凍った気がした。

「こ、殺しちゃったんですか……?」

思わず聞いていた。

「……いいや、強制的にあちらへ帰ってもらっただけだよ」
「うわぁ……えげつな……」

蓮から否定の言葉が聞けて、ホッとしたのも束の間、社の反応からどうにも平和的に解決したのではなさそうだ。

「あのね、自分の意志に反して界の境を超えるには相当の苦痛が伴うんだよ。肉体的にも、精神的にもね。弱い悪魔なんかはそれだけで消滅することも珍しくないんだ」
「消滅……」
「ただ、そんなむちゃくちゃな芸当を行うにも、莫大な力が必要なわけで、こいつが無尽蔵の魔力を持ってるって証にもなるんだよ」
「そう……なんですか……」
「うん。そんな蓮にして欲しいことって何かないのキョーコちゃん?」
「え!?」

随分と唐突に湧いて出た質問に、キョーコは数度瞬いて困った顔を蓮へ向ける。すると、当の蓮は「何でも言ってごらん?」と、まるで甘い恋人へ紡ぐ台詞を事も無げに言い放ってくれた。
うーーーーんと唸ること数十秒。
キョーコはとうとう観念したように小さく口を開く。

「特にないです……」
「「え」」
「スミマセン……。こういう時は空気を読んで何か言うべきなんでしょうけど、本当に今の所ないんです」

申し訳無さから体を小さくさせ、更に語尾に向かってどんどん声量も小さくなってしまったキョーコ。その姿は、傲慢で自分勝手な事しか言わない人間と比べて、余程「何かしてやりたい」と思わせる庇護欲をかき立てられる物だった。

「いやいや、良いんだよ。突然こんなこと言われてもって感じだしね。でも、そうだな。蓮なら例えば、手を振るだけで、町の一つや二つ簡単に焼け野原にするくらい何て事ないはずなんだけど、どう?」
「……遠慮しときます」
「社さん。最上さんを怖がらせるようなこと言わないでください」

蓮は否定しないということは、実際にそれくらい出来てしまうということだろう。
キョーコは軽く目眩を覚えて、乾いた笑いを僅かに零す。

「じゃあ、好きな男を自分に振り向かせたいと思ったりしない?」
「……それを俺にさせるつもりですか?」
「蓮。目が怖い」
「そ、そもそも好きな男性なんていませんから!」

何やら不穏な空気になってきたため、キョーコは慌ててそんな必要はないと訴えた。
そしてそれよりも、チラリと確認した時計の針の配置に、一気に日常のレールへと戻らざるを得なくなる。
思ったより話し込んでしまった為に、すっかり失念していたこの後の自分の一日。

「じゃあ、私はそろそろ出ますので、もう少しごゆっくりするのでしたら鍵をお願いします」
「最上さん、出るってどこへ?」
「え?学校ですよ?」

キョーコはさも当然とばかりに、自分の制服を摘んでみせた。
学生の本分は勉強ですからね、とニッコリ告げ、慌ただしく朝食の後片付けを終えたキョーコは家の鍵を蓮に託す。

「それでは、いってきますね」
「あ、あぁ……いってらっしゃい」

その言葉を聞いたキョーコは、正に喜色満面な面持ちで顔をフニャリと崩しながら「はい、いってきます!」と元気に出て行った。







普段より遅い登校時間、通学路になっている森の小道を跳ねるように進むキョーコ。

「えへへ……いってらっしゃいって言われちゃった……」

普通の会話。しかし、キョーコにとっては普通ではなかった会話。
誰かに送り出して貰える、見送って貰える、そんな嬉しさに心がジワリと暖かくなる。

「よーし、今日も頑張るぞー!」

キョーコは晴れ渡る空に拳を突き上げ、面映い気持ちを燃料に、学校までの道を駆け出した。





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