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熱孕み夢現 (前編)

久しぶりに短編UPです。

相変わらず亀ですみません。
しかも続くというまさかの前後編になってしまいました。

後編もちまちま進め中ですので、お気を長くしてお待ちいただけたら幸いです。
まだ途中の連載も忘れてません。
方々に手を伸ばし過ぎだと自己分析は出来てますが、なにせ筆の進みが……。。。

では、続きよりどうぞ。













「敦賀さん……やめてくださいっ……!」

何を?

「これ以上動いたら……体、壊れちゃいます……」

その方が良いんだろう?

「でも……」

大丈夫だよ。







ゆっくりと意識が浮上し、瞼ごしに朝の気配が感じられて、ようやく体が覚醒の準備を始める。
とはいえ外はまだ薄暗く、もう少しだけ眠気に身を委ねたいと珍しく思った。
目元を覆うように腕を重ね合わせ、白み始めた空と時間に、僅かな抵抗。
いつもより体がダルく感じるのは気のせいだろうか。

敦賀さん……

夢の中で何度も呼ばれた。
朧気ながら覚えているのは、断片的な最上さんとのやりとり。具体的には何一つ分からない曖昧さの中、まだ続いて欲しいと願ってしまう虚空の邂逅。
重症だなと自覚したのはいつの頃か。すっかり毒された感情に最早抗う術はなく、制御出来ない想いを押し込める度に自分の限界を感じていた。
溢れて止まらなくなった欲望は、果たしてどこに行くのだろう。
いっそ、感情のまま彼女に触れて壊せたら……。

「はぁ……」

時々陥る物騒な考えを霧散させ、仕事の準備に取りかかろうとしたその時。

「ん……」
「?」

俺のすぐ横で、微かな声を聞いた。
続いてモゾリと動くシーツの塊。
その拍子に、捲れた布から隠れていた中が覗く。

「んー……」
「も……!?」

どうして、最上さんがここにいるんだろう。
安らかに眠っている目の前の娘は紛れもなく最上さんだ。フワフワとした栗色の髪も、滑らかな肌も、柔らかそうな唇も……。

「……っ」

思わず吸い寄せられるように出しかけた手を慌てて止める。

落ち着け、俺。

とりあえず現状を確認しようと柄にもなく深呼吸してみる。
一人で寝るのには大きすぎると言われたベッドを見回すが、特にオカシイ所はない。
服も、着てる。
……大丈夫。

いや、大丈夫じゃないだろう。
そもそも何故この状況に到ったのか、思い出そうとしても全く記憶がない。
最後に最上さんの姿を見たのは、さっきまでの夢の中のはず。

……夢?
本当に夢だっただろうか?

思い出せ。
あれは確か……



*******



最上さんに会いたい。



ただ漠然とそう思った。
しばらく会っていないからというのもあったが、どうしてか無性に彼女の声が聞きたくて。
彼女に触れたくて、抱きしめたくて。
喉の渇きにも似た焦燥感が俺を包んでいた。
最上さんは今どこにいて、何をしているだろう。

浮遊するような足元の覚束無さとぼやけた視界、そして目を閉じる度に変わる景色で、あぁこれは夢なんだと直感的に悟る。
そう認識してからも一向に現実に戻る気配はなく、俺はどうやら仕事をしているようだった。
俯瞰でものを見るような妙な感覚のまま、無意識に体を動かす。雑誌の撮影らしく、ストロボが目の奥に残像を生み、
視界が真っ白になったかと思うと、今度は事務所にいた。
社さんが手帳を見ながら俺に何か話しているが、全く頭に入ってこない。

「悪いな付き合わせて。打ち合わせは終わったから、今日の仕事は終わりだ。今ならまだキョーコちゃんいるんじゃないか?」
「え?」

今までノイズがかった音が、社さんの発する「キョーコちゃん」という言葉でクリアになる。

「確か今日は事務所の雑用だったはず……おい、蓮?」

「探して……みます」

社さんが怪訝な顔でこっちを見ていたのは気になったが、最上さんが近くにいるという情報だけが俺の体を動かした。
まだ何か後ろで社さんが言っていた気がするが、もう聞こえない。

意識と肉体の感覚がズレ、激しくなる動悸。
可笑しな程に求めるのは、いつも俺を明るい場所へ導く彼女だけ。

早く会いたい。

いくつ目かの角を曲がった所で、鈴がなるような最上さんの笑い声と、鮮やかなラブミーつなぎが目に飛び込んできた。

「最上さ……」

声をかけようとしたが、どうやら最上さん一人ではないようで、数人の男と一緒に手分けして荷物を運んでいる所だった。
楽しそうに笑う最上さんと、その笑顔を見て妙に俯く男もいる。
明らかに、彼女を意識している証拠だ。
誰に対しても一生懸命で、屈託なく接する最上さん。周囲を巻き込むその輝きに、知らず惹かれる者も多いだろう。

俺だけが、知っていれば良いのに。
俺だけに、見せてくれたら良いのに。

体が、酷く熱かった。

「あ、敦賀さん! お疲れ様です。……どうされたんですか?」

俺はまた気付けば最上さんの目の前に立っていて、何も知らない最上さんは当然元気に挨拶をしてくる。
しかし、俺の顔を見るなり少し心配な色を目に浮かべた。
最上さんの周りにいた男達が何か言いたげで、普段なら彼女を狙う輩を排除するために牽制の一つでもするが、そこでハタと気付く。

これは夢だろう。
朝には消えてしまう矮小な存在に、心を騒がせる必要はない。

「敦賀さん……?」

再び最上さんが俺の名前を呼ぶ。
不安そうに覗き込む最上さんを、罠に誘き寄せた獲物のように、逃がさないよう強く抱きしめた。
最上さんが持っていた荷物が床に落ちる音を遠くに聞く。

「ひゃあっ!?」

そう、夢なら。

夢でくらい。

「俺の、思い通りになって……?」



*******



困った。

思い出せるのはここまでで、俺はそれからどうした?
夢……だったよな?
じゃあどうして最上さんがここに?

疑問ばかりが頭を支配し、答えなんて見つかるはずもない。
最上さんに聞けば全て分かるだろうが、それも怖いと思ってしまう。

早く目覚めて欲しい思いと、このままもう少し寝ていて欲しい思いとが俺の中で交錯する。

とりあえず、謝ろう。

最上さんの、ビー玉のような瞳が開かれるまで、あと少し。








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